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第70話 里の人口と物々交換

 残念と言うべきか、順調と言うべきか、イーリスの里の住民が増えている。都合の悪いことに、大人は元農夫のミランダと神父のみで増えておらず、カール、ケイティのほかに5人、子供ばかり増えた。


 今のところ、神父とケイティが、子供の面倒を見てくれているので大きな問題はないのだが、このまま子供だけが増えてしまうと、手が回らなくなる可能性がある。しかも、これまでと違い、増えた子供の中には明らかに2歳に達していないような子もいる。


 セルカに、この状況の原因になりそうなことについて、村の調査を依頼したところ、2,3日で返事があった。


(リコルド、どうやら村はかなりの凶作のようです。毎年、実りは良くないのですが、今年は特にひどいようで、蓄えがなくなったことが原因のようですよ。)


 俺自身も、村に設置した『しるし』で、村の畑の様子を見たが、作物全体的に元気がなく、茎から茶褐色の汁が出ていたり、カビていたりしている。連作障害に強いソルガムでさえ、葉脈以外の部分が黄色く変色している。


 症状から想定するに、土の中の菌類や細菌、ウイルスが根から侵入しているうえ、土自体にも栄養が足りていないのだろう。おそらく、掘ってみれば作物の根にも相当のダメージがあるはずだ。


「なるほど。俺も村の畑を見たが、土自体がもう駄目だな。しばらく凶作が続くだろう。」


(そうですか・・・)


 このままでは、村の食糧事情がさらに悪化する可能性が高く、その影響でさらに子供が流されることや、餓死する村人が出ることも想定される。一方、里では、食糧の備蓄が順調に増えていることもあり、食事の面では、まず心配はないのだが、このまま子供だけが増えると、お世話をする手が足りなくなる。


「このまま、子供だけが増えるのは困るが、かといって、この後村から出される子供たちを見捨てる気にもならないな。どうするか。」


(そうですね。ケイティも頑張ってくれていますから、まだ余裕がありますけど、確かに心配ですね。)


 村での問題は、食糧だけのようなので、現状維持できる程度の食糧を供給すれば、状況は安定する可能性はある。やはり里の食糧を、村に提供すべきだろう。里の食糧には余裕があるが、無条件で提供すると、こちらの今後の計画にも影響が出る。以前、検討した物々交換を実施してみることにしよう。


「セルカ、以前検討した案だが、里の食糧と村の倉庫に貯蓄されている羊毛などと物々交換を進めようと思う。まだ、この里の存在を知られたくないので、村での交換相場を参考に、こっそり交換して来る。」


(わかりました。ミランダと神父にも少し相談して、交換の相場なども確認しておきますね。)


 里の住民には朝昼晩の祈りを義務付けており、その時にセルカは住民とコミュニケーションをとり、必要により、それぞれの住民に指示などを出してもらっている。この祈りを習慣付けたことで、ゴーレムのエネルギーも安定的に供給されている。


 物々交換は、人目が少なくなる夜に行うことにして、それまでに交換の準備を進める。基本的には、里の貯蓄が十分あるもの、ソルガムと肉の塩漬けを交換対象とする。


 俺1人で交換しに行くので、持てる量はどうしても限られる。ナツメヤシの葉で作った籠があるので、とりあえずその籠で背負える量で様子をみることにする。それでも50kg程度のソルガムは入れられるので、最初の交換量としては良いくらいだろう。


 前世でいえば大人3か月分の量だが、こっちの住民はそこまで食べない。50kgあれば6か月分、かなり節制すれば1年分は行けるかもしれない。


 村にとって食糧は必要で価値の高いものだろう。それと倉庫に余っている羊毛などを交換するので、文句は出にくいと思うが、勝手に倉庫に侵入して、強制的に物々交換をする予定なので、書置きをしておくつもりだ。


 書置きには和紙はまだ使わずに、竹材にする。物々交換をさせてもらったこと、今後も希望するかどうかの質問を記載し、取引継続に備えて、こちらの証明として使うマークを入れておく。マークはイーリスの里を示すものとして、今後も製品への刻印などにも使おうと思う。


・・・


(村では喜んでいましたよ。)


「ああ、そのようだな。」


 強制的に始めた里と村との物々交換だが、思った以上に村の食いつきが良かった。初回の成功を皮切りに、村から継続したいことに加え、回数を増やしたいなどの要望が、返信に込められており、村の切実さが伝わってきた。


 返信には、こちらの要望はできるだけ飲むとも記載されていたが、将来のことを考えると良好な関係を築きたいので、要望は控えめに、なるべく公平な取引を行い、禍根を残さないように注意している。


 物々交換は1月に2回程度として、継続して行っている。こちらも頻繁に実施し過ぎると、里の貯蓄量に不安が出てくるため、このペースで落ち着いた。村では当初、俺の正体を探ろうとしていたが、セルカの監視網があるこちらが見つかるわけもない。


 また、正体を探ろうとするなら、取引を中止すると脅したのもきいたのか、今ではすっかり諦めたようだ。脅したときの村長はひどく青ざめ、それ以来、この件を知っている村人への指示を見る限り、正体がばれる心配は、ほとんどなくなったと言って良い。まあ、懲りずに動き出せば、セルカに一瞬でばれるだけだが。


・・・


 物々交換は順調に継続していたが、半年もたたないうちに、村から提供できるものが、ほぼなくなってしまった。今後は、里が提供する物々交換数回分の食糧と、村の家畜との交換も依頼していこうと思う。


 この物々交換のお陰で、村では定期的に食糧確保の目途が立ったため、流される子供の数は予想できる範囲となり、里の人口の伸びは落ち着いている。ひとまずは、ねらい通りの状況になったのだろう。


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