~食べ物の恨みは恐ろしい~
Ⅱ 許されない出来事
「今日こそは、決着をつけてやる。」
「何の決着?」
ナノはさっきからぐーと鳴って止まないお腹を見て聞いた。
ここは、学校の大広間。
「こっちを見ろっ」
「はいはい。あたしの朝食を奪っといて、もっとあたしのお腹すかせるなんて卑劣な事をする悪魔を見ますよ。」
ナノは今、とっても不機嫌だ。
「奪っただと?お前が、ぶっ掛けてきたんだろっ」
「そうだったっけ・・・?まあ、食べ物の恨みは怖いとよく言う。だからあたしはあんたを許さない!」
ナノはそう言って構えた。レオはだんだん良く分からなくなってきた。
(さっきまでは、乗り気じゃなかったのに、いきなり自分から構えてきた・・・。こいつは、やっぱり頭がおかしいのか・・・?)
レオも構えた。
「一様言っとくけど、頭脳派のあんたが、戦闘派のあたしに勝てるとか考えちゃダメだよ。」
ナノがそう言った瞬間、
「うっ」
レオがうめき声を上げた。
ナノは〇,三秒の間に、一気にレオとの間合いを詰め、レオのわき腹を蹴ったのだ。
もちろん、ナノは鍛えられている。そんなナノの攻撃は、一回当たっただけで、すごいダメージを受ける。
そんなものをまともに喰らったら、骨折は免れない。
レオは、その場にうずくまった。
「もう、少しは学習しなよ。」
「お前には言われたくない言葉だ。」
「まったく、ひどい言い様だね。まあいいや。 それと、少し手加減しといたからすぐ立てるよ。んじゃ、バイバイ。」
ナノはランチルームへ向かった。
ナノがランチルームに着いた時には、もう販売の時間は過ぎていた。
ショックで、口を開けて呆然と立ち尽くしているナノの口に、マキが、その場にあった消毒液を入れた。
ゴクリッ ナノは、自分が何を飲んだのかに気づかないまま、
「レオめ・・・絶対にぶっ殺してやる・・・。」
と呟いて教室へ走った。
ガンガンガンガンッ
ナノは、教室のドアを乱暴に叩いた。
「はい。」
眼鏡を掛けた先生がナノを見た。
「まだ授業の開始時間までには時間がありますよ。ミス・アンドリンナ。」
眼鏡の先生が言った。三千人の生徒がいるというのに、ナノの名前を覚えているなんて、さすが教師。
でもナノは、十数人の先生の中の、眼鏡の先生の名前を忘れていた。さすがナノ。
「そうですよね、あの、レオ居ません?」
「いいえ、まだ来ていませんわ。」
「そっか・・・どうも。」
ナノが戻ろうとした時、丁度レオが向こう側からやって来た。
「来たな、レオめっ」
ナノが、レオに殴りかかろうとした時、
パタッ
眼鏡の先生がナノの背後で倒れた。
「ええっ」
ナノは、レオを見た。
「何見てんだよっ」
レオがナノを睨んだ。
「いや、次はあんたが倒れるかな?って思って・・・。」
「なんて奴だ・・・。」
そのとき、ジジジッ ズボンのポケットから電子音がした。ナノは、ポケットから、一センチの四角形の機械の小さなボタンを押して、耳の近くに当てた。 これは、超小型トランシーバーだ。
「ナノ!来て!マキがいきなり倒れ・・・て・・・。」
シャルルの声が途切れた瞬間、ナノはこの非常事態に気づいた。
「レオ、あんたも一様ついてきてっ」
ナノは、レオの腕を掴んで、共同で使っている部屋へ走った。行く途中、廊下で大勢の人が倒れているのが目に入った。
ガララッ
ドアを乱暴に開けると、シャルルとマキが、床に倒れていた。
ナノは、シャルルとマキの所へ走って、呼びかけたが、返事はなかった。
「どうなっているんだ・・・?」
レオが、マキの脈を計った。
「どう?」
ナノは不安げにレオを見た。
「大丈夫だ。生きている・・・。」
レオは、ナノをじーっと見た。
「何っ?」
「残念だ。これを機に、お前も倒れていてくれると助かるんだが。」
「黙れ。」
ナノは二人をベッドに乗せ、部屋から出た。
「校長室に行くよっ」
「オレに指図するな。でもまあ、それが一番いい。」
ナノとレオは、最上階の校長室へ向かった。
コンコンッ
レオが、少し控えめにドアを叩いた。
「どうぞ。」
少し間があって、校長の声がした。
「「失礼します。」」
レオとナノは校長室に入った。
校長は、デスクの前でため息をついていた。
「校長!みんなが倒れてしまっ――」
「知ってるわ。原因も。この学校で動ける者は、私と貴方達二人だけ。アリマンテイル学校も落ちつぶれたものね。」
校長はため息をついて、ナノとレオに紙を渡した。
「それを読み、すぐにアイテムの準備をしなさい。」
「「えっ」」
ナノとレオは、渡された紙を見つめた。