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殺人事件ライラック (ブリキの花嫁と針金の蝶々)  作者: 尾崎諒馬
第五部 アンチ・ミステリーに読者への挑戦状は付くか否か?
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生首が三つ


    生首が三つ

 

 会長宅に生首三つを持ち込んだ。

 テーブルにバスタオルを敷き、三つの生首を並べた。

 会長は嗚咽していた。慟哭とも言える泣き声を上げた。

 

 そして今なら、こう書ける。

 

 まず、娘良美の生首を愛おしく抱き寄せ、頬刷りをした。数分間そのまま泣きじゃくっていた。

 次に、息子勝男の生首をじっと睨みつけていた。しかし、はやり最後はその頬を撫でて「すまん、親の責任としてこうするしかなかった。許してくれ」そう言って泣いた。

 最後に、嫁の良美ちゃんの生首にそっと触れ、「悪いことをした。本当に申し訳ない」それだけ言った。

 

 この時のことを文章にすると何もおかしなところはない。読者もそう思うだろう。

 しかし、これだけは書いておく。

 

 この時、首猛夫は妙な違和感を感じていた。

 小説を読んでいる今はその違和感は消えているのだが、その時は確かに違和感を感じていたのだ。

 首猛夫は二人の良美の生首を――その耳の形をじっと見比べていた。

   

 それから黒服にも手伝わせ、佐藤稔を彼の自宅に運んだ。生首三つは冷蔵庫に入れ、意識のない彼を床に寝かせ、ガソリンをぶっかけた。

 そうして、ライターで火を付けた。

 同時に会長から電話が来た。青服からの連絡で別荘でも火の手が上がり、消防が向かっているという。

 

 それで、すべてが終わった。尾崎諒馬のカルディナはナンバーを外し、後日、山奥に遺棄した。

 もちろん、県警の「上」には会長から連絡が行っている。カメラの映像も見せたかもしれない。それでも首猛夫に捜査の手が迫ることはなかった。

 県警の「上」の闇は健在だった。

 これで坂東善――尾崎メディボーグの佐藤稔がすべての罪をかぶることになる。

 いや、彼はおそらく良美を殺している。殺した相手が悪かった、そういうことだ。何人も闇の力には勝てやしない。

 

 しかし――

 二人の佐藤稔は火事で焼死しなかった……

 焼け出されて救急搬送された。

 

 一人は意識があった……

 

 しかし彼は……

 

 ――この世界の悪意のすべてを一身に引き受ける――

 

 それを貫いた。



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