第2話:『新たな仲間、そして覚醒する力』
キルシュに連れられて辿り着いた酒場は、「冒険者の溜まり場」として賑わっていた。薄暗い店内は、酒の匂いと男たちの熱気で満ちており、私は少し身構えてしまう。
「こっちだ、リリアン」
キルシュは、私を二人の男女に紹介した。大柄な戦士の男性と、魔法使いの女性。二人は、私の顔を見て怪訝な表情を浮かべた。当然だろう。私の見た目は、聖女とは程遠い、ただの平凡な少女なのだから。
「こいつが新メンバーのリリアンだ。聖女様だぜ。」
「え、聖女?」
「どうせ、碌なスキルも持ってないんだろ?」
大柄な戦士の男性が、私を馬鹿にしたように言った。私は何も言い返せなかった。神殿では、私のスキルは価値がないと判断されたのだから。
「まあ、そう言うなよ。明日、一緒にダンジョンに行けばわかるさ。」
キルシュはそう言って、私を庇ってくれた。彼の言葉に、私は少しだけ安心した。
翌日、私たちは「コボルトの巣穴」と呼ばれる初心者向けのダンジョンへと向かった。
「ちっ、やっぱり落ちこぼれじゃねーか!」
案の定、私の『浄化』スキルは戦闘の役には立たなかった。戦士の男性は、苛立ちを隠せない。
その時、突如として、私たちを待ち伏せしていたコボルトの群れが襲いかかってきた。
「ぐあぁ!」
戦士の男性が、コボルトの攻撃を受けて負傷した。私はとっさに、彼に『浄化』スキルを使った。
すると、スキルは彼の傷を瞬時に癒やしただけでなく、彼の疲労までも取り除いてしまった。
「な……なんだこれ!?」
戦士の男性は、驚きに目を見開いた。
私は、彼の言葉に少しの希望を感じた。私のスキルは、攻撃には使えなくても、仲間を守ることには役立つのだ。
「リリアン、すごいじゃないか!」
キルシュの言葉に、私は嬉しさを感じた。
「でも、あのスキルの浄化力、ちょっとおかしいよな?」
もう一人のパーティメンバーである魔法使いの女性が、私に尋ねた。
「毒を浄化するだけじゃなくて、疲労や魔法の消耗まで回復させるなんて、聞いたことがないわ。」
彼女の言葉に、私は戸惑った。
「それは、私もよくわからないんです……」
私は正直に答えた。神殿でも、私のスキルは「浄化」という一言で片付けられていた。
その日の夜、キルシュは私を呼び出した。
「実は、神殿にいた頃、私のスキルを調べようとしてくれた神官が一人だけいました。彼は、私のスキルが『浄化』ではなく、『変換』である可能性を指摘していました。」
「変換?」
「はい。負のエネルギーを、正のエネルギーに変換する力だと。」
キルシュは、腕を組んで何かを考えているようだった。
「よし、わかった。明日、もう一度ダンジョンに行こう。今度は、少し難易度が高いところだ。」
彼の言葉に、私は不安になった。
「大丈夫だ。俺がついている。君の真の力を、俺と一緒に見つけようじゃないか!」
彼の真っ直ぐな瞳に、私は勇気をもらった。
翌日、私たちは難易度の高いダンジョンへと向かった。そこは、凶暴な魔物が多く、熟練の冒険者でも油断できない場所だった。
「リリアン、ここだ。」
キルシュが指差したのは、巨大な魔物の巣だった。
「キルシュ、あれは……?」
私は恐怖に震えながら尋ねた。
「ああ、このダンジョンのボスだ。あれを倒せば、このダンジョンはクリアだ。」
キルシュはそう言って、にっこりと微笑んだ。
「でも、あんな大きな魔物、私たちだけで……」
「大丈夫だ。俺たちの力を合わせれば、必ず勝てる。」
キルシュの言葉に、私は少しだけ安心した。
「リリアン、頼む!」
キルシュが叫ぶ。私は、彼の言葉に頷き、自分のスキルを発動させた。
私の手から放たれた光が、ボス魔物の体へと取り込まれていく。
その瞬間、私の体から、信じられないほどの力が湧き上がってきた。
私はその力を使って、キルシュに力を分け与えた。すると、彼の剣は普段よりも鋭く、そして重くなった。まるで、神話の英雄が使う剣のようだった。
「すごい……こんな力、初めてだ……!」
キルシュは驚きを隠せないようだった。
「リリアンのスキルは、相手の力を奪い、それを仲間に分け与える力なんだ。」
キルシュが説明すると、私は初めて、自分のスキルが誰かの役に立ったことを、心から嬉しく思った。
こうして、私たちはダンジョンをクリアした。




