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殺人事件ライラック (ブリキの花嫁と針金の蝶々)  作者: 尾崎諒馬
第四部 以下、事件の真相に触れる箇所が……
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針金の蝶々 密室のシーン

 

   針金の蝶々 密室のシーン

 

 日野茂は離れの玄関にいた。扉を開けようとしたが、開かなかった。それで離れの裏に回った。

 窓は閉まっていた。部屋の灯りは付いていたがカーテンで中は見えなかった。日野茂は意を決して、窓ガラスを割った。ドアを破壊するより窓の方が簡単だった。

 離れは奇妙な密室だった。中には明らかな他殺体が――。つまりは密室殺人。部屋の中には誰もいなかった。窓はすべて内側から鍵がかかっていたが、ドアが奇妙だった。

 掛け金は開いていた。しかし――

 ドアチェーンの鎖が針金細工の蝶々に取り換えられていた。日野茂は扉を押して開けようとした。しかしびくとも動かなかった。

 と、外から誰か扉を開けようとする音が聞こえた。

 ドンドンと扉を叩く音。

「誰か中にいるのか? 鍵を――掛け金を開けてくれ」

 高柳一の声がした。

「俺だ。日野茂だ。中で近藤会長が殺されている。状況から自殺ではない。俺は窓を破って入った」

「密室か? わかったから鍵を開けてくれ!」

「鍵――掛け金はかかってない」

「いや、開かないぞ! あ、わかった」高柳が大声を上げる。「外に掛け金が追加されてる。そいつが――」

 外で掛け金が外れる音がする。

「待ってくれ! それで扉は開くと思うがそっと――ゆっくり開けてくれ。ドアに仕掛けが――」

 ドアがゆっくり引き開けられてゆく。そうして針金の蝶々が引き延ばされ、高柳が顔を出した。

「何だ? この針金。ドアチェーンの代わりか? 何とか人一人は入れそうだが」

 高柳は針金をすり抜け離れの中に入ってきた。

「開けられる前は針金は蝶々の形を保っていた。それは俺が保証する。奇妙な密室だ!」日野は興奮して叫んだ。

「針金? なるほど、バネ性はないな。鋼ではなく軟鉄の針金だ。つまり犯人の脱出は不可能――」高柳が唸るように呟いた。



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