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第79話 ロバとの周辺探索

 イーリスの里では現在ロバを6頭飼育している。雄雌の数を揃えて3:3で飼育しているが、そのうち最初に確保した、雌雄1頭ずつにロバに、ルシオとロシナンテという名前を付けてある。


 その2匹のロバには、マナ水を飲ませて影響を調査していた。最初こそ、あまり変化はなかったが、徐々に変化を感じるようになり、3か月たった段階で、他のロバが超えられない柵を、余裕で飛び越えるようになった。


 身体能力の変化は、マナ水を与えていないロバにはみられないものなので、マナ水の影響だろうと考えている。人間にも効果がありそうだが、人体実験たぐいは安全性が確認できない限り控えたい。身体能力の他にも、頭の良さを感じているが、こちらは個体差もありそうなため、マナ水の影響があったのかどうかは、判断がつかない。


「また来たのか。」


 ルシオとロシナンテは、自由に柵の外にでられることもあり、俺が里に居るときは、いつの間にか横にいることが多くなっている。里の中で悪さをすることもあったが、一度怒ると同じ事は二度としなかった。


 以前は柵の中に連れ戻していたが、悪さをすることがなくなり、俺についてくるだけなので、自由にさせておくことにした。「飯だぞ」とか「柵の中に戻れ」など、簡単な指示にも従うようになり、こちらの言っていることが明らかに分かっているようだった。


 ロバはウマに比べて体格も小さいため、走る速度は最大で時速24km程度と言われている。俺が長距離で走る速度もそれに近い時速なのだが、余裕で着いてくるので、それ以上の速さで走れると思う。


「よし、探索に出る。荷物を持って欲しいので、籠を付けるぞ」


 随分言うことを聞いてくれるので、試しにやることを説明してから、里で作ってもらった籠を2つずつ乗せたが、嫌がるそぶりを見せなかった。近頃は俺自身も籠を背負って、ルシオとロシナンテと一緒に、里の周辺探索をすることにしている。


 探索範囲は以前より広く、片道3時間、往復6時間程度の範囲で行ける距離としている。探索途中、走りながら調査や収穫を行うので、時速は15km程度、探索範囲は一番離れる距離で、大体50km程度になるはずだ。


 1回の探索を長方形の辺を走るように行い、繰り返すことで、最終的な里の探索範囲を、里の出口を中心にひし形とすることを目指している。かなりの距離を探索するので、ロバのひづめを保護するために蹄鉄もつけた。

 

 結局、探索を終えるまでに、週3、4日使い、3か月弱かかった。かなり地味な作業だったが、ルシオとロシナンテが付いて来てくれるのと、セルカとも話ができるので、それなりに楽しく探索することができた。

 

 本格的な探索を広範囲で実施したが、成果はそこまで多くない。毎回一番遠くまで行ったときに、『しるし』を上空になげて、さらに20kmほど先も探索した。その結果、里の出口から60~70kmの範囲での探索ができたことになるが、周辺に村などのは全くなかった。


(まさか、ここ以外滅んでしまったわけではないよな・・・)


 ここまで広範囲に人の気配がないのは、正直不安だ。まだ、結論を出すのは早いが、既にこの世界は滅んでしまったのではないかとも考えてしまう。今後、これ以上の範囲で探索をするには、野宿も覚悟した準備が必要になるだろう。


 人の気配だけでなく、植生の状況もあまり思わしくなかった。既に発見したナツメヤシの群生ほど有用なものは見つからなかった。ところどころに、麻などの乾燥や荒れ地に強い植物の群生地帯はあるものの、基本的には砂漠か荒野になっていた。


 里の出口前で見られる、大型獣の骨は探索した範囲で新たに見つかることはなく、里周辺以外では、結局見られなかったのも意外だった。少なくとも追加で何匹かの骨は、見つかっても良いのではないかと思っていた。人里近くにしか現れないような事情や特徴が大型獣にはあるのかもしれない。


 成果が全くなかったわけではない。まず、ヨモギの群生地帯を発見した。ヨモギは前世では日本にそこら中に生えていたが、もともとは中央アジアの乾燥地帯が原産といわれている。こちらでも見つかることを期待してが、見つけられて良かった。


 地下茎を傷つけないように、大きいものを10株ほど確保している。ヨモギは独特の香りがあるが、若芽は食用にできる。生の葉っぱは止血にも使えるし、乾燥させれば、お茶のように飲むことができる。そのお茶には、下痢や貧血など多くの薬効があるので、健康補助としても使えるだろう。


 葉には微量の油を含んでおり、精油して内服すれば、発汗作用や解熱作用があるので、薬としても期待できる。後はトイレに入れておけば、秘密裏に準備していた危険度の高いものも作れるだろう。


 そのほかにめぼしい植物は、ジャトロファ、日本名をナンヨウアブラギリも見つけることができた。種子には油分を多く含むが、毒も含まれるため、食用としては使いにくい。燃料として使う程度だろう。


 ジャトロファの良いところは、収穫できるものより、その特性だ。乾燥した地域で育てることができ、普通の作物が育たないような荒れ地でも育つ。これまで見つけてきた植物も皆似たような性質を持つが、これは偶然ではなく、この環境下で残るべくして残った植物たちなのだろう。


(しかし、思わぬ成果だったな。)


 今回の周辺探索の植物の成果は、この2種類のみだった。しかし、今回の最大の成果は別にある。探索している最中に、ふと、ロシナンテが歩きづらそうにしていたので、足元を確認したところ、蹄鉄に石がくっついて、詰まっていた。


 その石を取り捨てようとしたところ、石に細かい黒い砂のようなものがくっついていた。黒い砂の正体は、いわゆる砂鉄。そしてくっついていた石の正体は、英語名でロードストーンと言われる天然磁石だった。


前世であれば、磁石はありふれたものだが、作るには電気が必要なため、こちらではかなり貴重なものになる。天然磁石は、落雷により大きな電流が磁鉄鉱に流れることで磁性を帯びるたものだが、とにかく貴重で中々見つかるものではない。貴金属や宝石などより、よっぽど貴重だと思われる。大成果だ。


里に大事に持ち帰り、なくさないように厳重に保管している。天然磁石が貴重といっても使い道がなければ、大成果とは言わない。磁石が見つかったということは、ようするに方位磁石が作れるということだ。今後、探索範囲を広げるときに、非常に役に立ってくれるはずだ。


(まあ、使うには一工夫しないとな。)


 実は天然磁石は非常に貴重なのだが、磁力がとても弱い。それでも方位磁石は作れるのだが、磁力が強い方が使いやすい。手間はかかるが磁石は1つあれば、磁力を強化することができる。


(昔の人の知恵を借りて、オリジナルの磁石をより強力なもの作ろう。)


 磁力の強化方法としては、ダブルタッチ法と呼ばれるやり方を使う。知ってしまえば単純な話だし、磁石の構造や仕組みを知っていれば、思いつくだろう。


 まずは天然磁石を鉄棒にこすりつけて、新たにもう1つの磁石を作る。次に鉄棒で作った磁石の中央から、両端へ磁石をこすりつけて、鉄を磁化させると、元の磁石より強力な磁石ができる。これを新しく作った磁石で繰り返せば、オリジナルの磁石よりはるかに強力な磁石になる。


 いくつか強力な磁石を作っておいて、作り方などは機密としてセルカに管理させておくことにした。


(周りに何もないというのも、悪い話ばかりとうことはない。)


 今回の周辺探索は日帰りでの探索範囲としては、ほぼ最大になるだろう。周辺には人の気配も大型獣の気配もなかったので、里と村が襲われるような可能性は低いことを改めて確認できたのも、成果の一つだろう。


 さらに探索範囲を広げるには、野宿が必要になるため、準備と覚悟が必要になるだろう。流石にここ以外にも、まだ人間が残っていると思いたい。女神の使命を果たすのであれば、他の人とかかわる必要があるため、いずれ探索範囲を広げることになるだろう。 


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