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作者: ことは
掲載日:2026/05/07

小さな鳥籠は、私の世界の全て。

窓から覗く小さな月に、この世界がまだ生きている事を知る。



篭った金属音と、錆が擦れる音。

それは、今宵の夢が始まる事を突き付ける。

それが良い夢なのか、悪い夢なのか、私にはわからない。

過ぎるのを待つだけだから。


着飾られた、夢見る人形。

それが、私。


微笑んでいれば、これ以上は何も起こらない。

私は、望まれた事だけをしていればいい。

人形に求められているのは、人形である事だけだから。

そう教えてくれたのは、鳥籠の中で起きた、これまでの記録。

それは、長い年月と共に、痛みという物語で、私に刻まれた事実。


ただ、夢を見る。

それだけの為に、存在している。

私が、アンティークショップに並ぶ日まで。


使い古せば誰かに売ると、そう言われてきた。

品定めに来る無数の目に、それが近い事を悟る。

その事にさえ、何も感じない。



騒がしい朝。

でも、世界の様相が鳥籠に届く事はない。

だから、それに気づく事はなかった。


いつもと違う時間、いつもと違う足音、いつもと違う勢いで、鳥籠の扉が開かれる。

驚く私の眼に写ったのは、私の知らない人。


荒れる呼吸と、赤く汚れた服と、手に持つ刃。

あなたの佇まいを見た私は、私の足跡の終わりを感じた。

ここで、壊される。

でも、そうなる事に、恐怖も覚悟も無かった。

初めから、私には何も無いから。



そう思っていた。


なのに、あなたの言葉に、私の胸の奥にある小さな塊が、大きく揺れ動いたの。



あなたの口から紡がれた言葉は、とても温かくて、とても力強くて、私に心がある事を思い出させてくれた。


助けに来た。

あなたの目を見る度に、思い出す言葉。


私と鳥籠を繋ぐ枷は、あの日、私の両手足を手放した。

あなたの優しい想いによって。


私は、これから羽ばたける。

この大空の下で、私は自由を得た。

だけど、私は飛び方を知らない。


行き交う人々の笑顔の彩りを知り、虚無な私との違いに、雫が頬を伝う。

私にも、涙がある事を知った。

そして、それを拭ってくれる優しい手の温もりを知った。


あなたがくれた、たくさんの贈り物。


飛べない私を、背負ってくれる。

大空の下で、想いのままに生きる幸せを教えてくれる。

世界が、こんなに綺麗だと見せてくれる。


そして、何より大切な事に気づかせてくれた。

あなたは、私の王子様。

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