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第88話 親方からの依頼

(ここまで歓待されると、ちょっと後が怖いな。)


 親方に歓待され、久しぶりに食事を満喫することができた。こちらの世界ではこれまでの生活ではここまでたらふく物を食べた記憶がない。


(いや、そういえば、体を明け渡して焼肉を食べさせられたことはあったか・・・)


 微妙な記憶は横に置き、ここまで歓待されると、親方からは相談があると言われているが、できる限りのことをしたくなるし、その内容が気になってくる。


 親方は、俺が満足した様子を見届けると、飲み物を勧めてきた。この世界でも酒はあるようで俺も勧められた。年齢制限は緩い様だが酔い具合も不明だし、未成年で飲むことに抵抗感がある。丁寧に辞退しておいた。


 俺は、先ほどと同じ柑橘系の味がする飲み物をお願いした。親方は当然のように酒で、見かけ通りに強いようでペースが早い。既に2杯目を飲み干している。


 やはり気になっていたのだろう、相談の前に俺への質問から入ってきた。


「小僧、いや、リコルド、お前のあの力は一体何なんだ? 岩壁を掘れるのもすごいが、あの重い岩を軽々と持てることも信じがたい。」


 当然の疑問だろうし、既に見せてしまった以上は、すべてを隠せるわけではない。細かいことは言わず、嘘にならない程度に説明する。ちなみに、また、名前で呼んできたが、何度も修正させるのも失礼にあたるので、好きにさせることにする。


「ああ、忘れてくれと言いたいところだけどな。信じてもらえるかわからないが、救出の時に見せた力は、俺が信奉している女神イーリスから授かっている。事情があって正直なところ、力に関しては俺にも分かっていることの方が少ない。」


 親方は意外にも、なるほどという表情を見せた。


「神から力を与えられた人間がいるという話は聞いたことがある。話半分の眉唾物と思っていたが、事実だったのか。実際この目で見ていなければ、到底信じることはできないだろうが・・・。」


「まあ、人より力があって、穴掘りが楽くらいものだがな。」

 

「今日だけであれだけの成果を上げた力だ。大したものだよ。あんな普通ではない力、女神に与えられたとでも言われない限り、納得できないぞ。しかし、そうか・・・そうなると相談ごとは難しいか。」


 親方からは、反発や、もっと追及が来るものと覚悟していたが、素直に納得され、肩透かしを食らった感じがする。こちらとしては、追及がないのは歓迎すべきことなので、そのままスルーするが、俺と同じような人間がいるというのはやはり気になる。


「親方、知っている範囲で構わないのだが、神から力を与えられた人間について教えてもらえないか? 初めて聞いた話なので、詳しく聞いておきたい。」


 親方は噂レベルの話だと前置きしながら、教えてくれた。


「お互い知っているわけではないのか。そうだな。俺が名前も含めて聞いたことがあるのは2人だな。まずは有名なのは帝国の英雄フォボスだな。我ら共和国の天敵で、戦場では恐怖の象徴として知られている。信じられないほどの怪力らしく、まともに打ち合えた人間は、これまでいないらしいぞ。もう1人は、森の守護者シャリテ。大型獣を操る悪女と言われているが、大型獣から守ってくれたという良い噂も根強くある人物だ。どちらも共和国とは敵対しているが、俺は幸い出会ったことはない。後は、名前もしらないが、空を飛ぶ能力や予知能力など、噂は色々ある。」


「なるほど。その2人は実在しそうだな。俺もなるべく会わないように気を付けるとするか。」


(気になる内容だが、これ以上は知らなそうだ。それより、このチャンスは活かすべきだな。)


 俺は頷きながら、親方の説明の中に知りたい情報がいくつもあったので、親方に質問を重ねて聞き出した。質問の内容は、この辺りでは常識的なものも多かったはずだが、親方は嫌がるそぶりも見せず、ただ、何も知らない俺に若干呆れながらも、質問に答えてくれた。


・・・


 親方の話によると、共和国と帝国は長い間、戦い続けているそうだ。帝国は共和国の西側に位置している軍事国家で、大河を挟んで何十年も争っている。当初、共和国側は、中小国家の集まりだったそうだが、帝国の圧力に各国が力を合わせて抵抗しているうちに、共和国に生まれ変わったそうだ。


 話を聞く限り、共和国とは名ばかりで、特に力の強い3人の領主が合議で方針を決めているようだ。曲がりなりにも、そんな不安定な形で成り立つということは、余程優れた人がいるのだろう。


 帝国と共和国の間にある大河は、氾濫が多いものの、河沿いには肥沃な大地が広がっている。特に河の東側、つまり共和国側の土地は、凶作知らずと言われているそうだ。西側にも肥沃な大地はあるが、氾濫で被害が出やすく、帝国の国民を支えるだけの食糧を確保できていないという。


 帝国は東側の土地を狙い何度も侵攻してきて、一進一退の攻防が続いていたそうだ。ただ、最近は英雄フォボスの活躍が凄まじく、数年前に渡河され、西側の共和国領内に砦が1つ作られてしまった状況にあるそうだ。


 砦の話は機密だったらしく、親方から口止めを依頼された。親方は機密を知ることができる立場でもあるらしい。


 フォボスだけでなく、シャリテも現役で、森林での大規模伐採を行おうとすると、大型獣と共に現れるそうだ。共和国では何度か、木材確保のために森林に大規模遠征をしたらしいが、結果はいずれも酷いもので、それが木材高騰の理由にもなっているそうだ。


 話の内容だけでは、神に与えられた力かどうかまでは判断できそうになかった。本当に神に与えられた力を持っている人間なら、親方には悪いが、女神の使命を達成するために協力するべきかもしれないと考えている。敵対する神がいて、その使徒ということもあり得るので、慎重になる必要はあるが、いずれは直接話をすべきだろう。


・・・


 俺の質問が概ね終わったの察したのか、親方は悩みながらも、話を続けてきた。


「なあ、リコルド。救出の時にどこまで炭坑を見たかわからないが、炭坑での事故が多くてな。」


 それは鉱山に入ってすぐに感じていたことだった。俺の知っている炭坑では考えられないレベルで、崩落防止の対策など炭鉱事故の備えがない。


「ああ、炭坑の中を見た限り、坑道を支えるものが少なすぎる。今日だけの話ではなく、いつ崩れてもおかしくない場所が多すぎる。あれでは崩落事故が起こらない方がおかしい。」


 親方は頷きながらも、俺が答えを言い当てたことに少し驚いていた。


「炭坑に詳しいのか。正解だ。昔は、崩落事故の危険が少ない炭鉱、要するに鉱床が地面に出ているような場所を露天掘りしていたのだが、ほぼ掘りつくした。今はここのように、鉱床まで掘り下げて、採掘するしかなくなってきている。しかも木材の価格が高止まりしている影響で、石炭の重要性が増している状況だ。」


 ここと同じように採掘しているなら、崩落事故は頻繁に起こり被害も大きいだろう。責任者としては、少しでも安全性を高めたいと思うはずだし、相談内容が読めてきた。


「そこでだ。リコルド、ここで働く気はないか? いてくれるなら被害が抑えられるし、採掘量の増加も期待できるからな。当然給与をはずむぞ。そうだな、給与は基本給を熟練の2倍+出来高、必要であればさらに上乗せも考える。頼めないか?」


 親方は今までにないような真剣な眼差しで、依頼をしてきた。


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