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魔法学園のはぐれ者 上

趣味は創作小説投稿、さんっちです。ジャンルには広く浅く触れることが多いです。


過去作リメイク、ボーイズラブものにしたかった。


最近暑さとスケジュールで、創作ペースが落ち気味です。なるべく頑張りますが、のんびりお待ちください。

言うとおりにすること、都合よく利用されること。それだけがエドガーの望まれた生き方だった。


この世界では、貴族が魔力を持っているのが常識だ。貴族家に産まれた暁には、魔法学園に通い、魔法について身につけることが義務づけられている。


そんな中、異色の人物と言える学生がエドガー・クロスだ。彼は貴族ながら、魔法を使えない。


詳しく言えば、彼はクロス男爵の妾が産んだ庶子。平民の血が優位だったのか、魔力を持たずに産まれた。本来なら魔力が無い時点で、平民として生きるのだが・・・クロス男爵には当時、本妻との間に子供がいなかった。このまま跡継ぎがいないことを心配した当主は、当時3つの彼を男爵家に引き取ったのだ。


しかしそれから1年後、本妻は魔力を持つ男児を産み、呆気なくその子供が跡継ぎに決まる。愛情は全てその子供に注がれ、エドガーは全く手をかけられず育てられた。そのためか無口で無愛想、何事も流すような性格に。いつしか彼は跡継ぎの補佐として、面倒事の押しつけ役としか思われていなかった。


甘やかされた弟は、魔法学園に通いたくないと駄々をこね、代わりにエドガーが通うという異常な事態に。当然、学園では悪目立ちしていた。魔力が無いだけではない。無表情で何にも素っ気ない態度、本の虫だから勉強だけは出来たことを気味悪がられる。


1人で外を歩いていた彼に、今日もバシャッ!と降りかかる水魔法。


「あら失敬。最初に習う防御魔法、会得していませんか?・・・って、貴方には無理でしたね」


クスクスと嗤う彼女は、シルク・ワイツベアー。ワイツベアー公爵家の娘だ。勉学で格下のエドガーに負けており、魔法による嫌がらせを毎日のようにされていた。


「まぁ懲りなく通うのは褒めますが、いい加減身の程を弁えなさい。ここは魔力のない無能が来る場所じゃありません。退学手続きなら、いくらでもお手伝いしてさしあげましょう」


エドガーを虐げる彼女だが、この学園では誰もが憧れる優しい淑女。こちらが被害を受けたと騒いでも、彼女が適当に理由を並べて涙を見せれば、周囲は呆気なく彼女の味方になる。


オマケに彼女の父親は、魔法学園の理事を務めている権力者。学内で気に入らない者は、徹底的に排除することが出来てしまう。これ以上扱いが酷くならないようにと、何をされようが流していた。


この学園が自分の居場所じゃないことなど、分かりきっているのに。どうせ自分は、男爵家に搾り取られるだけ利用されるというのに。かといって逃げ出す宛もない。ここ以外で生きられる場所などない。


どうしようも出来ない八方塞がりな現状に、もはや何も感じなかった。



その日、教室は魔法の実技授業。魔法を使えないエドガーは、自習という名で教室から追い出される。背後からの嘲笑など、いつも通り聞こえないフリをして。こうして1人になれるのは、気楽で良いが。


何処へ行こう、図書館の本は既に読み尽くしてしまった。次の時限の小テストも、とっくに対策済みだ。ならば人気の無い場所に行こうと、外に出て裏庭へと歩いて行く。


魔法植物が放置された裏庭は、絶好の隠れ場所なのだろう。ガサガサと茂みを分けて進むと、中央で寝っ転がる何者かの姿が合った。


グレーのはねた髪に、鋭い三白眼・・・間違いない。同級生のクラウド・へブリックだ。へブリック伯爵家の息子で、性格はかなりの問題児。授業はよくサボるし、学園内で喧嘩や騒動を度々起こし、何度も厳重注意されている身だ。関わればろくなコトにならないと、多くの学生から距離を取られている。


エドガーと雰囲気こそ違うが、同じはぐれ者。考えることが似ているのだろう。誰かがいると落ち着かないな、と去ろうとすると、ガシッと制服を掴まれた。


「・・・なに」


「お前、同じクラスのエドガー・クロスだよな?次の小テスト、教えてくんね?」


は?と一瞬、何を言っているか理解できなかった。


「いやさ、いつもなら小テストもサボるんだけど。ちょっと事情が出来て、出ねぇと命に関わるというか」


何を言っている?テストは受けることが前提だし、出ないと命に関わることもない。言っていることがよく分からないし、コチラのメリットも薄い。初対面で図々しい奴だな、とエドガーは呆れた。


だがいくら断っても粘られてしまい、言い合っているのも面倒になって、仕方なく折れてやった。教科書を借りて、なるべく掻い摘まんだ要点だけを説明していく。勉強だけは出来る身なので、始めてしまえばそこまで苦ではない。


「この条約が結ばれた後、反発した周辺公国が貿易に制限をかけた。これを用語で・・・」


エドガーの説明に対し、へぇへぇと適当な相づち、時折うつらうつらになる瞼。こっちは仕方なくやっているというのに、何だその態度は。苛立ちが言動に出てしまう。


「お前さぁ・・・人に頼んでおいて、その態度なんだ?やる気ないなら、声をかけてくるなよ」


また憎まれ口を叩いてしまった。昔から言い方がキツいからか、会話もすぐに途切れる。反論すれば相手を怖がらせて、加害者になる。昔から話し下手なのだ、どうしようもないくらい。


次第に会話が面倒になり、無口になっていった。そうすればさらに無表情になったようで、もう誰も好意で近寄ってこない。


相変わらず嫌な人間だ、もうこの性格も治らねぇな。そう自虐したエドガーだが、クラウドは特にうろたえていない。悪い悪い、と軽く返事をしている様子だ。


「お前の説明、あのババア教師よりも分かりやすくて良いな。1回聞くだけで分かるし、助かるぜ」


え、と思わず間抜けな声が出た。褒められたのは、いつぶりだろう。たった数秒の言葉だというのに、今までの苛立ちがスッと消えていく。


だが、それを素直に受け取れないエドガー。だったらもっと集中しろと、また憎まれ口を繰り返してしまう。


自分から孤独になろうとしている姿が、本当に滑稽だ。この状況は自分に原因があると気付けば、また己が嫌いになる。そんな苦悩などつゆ知らず、クラウドはニコニコとエドガーを見ているのだった。


そして次の時限、いつも通り小テストを終える。問題を見た限り、あの説明で全て保管できていたはずだ。まぁいつもサボってばかりの奴が、急に出来るようになるとは思わないが。


「エドガー、ありがとな。お前の補習、結構出るところがあって助かったぜ」


終了後、すぐにクラウドはエドガーに寄ってきた。自分にと満面の笑みを向けられたことに、なかなか落ち着かない。上手い返事が思いつかず「そうか」とぶっきらぼうに突っぱねることしか出来なかった。


「ほい、これお礼」


ふと手を掴まれ、握られた数粒のキャンディー。これ旨いんだよ、オレ甘い物好きでさ、などと笑顔で他愛ない話をしてくる。そこにも「そ、そうか」とつまらない返事しか出来なかった。



「エドガー、お前って良い奴だな!」



・・・そんなこと言われたの、初めてだ。


気味が悪いと嫌悪されるか、距離を取られるか、その2択だったのに。初めて交流をしてくれた彼に、ふと胸の高まりを感じるのだった。



それ以来、エドガーとクラウドはよく関わるようになった。教室に居場所が無い者同士のため、大半は裏庭で駄弁るか補習だ。勉強嫌いなクラウドだが、お菓子で呆気なく釣れる奴だ。そこが可笑しくて、面白い。


クラウドの話した流行り物を調べることも、補習に釣るための菓子選びも楽しい。話をすれば楽しいし、ニカッとした笑顔で心が軽くなる。


確かに授業のサボりは多い、ケンカっ早くすぐに攻撃魔法を放とうとする。この点で問題児だと言われも仕方ないが、嫌われ者の自分と一緒にいてくれる。本当に不思議な奴だと、エドガーは思う。


そんな明るい彼に惹かれ、心のより所にして。一挙手一投足に胸が高鳴る、そんな自分も。


あの時、呆気なく彼に惹かれたのだ。1時間ほど共に過ごし、褒めてくれた。こうして今も隣にいてくれる、そんな優しさに。


自分は普通ではないから、こんな普通じゃない思いを持ってしまうのか。そう思ってはまた空しくなり・・・そしてまたクラウドと過ごすことで救われ、惹かれていく。そんな循環を、半年以上も続けてしまうのだった。

読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただければ幸いです。

「中」は明日夜に投稿する予定です。

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