後日譚 訪問者
後日譚 訪問者
とある医療センターの地下二階。
まるで映画のワンシーンのような……
主演は尾崎凌駕……
キアヌ・リーブス?
レオナルド・ディカプリオ?
いや……
尾崎凌駕はブラッド・ピットに親近感を覚えていた……
それはさておき話を進める……
自分の部屋でパソコンに向き合う尾崎凌駕。画面にはWeb会議システムが立ち上がっている。画面の先にはとある人物……
ハンドル名は……
いや、ハンドル名に意味はない。その人物が誰であるかはハンドル名ではわからない。何と名乗ろうと自由なのだから……
画面は真っ暗で誰も映ってはいない。しかし、確実にその先には誰かがいる。
尾崎凌駕はパソコンの音量を下げてゼロにした。
「すみません、パソコンの調子が悪くてそちらの画像もなくて真っ暗、声も届きません。こちらの声と映像はそちらに届いていると思うので、一方的に話しますのでご視聴ください。良美……」
尾崎凌駕はそこでフッと笑った。
「『ちゃん』を付けるべきか? それとも『さん』を付けるべきか? いや、苗字込みでフルネームで呼ぶべきですかね?」
画面の中の相手は黙っている。いや、パソコンの音量はゼロなので仮に喋っても声は届かない。画像も真っ暗で……
要はコミュニケーションは取れず、一方的な……
それはダイオード的な……
尾崎凌駕は一方的に話すつもりでいたが、突然、彼の部屋のドアが開いた。
ある人物がそこに立っている。
「ほう、奇遇だ!」尾崎凌駕は嬉しそうに「いらっしゃい、良美……」
尾崎凌駕は敬称を――「ちゃん」を付けるべきか、「さん」を付けるべきか迷ったのか? 最後言い淀んだ。
何か喋ろうとしたその人物に向かって尾崎凌駕は笑顔で制した。つまり人差し指を立てて口に持っていき――
「シーッ」とだけ言った。
それに戸惑って黙ってしまった人物に尾崎凌駕はこう言った。
「敬称どうすればいいのか? ちょっとわからないので呼び捨てにしてしまいますが、これで良美が二人――あなたが実在する良美で、パソコンのWeb会議システムにも良美が――。今、音声も映像も切っていますが、今正常にしますよ」
尾崎凌駕がマウスを操作するために背を向けると、ドアから入ってきた人物はポケットから何かを取り出した。
そして――
部屋に大きな音が響いた。
それは……
絶望的な悲鳴にも似た……
鼓膜を突き刺すような……
To be continued
解決編へ続く




