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殺人事件ライラック (ブリキの花嫁と針金の蝶々)  作者: 尾崎諒馬
第五部 アンチ・ミステリーに読者への挑戦状は付くか否か?
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尾崎諒馬=鹿野信吾による独白


    尾崎諒馬=鹿野信吾による独白


 そうだった。水沼と相撃ちで気絶したあと、私を助け起こしてくれた彼は「首猛夫」と名乗った。会長がサイコパスの息子を始末するために送り込んだ殺し屋……

 確かにそうだった。

 

 その後のことは……

 いや、先にこれを書かねばならない……

 

 良美ちゃんにとって私が初恋の人……

 しかし、私の初恋は良美だった……

 良美ちゃんは私を愛してくれた。

 しかし、良美は私を愛してはくれなかった……

 良美ちゃんは私のミステリー執筆を心から応援してくれた。

 しかし、良美はミステリーそのものを毛嫌いした。

 良美は人殺しの話が心底嫌いだった。

 

 私は殺人の起こらないミステリーを書いた。

 良美に嫌われないために……

 

 でも良美は私を見捨てて……

 ミステリーを捨てたあいつと結婚した。

 酷い女だ……

 でも……

 

 私は良美を愛していた……

 そして良美ちゃんを愛してはいなかった……

 

 それをあの時ハッキリと思い知った。

 あの時……

 

 離れのベッドで近藤の仰向けの死体の……

 バケツを外したあの時……

 

 予想され、期待される光景……

 確かにおぞましい切断面がそこにあった。

 

 しかし、何かがほんの少し予想及び期待からかけ離れていた……

 それはバケツの重さ……

 バケツの中に生首が入っていた……

 

 その生首が誰であるのか?

 

 私はずっと良美ちゃんを助けたいと思っていた。

 まだ良美ちゃんは生きている、そう信じていた。

 しかし――

 バケツの重さを腕で感じた時……

 私は悟った……

 そうして諦めた……

 

 この生首は良美ちゃん……

 勝男が二階で殺した良美ちゃんの生首を……

 離れに持ち込みバケツに入れていた。

 そう()()し、()()した……

 

 そう「()()」したのだ。

 その()()()()()()()()()()()ことを「()()」したのだ。

 

 それが()()()()()であれば、()()は生きている可能性もある。

 良美ちゃんから「水沼が姉良美を殺したかもしれない」それは聞いていた。

 

 母屋の二階で……

 そのことを聞いていた。


 

 ……助けて……

 

 良美ちゃんはそう言った。

 

 私は良美ちゃんを助けたかった……

 

 でも、私の本当の心は「良美」の方に向いていた。

「良美」が本当に殺されたのか? それが気がかりだった。

 良美ちゃんの言う通り本当に「良美」は殺されたのだろうか?

 あのクーラー・ボックスに本当に……

 二階のクーラー・ボックスの中を確かに見たのかもしれない。

 しかしそれを信じたくはなかった。

 

 私はあのクーラー・ボックスの中を覗いて……

 ショックで立ったまま気絶したのかもしれない……

 

 そこに何を見たのか?

 それを信じたくなかった……

 気絶した私は見た物を拒絶していた。

 

 それまでずっと……

 これは何かの間違いで……

 「良美」は生きている……

 そう思っていた――いや、思いたかった……

 

 しかし……

「良美ちゃん」と()()し、そう()()したバケツの中の生首は……


「良美」だった……

 ()()()()()()()()()()()だった……

 

 私は水沼を憎んだ。

 良美を殺したのは近藤社長か水沼。

 近藤社長は死んでいる。

 殺し屋が始末してくれた。

 

 しかし、水沼は――

 

 それは私が何とかしないと……

 

 それでナタを手にした。

 

 それが真相です……

 


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