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第73話 村の税収と運営

「本当にそれだけの税収だったのか?」


「ええ。この村は本当に食べていくのにギリギリでしたので。」


 元村長に、村の収入である税について聞いてみた所、酷いものだった。そもそも村の住人は、自分の収穫をすべて食糧にまわしても、慢性的に不足気味で十分暮せていない状況にあり、税を納める家族はごく一部だという。


(まるで飛鳥時代の税収だな。)


 住人は、納められるときに収穫の一部、恐らく3%程度を、村共有の倉庫に納めているのが実態のようであった。村の倉庫に食糧はほとんどなく、比較的安定して取りやすい羊毛が多かった理由が良く分かった。


 皆ギリギリの生活をしており、強制的な取り立ては行っておらず、年間で納められる量も大したことがなく、かつ、不安定という。村と言うより、貧乏な家族の寄り合いというのが実態だろう。


(村長が村を譲りたいと言うのも無理のない。受け継がれてきた義務だけでやっていたのかもしれない。いや、もしかして・・・)


 村長になり手がないのも良く理解できた。村長自身も働いており、このような状況では、村長に旨味などあるはずがない。なんとか村の立て直しを早い時期に達成し、税収は安土桃山時代の3分の2とは言わないまでも、いずれは江戸時代の五公五民を目指したい。


 それくらいの税収が無理なく得られるようにしなければ、住民の生活に余裕はなく、日常生活の必需品以外にニーズが生まれることもない。そうならなければ、食べるだけの生活を強いられ続け、村が豊に発展することはない。税が、納められるということは、住民がそれだけ豊だという証左でもある。


 今の村の状況は無税に近く、それどころか、里との物々交換が始まってからは、住民に配給を続けていたらしく、完全な赤字経営。そのうえ、立て直しの見込みもない。村長にはめられた感すらある。


(まあ、もう決めたことだな。)


 動物のような生活を送る村の実態を知ってしまった以上、何もせずに見過ごすことは、俺には許容できない。正直、今は動物よりより悪い。


 村の住人の感情は、生活の厳しさから怒哀に偏り過ぎている。親を亡くした孤児、病弱な親を支える子供、満足に食事がとれず栄養失調の特徴が出た子供がざらにいて、暗い表情の住民が多すぎる。


 前世でも、貧乏な国の悲惨さを伝える話として、似たようなことを良く聞いたが、言葉だと伝わらない。目の前で実際に見ると、とてもではないが耐えられない。この正直野生の動物の方がマシな状況を、まずは1年で打破して見せるべきだろう。


(村の住民の健康を維持しつつ、里で実証した運営方法の実施が基本だな。)


 当面は里で収穫する食糧を使い、死なない程度に炊き出しを行いつつ、全力で耕地を広げていく方針で運営を続ける。村の組織運営は、里と同じく宗教をベースにして運営していきながら、随時、使える人材を発掘して組織の強化をしていくつもりだ。


・・・


(あっという間に、一週間か。)


 住民の健康状態を、最低限の状況に押し上げるために、集中的に配給も続けている。肉や骨を出汁として作ったスープもかなり好評で、元気を取り戻しつつあるのは嬉しいが、材料が潤沢ではなく、限りがあるので頻繁には出せていない。それでも炊き出しを始めて一週間で、子供は一気に元気になった。体形はすぐには戻らないが、徐々に改善していくだろう。


 住人とのコミュニケーションは、祭壇でセルカに取ってもらっているが、その効果が絶大で、日々信者を増やしている。狂信者のようなものが増えると困るが、セルカの程よい抜け具合が自然と伝わるのか、そのような傾向はない。


 年長の子供を中心に、手伝いを積極的に行ってくれるようにもなっている。これまで、ろくな遊び道具もない状況だったため、何もかもが珍しく、手伝いすらも面白く感じるようで、笑顔のが増えている。


 残念なことに、病気の住民も少なからずおり、食事だけではどうにもならない症状もあるようだ。イーリスの女神像に熱心に祈りに来る家族もいるが、あまり打つ手がない。まだ量が少ないがラフマ茶にローズマリーを少し加えて、薬用茶として飲ましているが、病気の原因もよくわからないため、気休め程度だろう。


・・・


(一か月でここまでくれば上出来だろう。)


 急激に立て直しは進んでいるものの、あらゆる面でギリギリな状態が続いている。村で植えた農作物の収穫改善が見込めなければ、里の収穫物だけでは不足してくる。逆に上手く行き、ソルガムと大麻による土壌改良が進めばV字回復も期待できる。


 この世界では植物の成長が早いため、前世で二毛作が可能な品種は4~5回収穫が見込めるし、人手が余っているこの村の人材を活用できれば、食糧事情をかなりのペースで改善できるはずだ。その先になるが、うまく行けば、緑化の着手も早めることができるだろう。


 住民が各自で持っている畑の回復を優先しているが、それに目途が付けば、村共有の畑を作り、一気に広げるつもりでいる。耕地は既に目星をつけており、暇ができるたびにマナ操作を使って、硬い土を粉々にして、前準備を進めている。俺の力を秘匿する方向で考えていたが、村の状況を知ってしまっては出し惜しみしている余裕はない。


 かなりの勢いで耕地を広げているが、その俺の姿を見た大人の住民の反応は共通している。最初、何を見たか理解できずに惚けて俺を見た後、なぜか拝む。あまりにも同じ反応をするので、誰かが音頭をとって、示し合わせているのではないかとすら思う。


 子どもの反応は様々で、笑うもの、真似しようするもの、見世物のようにひたすら眺め続けるものなど、バリエーションが豊で面白い。


 村共有の畑のほかに、共同のトイレも作成している。まだ2つしか作れていないが、元村長にお願いし、住人に必ずトイレで用を足すように指導してもらっている。下水道がない状況では、トイレは疫病防止の対策にもつながるうえ、溜めたものが肥料などにもなる。住人がそこそこいるため、里とは比べようのないスピードで溜まっていくので、早く増設しなければならない。


 村の立て直しのために、住人に指示した成果は、2か月経たないうちにソルガムの収穫、3か月後には大麻の収穫や、竹の乾燥が終わり竹材の確保として出てくるはずだ。その成果を受けてさらに畑を広げつつ、細工も進め、一気に村の暮らしを改善していこう。


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