プロローグ
カクヨムで投稿してるので見てくだしゃい。
内容若干違いますが、だいたい同じでしょ。
肺が、うまく呼吸できない。
胸を押し潰すような痛みと、肺の奥へ流れ込む生温い血の感触。
視界が揺れるたび、暗い空間のどこかで、斜めの光だけがちらついていた。
硬い石床に投げ出されたまま、少女は刃の折れた刀を細い指で握り締めていた。
全身が痛む。とくに左脚は、見るまでもなく駄目だった。奇妙な角度で折れ曲がり、もうまともに動く気配がない。
如月ココ。探索者ランクA。
東京都どころか、日本でその名を知らぬ者は、よほどの老人か赤ん坊くらいだろう。
大半の人間が、彼女を「日本に十人しか存在しないAランク探索者のひとり」であり、その中でも最強格の刀使いだと認識している。
その名が、今は地に伏していた。
転移罠によって階層を外れ、叩き落とされた先は【95F】。
未到達区域。
想定外の階層。想定外の魔力。想定外の死の気配。
目の前には、まるで生きた鎧のような存在がいた。
全身を漆黒の鱗に覆い、黄金の双眸を鈍く光らせる獣。
人の形に近い。だが、人ではない。人型というだけの、まったく別の“何か”だった。
斬れなかった。
避けられなかった。
反応すら、できなかった。
息を吸う音だけが、やけに大きい。
体の内側から、命の灯がひとつずつ消えていくのがわかる。
怖い。
そう思った。
「……ああ……死んじゃう、んだ……」
こぼれた声は、自分のものとは思えなかった。
冷たく、乾いていて、どこまでも諦めきっていた。
それでも刀だけは手放さなかった。
刃は折れていても、手の中に残った感触だけが、まだ自分を探索者でいさせてくれる気がした。
その時だった。
何かが“崩れる”音がした。
爆音ではない。
地鳴りでもない。
ただ、そこにあった空間そのものが、無理やり書き換えられたような音だった。
風が逆流する。
空気の層が一枚だけ、無理やり剥がされたような違和感。
そして――姿を現した。
ひとりの少女だった。
少女は、ただ歩いていた。
誰かに追われるでもなく、誰かを助けに来たふうでもなく。
背中まで届く黒と赤の混じる長髪。
ノースリーブのミニニットに、脚の線が露わになるショートパンツ。
華奢な肢体。整いすぎた輪郭。浮世離れした造形美。
それなのに、その姿は空間にまるで馴染んでいなかった。
この階層の空気も、魔力も、死の気配すらも、彼女だけは共有していない。
まるで最初から、この世界の外側に立っている存在みたいに。
ココの視界の奥で、黒い獣が少女へ唸り声を向けた。
怒りか、敵意か、それとも本能的な警戒か。
けれど、少女は止まらなかった。
「……ふぅん。向かってくるのか」
小さな声だった。
乾いていて、感情が薄く、どこかひどく他人事めいている。
それなのに、その声音だけは耳に残った。
次の瞬間。
少女の手が、ほんのわずかに動いた。
武器は持っていない。
構えもない。
殺意の予兆すらなかった。
――そのはずだった。
だが、獣の身体は頭部から胴体にかけて、紙のように裂けていた。
音もない。
何をされたのかも見えない。
気づいた時には、少女の足元に“死”だけが残されていた。
ココは理解より先に、その少女から目が離せなかった。
少女はゆっくりとこちらへ歩いてくる。
その顔には驚きも、安堵も、優しさもなかった。
ただ、ひとつ面倒ごとを片づけただけみたいな、倦んだ無表情。
「……生きてるな。じゃあいいか」
それだけ言うと、目の前の人は踵を返してそのまま先へ進もうとする。
だけど、数歩進んだ先でぴたりと足を止める。
少女は少しだけ空を見上げるように首を傾げ、こっちに戻ってきて迷いなくしゃがみ込んだ。
次の瞬間には、ココの身体が軽々と抱き上げられていた。
お姫様抱っこ。
そこに躊躇はない。
照れもない。
気負いもない。
ただ、あまりにも自然だった。
呼吸の続きをするみたいに、当たり前に。
「置いてくのも味気ないし。……気分転換」
低く、小さな声。
なのに不思議なくらい、よく通る。
少女はそのまま歩き出した。
敵もいない、誰もいない、冷たい空間を静かに進んでいく。
ココは何も言えなかった。
言葉にした瞬間、何かが壊れてしまいそうだった。
ただ、心の中で繰り返していた。
――この人は、何なんだろう。
――強くて、美しくて、冷たくて、それなのに……どうしようもなく人間だった。
心臓が痛かった。
落ちていくみたいな感覚だった。
だからきっと、これは恋だった。
無様に傷ついた身体も。
砕けた誇りも。
その腕の中では、なぜか少しだけ許された気がした。
少女の名前は、そのあとで知った。
クロエ。
笑わず、怒らず、何にも興味がなさそうな顔をしているくせに、
“美しさ”だけが異様なほど鋭く研ぎ澄まされた少女。
あの瞬間から、私の世界は変わってしまったのだ。
“待って待って待って!! カメラ! カメラ回収ぅぅぅ!!”
“展開早すぎて何が起きたかわからん、とりあえずココちゃん生きててよかったぁぁぁ”
“すっげぇ美少女がバケモン真っ二つにしてる。文字にすると余計わけわからん”
“切り抜け切り抜け!! 今すぐ拡散だろこんなん!!”
“もうテレビ局動いてそう”
“タイトル案:『ココちゃんが死にかけたらつよつよ美少女が助けに来てくれた件』”
“ダッサw 一昔前のラノベかよw”
“でも内容は合ってて草”
“いや笑ってる場合じゃねぇ、ココちゃんガチで死にかけてたんだぞ”
“それはそう。だからこそ情緒がめちゃくちゃなんだよ今”
評価&感想待ってます!




