水沼の手記 1
水沼の手記 1
近藤会長がすべての責任を取って自殺した。それが割腹自殺だった、と――。
〇〇〇お茶会でそうなった……
俺は映像は見られない……
うーん……
会長の息子、近藤社長が母屋の二階で婚約者、いや妻の良美ちゃんを殺して首を撥ねた。そしてアリバイでも作るつもりだったのか、ウェディングドレスで女装して顔はバケツを被って隠して階段に現れる。そして何故か階段で鹿野信吾と「いちりとせ」で遊んで――
近藤は良美に化けたつもりだったが、鹿野信吾に正体を見破られる。バケツは引っぺがされて顔を見られた、と。
いや、違うな……
まあ、今はいいか……
とにかく近藤社長はそれで離れに逃げ込むが――
鹿野信吾は何故か良美ちゃんは離れで寝ていると思っている。あ、そうか、良美ちゃんからそうメッセージが鹿野信吾のスマホ――いや、当時は普通の携帯電話だったが――とにかく信吾にそういうメッセージが入っていたんだっけ……
しかし、実際は良美ちゃんは母屋の二階で首を切られて死んでいるわけで……
で、俺と信吾の二人で離れの玄関ドアを開けて――ドアはチェーンで少ししか開かないけど――中で近藤が死んでいるのを発見する。首を切られているので自殺じゃない。あ、心臓もえぐられてたんだっけ? ビニール袋の中に赤い塊――
えーと、しかし、離れの密室を破って中に入った信吾がバスルームで首無し死体を発見する、と。俺は最初、バスルームの中は見てない……いや見たのかな? よく覚えてないな……。二回目には見たけど……、ああ、ベッドには近藤社長の首なし死体があったな……。首の切断面もリアルに……
まあ、そっちはいいか……
バスルームの……
で、何だっけ? 確か手術痕――えーと、信吾は良美ちゃんの臍の横に――手術痕はあった、と。
横とは右? 左? どっちだろう?
まあ、いいか……。とにかく、信吾はその手術痕で良美……ちゃん、と……判断した……。いや、うーん……。
つまり、離れのバスルームの首無し遺体は良美ちゃん。
しかし、俺が母屋の二階で発見したのも良美ちゃんと思われる遺体だ。ふーん、これはどういうことなんでしょうねぇ。
いや、このWeb小説「殺人事件ライラック~」の作者は尾崎諒馬=鹿野信吾でしょ? 俺はやはり本当の作者がちゃんと書くのを待つよ。さあ、信吾君、俺とお前とどっちが嘘吐きか? いや、嫌な言い方だったかな? 何か犯人の仕掛けたトリックなのかな? 信吾、お前はどう考えてるんだ? 良美ちゃんの死体が二つ。




