表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きって言うまでそばにいる  作者: 華月AKI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/17

「特別」の予感ー五年前のすれ違いー

5年前の3月初め。

「おい、シロ! そっちのピザも持ってこいよ!」

 兄の壱狼(いちろう)の声がリビングに響く。彼の誕生日会は、毎年のように騒がしく、無秩序だった。

 友人たちが酒を片手に騒ぎ、家の中はまるで居酒屋のような喧騒に包まれていた。


 そんな中で、史狼の視線はただ一人を追っていた。

 深水海都ーー兄の親友で、史狼が幼い頃から密かに想い続けている人。

 海都は周りの喧騒とは無縁な様子で静かにグラスを傾けながら、壱狼の無茶ぶりに苦笑していた。

「誕生日会のために東京からわざわざ呼び戻すなんて。君は、本当に人使いが荒いね」

「いいじゃねえか、俺の誕生日なんだから!」

 壱狼が豪快に笑うと、ドカッと海都の隣に腰かけて彼の肩を力強く叩く。

「痛いなあ、もう。まあ、久々に帰ってこられたし、いいけどさ」

 そう言って、海都は軽く肩をすくめる。その何気ない仕草に、史狼は思わず目を奪われた。


 昔からずっと変わらない。

 穏やかで、大人びていて、どこか掴みどころがない。でも、ふとした瞬間に優しさが滲む。

 そんな海都が、史狼はたまらなく好きだった。

 けれど、今日は兄の誕生日だ。自分が海都とゆっくり話せる時間なんて、きっとないーーそう思っていた。

「ねえ、シロ君」

 唐突に名前を呼ばれて、史狼はハッとした。気づけば、目の前に海都が立っていた。

「ちょっと、外で話さない?」

「……え?」

 思いもよらない誘いに、史狼は思わず大きな目を瞬かせた。

「少し、騒がしすぎてね。風に当たりたいんだけど、付き合ってくれる?」

 その言葉に、史狼は頷くことしかできなかった。



 外に出ると、夜風が心地よかった。

 二人は家の前の路地に並んで立ち、何となく星空を見上げた。

 しばらくして、海都は急に何か思い出したように、スーツのポケットから小さな箱を取り出す。

「はい、これ」

「……何?」

 史狼は戸惑いながら、受け取った。シンプルな黒い包装の箱。開けると、中にはシルバーのブレスレットが入っていた。

「もうすぐ卒業でしょ? 早いけど、ちょっとしたお祝い」

「……え」

 驚きすぎて、声が出なかった。

「シロ君、昔からアクセサリーとかあんまりつけないけど、こういうシンプルなのならいいかなって思って」

「……なんで」

 ようやく絞り出した声は、自分でも情けないくらい震えていた。

「……なんで、オレに?」

 海都は少しだけ笑って、それから夜空を見上げた。

「シロ君、最近あんまり笑わなくなったよね」

「……」

「昔はさ、もっと素直だった気がする。でも、少しずつ無理して大人になろうとしてるのかなって、そんなふうに見えて」

「……」

 史狼は何も言えなかった。

 心の奥を見透かされたような気がして、息が詰まる。

「だから、少しでも気分が上がるものをあげようと思って」

 海都はそう言って微笑みながら、優しく史狼の手首を取った。


「つけてみてもいい?」

「あ……う、うん」


 断る理由なんてなかった。むしろ、鼓動がうるさいほど高鳴っていた。


 海都の指が史狼の手首に触れ、金具を留める。

「うん、やっぱり似合うね」

 優しく笑うその顔を見て、史狼の中に小さな期待が芽生えた。

 ーーもしかしたら、自分は少しだけ特別なのかもしれない。


 けれど、すぐにその期待は打ち消される。

「……僕にとっても『弟』みたいなものだからね、シロ君は」

 その言葉に、史狼の胸が痛んだ。


 それでも、この夜の出来事は史狼にとって忘れられないものになった。

 結局、想いを伝えることはできなかったけれどーー


 五年経っても、史狼の手首にはあのブレスレットが残り続けた。

お読みいただき、ありがとうございました♪

次からいよいよ本編スタートです。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ