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第8話 スニーキングミッション2

 最初で最後のチャンスを活かすべく、窓から教会内部に潜入し、慎重に進んでいる。儀式用の武器は、祭壇のある大部屋の中にある小部屋に、保管されていると踏んでいる。


 警備員は、日中から日没前までは、通常祭壇の横、目的としている小部屋の前あたりに常駐し、警備をしているが、今の時間は帰宅しているはずだ。それでも念のため、祭壇がある大部屋の扉の前で止まり、慎重に中の様子をうかがう。


(よし、帰宅しているようだな。)


 想定通りに誰もいないのを確認してから、慎重に、音を立てないように少しずつ扉を開けていく。


「ギィィィー。」


 極力音を立てないように、慎重に扉を開けたが、扉の付け根からどうしても音が出てしまった。実際に出た音は、十分に小さいはずなのだが、音を立てないようにしたいという強い気持ちが、大きな音のように錯覚させる。


 扉をゆっくり開けるにつれ、大部屋の内部が見えて来る。気持ちを落ち着かせながら、そーっと、そーっと、慎重に中をうかがう。


(まずい!)


 視界が開け、大部屋全体的に見えるようになった瞬間、人影が見えた!


「っ・・・」


 辛うじて声を上げるのをなんとか耐え、目を見開く。驚きの余り、思わず息が止まりそうになる。


(ふ~~~~)


 普段であれば、そこまで驚くこともなかっただろう。思った以上に緊張して、余裕がないようだ。ただ、それだけではないのだろう、暗闇の中、ロウソクのかすかな光を頼りに、していたため、見たことがあるもののはずなのに、印象が異なって見えたことも原因だろう。


(驚かせやがって。)


 人影と勘違いしたものは、ロウソクの光に照らされて、優しく微笑む女神の像だった。この女神の像は、もしかしたら、例の声の主かもしれない。


 鼓動が速まり、バクバクなっている心臓を落ち着かせてから、気を取り直して祭壇のある大部屋に、慎重に侵入していく。念のため、扉を閉めた後、特殊部隊がやるように、全方位を確認しつつ、素早く目的の場所である小部屋前に移動する。


(ちっ。まあそうだろう。)


 小部屋の扉に近づき、開けようとしたが、そのままでは開かなかった。村の技術レベルの低さから、扉に鍵がかかっていないことも期待していた。日中に警備員を配置している場所の近くでもあるので、その可能性は十分あると思っていたが、期待通りではなかった。


 教会の入り口や、ここまでの扉にはなかったが、流石に貴重品である儀式用の武器などが保管されている小部屋には、残念ながら扉には鍵がかけられていた。まあ、期待していたこと自体が間違っていたのだろう。


 明かりを鍵に近づけて、さらに細かく調べていく。


 鍵穴は、現代のような小さいものではなく、指を突っ込んで探れる程度に大きい。日常に使っている扉ということもあり、流石に毒針などの罠が付いているということはない。


 鍵穴に指を突っ込み、触覚で内部構造を探り、確認していく。鍵穴は、上部にのみ仕掛けが施されており、複数の穴が確認できた。


(これなら、なんとかできるな。)


 村の技術力から、鍵があったとしても、簡易な物だろうと想定していた。案の定、鍵の種類は、俺の想定内の種類だったようだ。


 触覚で分かる範囲ではあるが、鍵は、思った通り原始的なものだ。金属が貴重なこともあり、木材などでも作れる鍵の1つ。外見と手触りから、いわゆるエジプト鍵といわれるものだろう。


 エジプト鍵の仕組みは、2枚の板を上下に重ね、同じ位置に複数の穴を開け、円柱形のピンをその穴に入れて、板が動かないように固定する形になっている。その2枚の板のうち、下の板の下面が、鍵穴の上部に来るような構造になっている。


 開錠するときは、開いている複数の穴から、円柱形のピンを上に押し上げることで、2枚の板が、ずらせるようになり、開錠され扉が開くようになる。


 実際に開錠するためには、複数の穴の円柱形のピンを、同時に押し上げる必要があるため、その部品が開錠鍵となる。仕組みが理解できていれば、偽鍵を作ることはそう難しくない。


(事前の準備が活かせそうだ。)


 原始的な鍵の種類をいくつか想定し、準備してきた。エジプト鍵であれば、開錠するための小細工用に持ってきた、粘土と竹材で対応できる。まずは粘土で、開錠のための穴の位置を確認。持ってきた竹材を加工して、簡易な偽鍵を作る。


(よし、上手くいった!)


 何度か調整する必要はあったが、偽鍵が完成し、無事開錠できた。早速、儀式用の武器が保管されているはずの小部屋に潜入する。


 小部屋に入ると、すぐ目の前に棚があり、儀式用の武器と複数の箱があった。まずは、目的であった儀礼用の武器が目視できたので一安心。ただ、儀式用の武器は少々大きすぎるため、ぜいたくを言えば、できればもう少し小ぶりの、ナイフのようなものが望ましい。


 さらに良いものを探すため、棚に置いてある箱の中身を、1つずつ確認していく。


(うーん。都合の良いものはないか・・・)


 箱の中身は、聖書や儀礼用の服、布などが入っているものが多い。これまで本を見たことがなかったので、聖書を見つけた時は、少し感慨深かった。本は相当な貴重品なのだろう。


 小部屋に保管されているものは、どれも貴重品のようで、俺が単なる泥棒であれば、箱の中身はすべて持っていきたくなるだろう。だが、これから想定されるサバイバル生活には、全く必要ない。それどころか、邪魔なだけだろう。


(残念ながら、希望通りのものはないかな。)


 保管されている箱の数は、かなり多いため、箱を開けては、中身をチラ見して閉じるを繰り返していく。箱はそれなりの数があったのだが、あたりを引くことができず、残り少なくなっていく。


(よし!)


 中々良いものが出てこなかっため、諦めかけた時に、ようやくあたりを引いた。儀礼用と思われるナイフだ。サイズ的に、隠して持ち出すのにもかなり良い。


(やっていることは完全に泥棒だが、ご容赦願おう。)


 ナイフ以外を急ぎながらも、慎重に丁寧にもとの状態に戻しながら、一息。顔はニンマリしてくるのを、なるべく抑えながら、作業を進めて行く。


(よっしゃーー目的達成だ!)


 しばし達成感に浸る。後は、気づかれないように帰るだけだ。来た道を慎重に帰るだけなので、難易度は一気に下がる。


 希望のものを見つけるまで、それなりの時間はかかったのだが、それでも俺が想定したよりも早く、金属製の武器を手に入れることができた。まだ十分に時間的な余裕もある。


 ガッツポーズをしながら、小部屋を出ようと扉の前に移動したところで、扉の前から声が聞こえてきた・・・


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