23.
その日の夜。夜の営みを終えたあと、今夜の食事のことが話題に上がり、会話に花が咲いた。
「今回は随分と大改革をして見せたものだな、コルネリア」
「だって、私、お魚が食べたかったんですもの」
それを聞いて、愉快そうに陛下が笑う。
「それだけで、これだけの改革をしてみせるとは、大物だな」
「そうでしょうか……?」
私は、首を傾げて笑った。それから、尋ねたいことを話すために話を切り出した。
「ところで陛下」
「なんだ?」
「私の口座に貯まるお金の使い道のことなのですけれど」
「ああ」
「この国は、戦争に参加する男性が多い分、寡婦や戦争孤児が多いのですよね?」
「……ああ、そうだな」
それはこの国に来て知ったことだった。兵役で出兵して戻らない男はどうしてもいる。そうして、残された家族が寡婦、孤児となり、教会の孤児院や配給に頼って生活をしていることを。私はそのことに触れる。
「そういった人たちのよすがとなっている、教会の慈善活動の運営が滞りないよう、私の口座のお金を寄付したいのです。……よろしいでしょうか」
そう伝えると、陛下は瞳を大きく見開いた。
「お前は聖女か」
「大げさです。……皇后として、そして、持つものとして、すべきことをしたいだけです」
そう言うと、陛下が私の額に口づけを落とした。
「……后として誇りに思うよ。ところで相談なんだが」
陛下が話題を変えるように私に問いかけた。
「はい」
「お前が見いだしてくれたレッサードラゴンの件なんだが、あれは随分と便利な生き物のようだな」
「はい! あれは馬より早く空を駆けますわ!」
コルネリアがレッサードラゴンが空を駆る姿を思い出して微笑んだ。
「そこでだな」
「はい」
「わが帝国は広い」
「はい、そうですね」
「属国の様子を把握するにも、反乱を企てる他国に対応するにも、馬では時間がかかるのだ」
「……レッサードラゴンを軍用にお使いになりたいと言うのですね」
「そうだ」
「構いません。陛下のお役に立てるのでしたら、お使いください」
「そうか、良かった」
ヴォルフがほっとため息をつく。その様子を見てコルネリアが少し微笑んだ。
「……今夜は、私の部屋で休んで行かれますか?」
珍しく、コルネリアから尋ねてみる。ちょっとしたいたずら心からだった。
「お前から誘うとは珍しい」
「……私の我儘を聞いてくださったからですわ」
「ああ、確かに、お前のレッサードラゴンを輸入したいという願いを聞き入れたな」
「だからです」
「そうか」
「お前を抱いて、もう、眠い。このまま誘いに乗って休んでいくよ」
「そうですか」
そうして、ふたりは揃って目をつむるのだった。ふたり、手を繋いで。