表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/179

第80話 燃料とマナ結晶の使い道

 イーリスの里の周辺を、日帰りで行ける範囲で探索を行った。新たにヨモギとジャトロファの2つの植物と、天然磁石を得ることができたが、それ以外に新たな発見はなかった。


「うむ。壮観だな。」


 新たな発見は控えめだったが、ロバのルシオとロシナンテと一緒に探索したことで、1回の探索で得られる素材の量は格段に増えていた。俺が背負う籠1つ分に加え、ルシオとロシナンテは、背を挟んで2つずつ背負ってくれるので、単純に1度の探索で5倍以上の素材が確保できた。


 5倍以上の素材を、3か月弱の期間集めたことになるので、確保した素材はかなりの量になった。流石に貯め過ぎたが、後悔はしていない。


(ちょっとため込み過ぎじゃないですか?)


 セルカからは、少し苦情っぽいことも言われているが・・・ 確かにかき集めた素材は、教会横に作っていた倉庫にも収まりきらず、住人のいない家に屋根だけつけて詰め込んでいる。木材を格納している住居は、火でも付けばよく燃えそうなので、リスクもある。


 だが、木の枝や木材などが大量に確保できたことは大きい。お陰で製鉄を進める際に不安を感じていた燃料面が解消された。製鉄だけに使うなら、年単位で困ることはないだろう。


 里の住人も増えており、暖房や煮炊きをするために使ってしまうと、そう長くは持たない。周辺の木材資源は限られており、できれば木材は製鉄だけに使いたい。


(うーむ。木材の他にも燃料を確保したいな。)

 

 木材は、当面新規で確保できない貴重な素材と考えた方が良く、普段使いの燃料にはしない方がよいだろう。

 

 木材資源は、今回の探索で入手したジャトロファを増やしていくこと、里の近くに自生しているオリーブを、挿し木することで着実に増やせていることで増えていくと思うが、まだまだ先になりそうだ。


 となると、里と村の燃料として候補に挙がるのは、鉄鉱石を採掘する際に見つかった石炭だろうか。火力も申し分なく、オーブンに近い窯を作って、排煙に気を付ければ十分に燃料として使える。ただ、石炭には、硫黄などの有害物質が含まれるため、排煙の処理ができなければ、前世のように世界中で黒煙を撒き散らし、大気汚染、大規模な公害発生、人的被害を起こすことになる。もちろん里と村の規模では心配する必要はないが、硫黄による人的被害については注意が必要だ。


 前世の最新排煙処理が再現できれば、大気汚染などはほぼ0に抑えられるうえに、石膏など有用な素材も入手できるのだが、今もっている資源や技術では完全な再現は難しい。


(他の材料となると竹か。)


 そこで注目したのが竹、その竹で作った竹炭を、里と村の燃料として採用する方針にした。村ではもともと裏山に竹が十分な量が自生している。里も移植が順調で、水路の分も含めれば里の人口を賄える量は確保できる。


 里に移植した竹は順調に育ち、既に里の外まで地下茎が伸びている。このペースで育成が進めば、燃料に使っても需要より供給量が超えそうなため、積極的に使った方が良さそうだった。ただ、竹を燃焼させる場合、そのまま燃やすと不完全燃焼が起こりやすい。そうなると、ダイオキシンが発生し、最悪健康被害が出る可能性があるため注意が必要だ。


(無煙炭化器を作るべきだな。)


 そこで、ほぼノーリスクで燃焼させるための工夫をする。いわゆる無煙炭化器と呼ばれるものを製作して、里と村に設置することにする。


 無煙炭化器は、構造が複雑そうな名前だが、『機』ではなく『器』という漢字を使ったもので、実はこれ以上ないほど単純な構造だ。鉄などの燃えにくい素材で、円錐台の側面部分の形に成形するだけで完成する。


 円錐台を逆さに、盃のように地面に設置して、そこの中で火を燃やし、墨にする木や竹を放り込むだけで、墨が出来上がる。理屈は、燃えた火が円錐台内側の側面で反射し、中央からやや上に集約されることで火力が強まり、煙が出ないほど燃焼が進む。一方で、集約された炎の下は燃えにくくなり、そこの材料が炭化する仕組みになっている。


 効率よく燃やすことで煙が出ないうえに、大量の材料を数十分で炭化することができる。無煙炭化器という名前通りの働きをする。


・・・


(よしよし、やはり無煙炭化器は素晴らしい。)


 非常に単純な構造なので、無煙炭化器を試作し、竹炭を作って使ってみた。思った以上に簡単に竹炭ができる。完成した竹炭は、木炭と比べると短時間で燃えてしまうが、燃料としても問題ない。そのほかに、消臭、水や料理に入れてミネラル補給、竹炭を洗った水は洗剤としても利用可能など、かなりの用途が広がる。


 さらに、竹炭は肥料としても優秀なので、燃料として使い終わったものを畑にばらまくだけで、ミネラル補給ができるこの世界にもってこいの素材になる。


(これで心置きなく、製鉄に取り組めるな。)


 里と村の燃料に目途が付いたこともあり、集めてきた木材は優先的に製鉄などの工業用に利用することにした。以来、暇を見つけては製鉄を行っているが、ふと、製鉄とは別に、日課で製造しているマナ結晶のことを思い出した。


(・・・マナ結晶と鉄で、合金とか作れたりしないかな!?)


 セルカが動かすゴーレムの素材とマナ結晶は、人の意思に反応するという同様の特性を持っている。ゴーレムの素材は、いまだに不明だが、色つやだけ見ると鉄やそれに近い金属のように見える。


 鉄とマナ結晶を合わせた合金のようなものが作れれば、ゴーレムの素材が再現できる可能性があるのではないかと考えた。合金が作れて、ゴーレムと同じような素材になれば、『しるし』と組み合わせることで、操作可能なものが作れるかもしれない。


・・・


(うーん。また駄目か。)


 マナ結晶を使った合金の可能性に思い当たって以降、作成に挑戦している。何パターンか、鉄とマナ結晶の配分を変えて、赤熱した鉄にマナ結晶をまぶし、ハンマーで鍛錬する方法を繰り返している。


 マナ結晶が多すぎると非常にもろくなるし、少なすぎると、ねらっていた特性を発揮しない。鉄とマナ結晶の配分を、1:100から100:1になるまで、比率を変えて鍛錬して見たが、結局、70:30程度が、硬度を保ちつつ、ある程度操作もできる結論になった。


 別の触媒のようなものが見つからない限りは、この比率が良さそうだ。残念ながらできた合金は、ゴーレムの素材と同様なものにはならなかったが、単純な操作はできる程度にはなった。今後の応用範囲は広がるだろう。


 合金の研究は一旦あきらめ、別のアプローチも試した。鉄の剣を作り、中央に溝を刻み、そこにマナ結晶を盛る。その上からから別の鉄の板を乗せ、ハンマーでたたいて蓋をする。鉄の中に、マナ結晶を埋め込むことで、その特性を活用できないかというアプローチだ。


 単純な発想だが、鉄の剣の中心に、マナ結晶が回路のように埋め込まれた形になるので、マナを流せる剣になった。マナが流せるので、手の延長のようにマナ操作で切れ味をアップしたりできる。


 まだ使い慣れていないが、中々工夫のし甲斐がありそうで、浪漫がある剣ができあがった。ゴーレムの素材が作れるかもしれないという淡い期待は達成できなかったが、劣化版とも言えるマナ合金と、マナを流せる仕組みができあがったので、結果としてはまずますだろう。今後の利用範囲も広げていきたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ