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例えば雨の日

作者: vurebis
掲載日:2026/02/03

 例えばの話をしましょう。


 あなたは雨に濡れている見知らぬ人を見つけたら、どうしますか?


 心優しく傘を貸せば、あなたは濡れる。

 見知らぬふりをすれば、誰かが濡れる。


 僕なら……どちらも面白い。

 傘を貸して、僕に頭を下げる姿を楽しむこともできる。

 無視して、じっと濡れて震えるのを見届けることもできる。


 でも、もしその人が……自分の恋人だったら?


 たぶん……僕は手を伸ばすだろう。

 優しく、傘を差し出すフリをして。


 けれど、その手に握られているのは、安易な優しさではない。

 僕の意志だ。

 愛する者のすべてを掌握するための……意志。


 雨は止むことなく、心はざわつく。

 濡れた体の震えが、僕の胸を熱くする。

 迷いはない。

 傘が開いた瞬間、すべては僕の支配下に置かれる。


 優しさの仮面をつけた瞬間、僕には見える。

 恐怖と愛情は、紙一重。

 僕の手に握られる傘は、守るものでも、逃がさないものでもある。


 濡れるのは僕だけではない。

 二人で、雨の中、互いの存在を確かめる――そんな気分で。


 愛情とは時に、残酷だ。

 相手を思う気持ちが、所有欲に変わることもある。


 僕は傘を差し出す。

 手を伸ばすその瞬間、支配も愛も、同時に握りしめている。


 そして知るのだ。

 誰かを思う気持ちは、時に、恐怖よりも強く、絶対的であることを……。


 雨はまだ降っている。

 でも、もう恐くはない。

 恐怖は僕の味方だから。


 歩み寄る距離。

 雨粒が肩に落ちる感触。

 互いの視線が絡み合う瞬間、胸がざわつく。


 この静けさの中で、僕は考える。

 どこまで近づけば、相手の心を完全に掌握できるか。

 どこまで見つめれば、恐怖を与えつつ愛を伝えられるか。


 傘の下で、濡れた髪が額に張り付く。

 息遣いが混じる。

 その混ざり合う湿気に、僕は興奮する。


 手を差し伸べたまま、そっと距離を詰める。

 相手は一瞬、戸惑う。

 その瞬間が、僕にとってはたまらない。


 愛は、僕にとって、ゲームだ。

 支配する楽しみ。

 恐怖で支配しつつ、愛で縛る。

 そして、絶対に離さない。


 雨はやがて強くなり、地面に叩きつける。

 でも、僕らの世界はその音に覆われない。

 傘の下に閉じ込めた時間が、全てを支配する。


 僕は笑う。

 傘の中の小さな世界で、二人は僕の意志に従っている。

 濡れるのは身体だけではない。

 心も、少しずつ、僕に染まっていく。


 この雨の夜に、僕は知る。

 誰かを思う力は、時に愛よりも恐ろしいほど強くなることを。

 そして、恐怖さえも、愛の一部になることを……。


 雨はまだ止まない。

 でも、僕の胸は、確かな満足感でいっぱいだ。

 支配も、愛も、恐怖も――

 すべて、僕のものだから。


 さて、今日は雨の話でした。

 傘を渡すか、渡さないか。

 濡れるか、濡れないか。


 あれは、誰もが抱える心の雨のようなものです。

 恐怖や不安、嫉妬、愛情――

 私たちは日々、その雨に濡れながら生きています。


 誰かに優しく手を差し伸べると、自分も濡れる。

 時には痛みや迷いも伴う。

 でも、差し出す手は、必ず心を少し温かくする。


 そして、時には私たちの心の中に潜む“影”と向き合う必要もあります。

 自分の弱さ、欲望、怖れ……

 その影に向き合い、受け入れることで、人は少しだけ強く、優しくなれるのです。


 雨は止みます。

 傘を差すか迷ったあの日も、

 結局、あなたの手に握られたのは、ただの愛と気づきです。


 だから、思い出してください。

 傘は、ただの傘。

 雨は、ただの雨。

 でも、どちらも、あなたが選ぶことで、世界を少しだけ変える力になるのです。


この作品は朗読会、Lunask Act3で使用した台本です。


朗読動画、配信にご利用いただいて問題ございません。


その際は概要等に下記の表記をお願い致します。


シナリオ:vurebis(https://x.com/vurebis_)


※ご使用される際、私に報告等は一切必要ありませんが、教えていただけますと全力で応援させていただきます!

※自作発言等はご遠慮ください。

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