↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルを『書き換える』おっさんプログラマー ~ハズレスキル《プログラミング》で、こっそり最強になる異世界生活~  作者: 深海生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/17

第1話 俺のスキルはチートらしい

----------------------------------------

スキル :初級剣術

剣技 :閃光斬

プログラム :

剣を両手で握る

↓

剣を上段に構える

↓

右足を前方に踏み込む

↓

時速100キロで対象に向けて剣を振り下ろす

----------------------------------------


 ……この数字、書き換えたらどうなるんだ?


 『時速100キロ』を『時速200キロ』へ。


 たったそれだけの、書き換えだった。


    *


 ガギィィィィン!!!


「またルーカスさんの剣を吹っ飛ばしたぁあ!? ば、化け物だ、この人!」

「も、ももも、もしやあなたは、かの剣聖ギュンター・フォン・ファイアージンガー様では……?」


 ……誰? 全然違うけど。


 俺はただのアラフォーのプログラマーで、本当は目立ちたくなんかないんだけどなぁ。


    ◇


 どうしてこうなったのか、順を追って話そう。


「俺がやっとくよ」


 なぁんて、後輩がやらかしたバグの修正を引き受けてしまったのが運の尽きだった。


 俺こと椎井 絃剛(しい げんごう)(アラフォー)は徹夜明けの帰り道、まだまだ仕事の詰まったノートパソコンの入った鞄を抱えながら、そんなことを考えていた。


 我ながら損な性分だと思う。断ればいいのに、困った顔を見るとつい手が出る。三十九年、ずっとこれで生きてきた。


 だから、それも半分は反射だったのだと思う。


 横断歩道の向こうで、女子高生がしゃがみ込んでいた。彼女の足元には、震える子犬。どうやら車道に飛び出したのを抱き上げようとしているらしい。


 そして、右手からはトラックのヘッドライト。


「歩美! 車が来てるぞ!」

「逃げて!」

「えっ……?」


 ――あ、これ間に合わないやつだ。


 考えるより先に足が動いていた。本当に、我ながら学習しない。俺は横断歩道に飛び出し、女の子と子犬をまとめて歩道側へ突き飛ばした。その勢いで前転しかっこよく車を避けるつもりだったのに、ふらふらの体が言うことを聞かない。


 迫るヘッドライト。とっさに俺は、抱えていた鞄を盾のように前に突き出した。中には愛用のハイスペックノートパソコン、『Makudo Book Pro』。三十万は超える代物だ。守備力は高いはず……だった。


 バギバギッ!


 すさまじい衝撃。三十万が、俺の命の代わりにあっさり砕けた。ありがとう、Makudo Book Pro。お前のことは忘れない。


 俺はというと……あれ、痛くない。


 衝撃は来たのに、アスファルトに叩きつけられる感触がいつまで経っても来ない。恐る恐る目を開けると――トラックも、駅前も、点滅信号も、どこにもなかった。


 代わりにあったのは、やたらと荘厳な石造りの広間と、玉座からこちらを見下ろす王冠の男。そして、なぜか俺のすぐ横で腰を抜かしている、さっきの女子高生と子犬、他に二人の見知らぬ男女高校生。


「おお……! 召喚は成功したぞ! ようこそ選ばれし勇者達よ!」


 王様らしき男が高らかに叫ぶ。召喚、勇者。なるほどね。おおむね事情は飲み込めた。ネット小説で百回は読んだやつだ。


 男はキョトンとする俺たちを何やら満足げな表情で見ながら、勇者召喚の経緯を説明していた。曰く、世界は魔王の侵略を受けており、人類は劣勢に立たされている。そこで強力な力を持つ異世界の勇者達を召喚したと。


 この状況、もしかしたら夢かもなんて思ったが、どうやらそうじゃ無いらしい。自分の頬を幾らつねっても目が覚める気配はない。っていうか凄く痛い。


 勇者勇者いうけどさ。俺なんてどこにでもいる普通の社会人だ。どう考えてもおかしいでしょ。隣の高校生たちは若くてもうキラキラしてて、いかにも主人公感が出てる。絶対この子達が勇者だよ。これ間違って召喚されたパターンだわ。


「魔王の軍勢はすぐそこまで来ている。どうか君達の力を貸してくれぬか?」

「ちょ、ちょっと待てよ。オレ達はそんなこと知ったこっちゃない。今すぐ元の世界に戻してくれ……!」

「……そ、そうよ! そんな化け物と戦うなんて、ありえないわ!?」


 高校生が王に向かって文句を言っている。……そりゃあそうだよな。随分勝手な話だし、俺だって元の世界に戻りたい。


 しかし、返ってきた答えは無情なものだった。


「それはできん。異世界召喚を行うために必要な魔力は膨大なのだ。再び行えるようになるのはかなり先になる。……早くても一年後じゃな」


 はぁ!? 一年後!?


「そ、そんな……」


 落胆する高校生たち。俺も同じように心底がっかりした。一年か……。そんなに長い間プログラミングができないなんて……。


 すぐに思ったのがそれだった。


 プログラミングは、社会人になってから始めた、俺の唯一と言っていい趣味だ。仕事も休日も、そればかりの人生だった。


 つまらん。つまらなすぎて死んでしまいそうだ。


 心底がっかりする俺をよそに、王は話を続ける。


「君達を呼び出したのはこちらの勝手な都合である。ゆえにできる限りの支援を約束しよう。だがその話は後にして、まずはスキルの鑑定をしようではないか」


 スキル……? この世界、スキルがあるのか。まるでゲームの世界だな。


 いつの間にか、透明な水晶玉が俺たちの前に運ばれて来ていた。


「誰が協力するなんて言ったんだ!? ふざけるな!」


 高校生の一人が激怒して叫ぶ。


 気持ちは分かるが、王に対してそんなことを言うと──


「おい貴様! 誇り高きベルクヴァイン国の国王、レオポルド・フォン・ベルクヴァイン様になんたる口の利き方だ……! この場で叩き切ってやる!」


 貴族らしき男が青筋を立てて激昂すると、俺達の周りを兵士が剣を抜いて取り囲んだ。やっぱりこうなるか。


「「きゃあああ!」」


 女子高生たちが悲鳴を上げる。俺も冷や汗が止まらない。


 しかし子犬は、女の子――さっき『歩美』と呼ばれていたあの子を守ろうと、貴族に向かって力いっぱい吠えている。


「やめよゲオルク! 我が国の救世主に何をするつもりだ!」


 王が一喝すると、ゲオルクと呼ばれた男は「申し訳ございません」と恭しく頭を下げた。兵士達もそれに倣って剣を収め、頭を下げた。


「驚かせてすまなかったな、勇者達よ。後からこやつらは厳しく叱っておくゆえ、先ほどの無礼は許されよ。もしそなた達が協力してくれるのであれば、それ相応の礼はするつもりじゃ」


 王がそういって指をパチンと鳴らすと、金銀財宝の乗った台車が運ばれてきた。


「無論、これだけではない。大きな功績を残した者には更に素晴らしいものを与えよう」


 王がそう言うと、彼の後ろに控えていた超絶イケメンと超絶美女たちが一斉に前に出て、優雅に挨拶をした。身なりからして王子と王女かな。


 ん、良い働きをすればこの人達もくれるってこと……?


「どうか、この国を救ってくれないだろうか?」


 今度は王は頭を下げる。


 このやりとりで高校生達の目の色が変わった。


「こ、こんな綺麗な王女様が困ってるなら仕方ないか……」

「た、確かに。宝石とイケメンに罪はないものね……」


 そんなことを言い出す始末だ。


 アメとムチか。……ふむ、この国ヤバいな。やり方が気に入らない。


 こういう信用ならない相手からは逃げるのが一番な気がする。でもどうやって……? 仮に逃げたとしても、一人で生きていけるのか……?


「おお、なんて頼もしい勇者達だ! では早速スキルの鑑定に移るとしよう」


 王の言葉を合図に、高校生達が次々と水晶玉に触れていく。まずは言うことを聞くしかなさそうだ。


 どうやら水晶玉はスキルを鑑定できるらしく、高校生達がもつスキルが次々と明らかになっていく。


 男女高校生二人はそれぞれ《聖剣術》と《筋力上昇》に、《神速抜刀術》と《技量上昇》。そして歩美は《聖光魔法》と《魔力上昇》らしい。基本的にスキルは二つずつ持っているようだ。


「珍しくて強力なスキルばかりだ!」

「噂通り、勇者様はスキルを二つ持っているのか! すごい……!」


 周りから賞賛の声が口々に漏れ、高校生達も満更ではない様子だ。なんか《聖剣術》とか《聖光魔法》とか、完全に彼らが勇者じゃん。確定だよこれ。


 ついに俺の番になったので水晶に触れた。すると上方に文字が浮かび上がった。


〔プログラミング 解析眼〕


 ……え? プログラミング!?


「おいおい、プログラミングって……。この世界にパソコンなんてないだろうし、もしあっても異世界でそんなことしてどうすんだ……?」

「大丈夫かな、あのおじさん……」


 なんか高校生達から心配そうな目で見られてる……。確かにパソコンがなきゃプログラミングなんてできない。けど、実は心当たりがある。トラックの盾にしたあの鞄――とっさに抱え込んだから、召喚に巻き込まれた時もこの手にあった。中に入れっぱなしのはずだ。


「プログラミングという言葉は初めて聞くが、この世界では役に立たぬものなのか?」


 王が俺に聞いてくる。どうやらさっきの高校生の言葉で、王も心配になっているらしい。


 実際どうなんだろう? 役に立たないように見えても、スキルって使い方次第で化けたりするパターンもあるだろうし。


 どうにかこのスキルについて調べられないものか。あ、もう一つの解析眼って鑑定系のスキルだったりして。これが使えればなにか分かるかも。


 適当に、《解析眼》発動! なんちゃって。


 ……おおおおおっ!?


 なんか少しだけ世界の色がグレーに変わった。そして、今俺が見ている水晶玉の上のプログラミングという文字だけがくっきりと視界に映る。どうやら解析眼のターゲットだけが色づくらしい。


 解析が終わったのか、ピコンッ!と視界に説明が表示される。


〔世界に一人しか持つことを許されないユニークスキル。プログラミングによりスキルを作成・改変し、対象にインストールできる〕


 ……え、スキルを作れる? それってチートなんじゃ……?


 い、いや、落ち着け落ち着け! まだ分からないことばかりだ。色々確認してみないことには断定できない。でもこのスキルがあれば、なんとか一人でも生きていけるかもな。


 多分、役に立たないと思われているだろう今が、この城を安全に抜け出すチャンスだ。もし後で勝手に抜け出したら脱走者として捕まってしまうかも知れない。相手を納得させた状態でこの城を去るべきだ。


 ここからの交渉次第で俺の運命は大きく変わるぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。