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第61話 子供のいる生活

(セルカを入れて、ようやく4人の集落か。)


 先日ついに、このイーリスの里に、子供を1人迎えることができた。村から大人1人、子ども1人、合計2人を救いだしたことになる。この2人には、イーリスの里の目的に協力してもらうが、なるべく幸せになってもらいたい。


 その点、1人目のミランダについては、今のところ心配なさそうだ。何か憑き物が取れたように、明るく能動的に動き回っている。元気すぎて、燃え尽き症候群にならないか少し心配になる。この世界で50歳は相当な歳のはずなので、無理をしないで欲しい。


 俺も、ミランダにとっても、1人の子供を救えたというのは大きい。子育てはあまくないので、今後は大変だが遣り甲斐がある。


(しかし、いつもながらに慌ただしかったな。)


 先日、セルカから村の教会で儀式の準備が進んでいるという報告があった。2歳の男児が被害者だ。儀式はひっそりと行うのが習わしのようで、情報を掴んだのは儀式が行われる数日前。この辺は課題だろう。


 その話をミランダに伝えたところ、前からお願いされていた課題、遊び道具の用意を急かされた。若干、やぶ蛇な感じで仕事が落ちてきたが、いずれ作るつもりだったので、覚悟を決めて作った。


(最近、ミランダは、俺を大人と同等に扱っている気がする。)


 遊び道具を作るといったが、そんなに手の込んだものを作るつもりはなく、竹材で簡単なものを作った。竹材は、まだイーリスの里からは確保できないが、以前閉じ込められた水路に移植した竹が順調に育っており、竹林になりつつある。2,3本竹を切り出しても問題ない。


 里の竹も、無事に冬を越え順調に育っており、ちらほらタケノコが出ている。まだ弱々しい感じを受けるので、少なくとも半年は地下茎の育成に充てることにしている。


(即興で作った割には、十分だよな。)


 今回は、遊び道具のために、水路の竹林から、大き目の竹を3本切り出してきた。切り出した竹を、節の部分で横に分割し、さらに1つ1つの節を、縦に真っ二つにしたものを大量に用意した。まあ、竹で作ったブロックのようなものだ。


 竹の加工は、岩をくりぬくときに岩を切断する方法と同じく、マナ操作で行った。お陰でブロックは、かなりの速度で作ることができたが、その後に、とげが刺さらないように切断面をナイフで少し削る作業が、非常に面倒臭かった。


 できたブロックをミランダに見せたら、相変わらず容赦のない不信の目線を送られた。不本意だったので、積み木の説明と、竹のブロックを積み上げて、壁や囲いを作ったりするところを実演しながら、幼い子供へのブロックの有用性まで説明したら、納得してもらえた。


 まあ、納得はしてもらえたが、それはそれで、またどうしてそういうことまで知っているのという目線に変わったのは、甚だ遺憾だ。


 どうも、最近、俺が特殊なことを知っている場合の言い訳に使っていた、女神の知識という単語が、ミランダには通じなくなっているような気がする。


(布も何とかなったな。量産が課題だが。)


 布もミランダから用意するよういわれていたが、目途が立った。羅布麻と大麻を、里で育てるのと並行して、見つけた場所に何度か取りに行っている。取ってきたものを使って、繊維を取り出し、それなりの量の糸を作ったところ、ミランダの方で、手が空いた時に布を作ってくれている。


 ミランダの指示で、いくつか道具を作ることになったが、それを使って、起用に布を作り出してくれている。ミランダも忙しく、そこまで時間が取れないが、少しずつでも布が増えていく下地ができたので、器用な大人が増えていけば布の問題なくなるだろう。いずれは自動機織り機を作ってみたいものだ。


(子供を救う方法は、問題なさそうだ。)


 そうしているうちに、いよいよ最初の子供を迎えることになった。2歳の男の子で、名前はカールという。セルカの監視により、性別や名前だけでなく、事前に流される日もわかったので、段取りや準備も進められ、何の問題もなく無事に救うことができた。


 救ってからこの里に運ぶまで、カールは寝たままでいてくれて、思った以上に順調に進み、ありがたかった。だが、問題なかったのは、里で引き取った当日までで、それ以降は大変な日々が続いている。


(やはり子育ては簡単じゃない。ミランダがいてくれて本当に助かった。)


 まず、2歳児は思った以上に動く。そして思った以上に認識能力がある。当然なのかもしれないが、最初に目覚めたらすぐに大泣き。俺があやしても駄目、ミランダでも最初は駄目だった。


 既に少し言葉もしゃべるので、母親や姉のケイティを求める声が、泣き声とともに教会に響き渡っていた。あまりに必死に訴えるため、不憫に思い、村に返すことも頭をよぎったのだが、そんなことをしても、また流されるだけなのは分かり切っている。


(ここは暫く我慢の一択だろう。)


 この状況が長く続くことも覚悟していた。確かにしばらくの間、思い出したようにカールが泣く日々が続いていたのだが、意外な救世主が現れた。


 俺もミランダも忙しいかったある日、カールが箱の中で寝ていたので、ゴーレムであるセルカに任せたときがあった。カールを寝かせる箱の下には、竹材で細工をしており、軽く押すと、ゆらゆら揺れる。セルカ(ゴーレム)に、定期的に揺らすようにしてもらっていた。


 カールは、しばらく大人しく寝ていたのだが、ふと目が覚めてゴーレムを直視することになったのだが、予想に反して、直視しても動じることがなく、そのままゴーレムに懐いてしまったのだ。今では、ゴーレムにだっこをせがむまでになっており、俺も、ミランダも、かなり楽になっている。


 俺としてはありがたいと思う気持ちもあるが、なぜ俺に懐かないのかと思うところもある。その思いはミランダも同じようで、中々複雑な目線で会話することになった。


(まあ、他の作業が出来なくなるより、ましと思うべきだろうな。)


 カールは2歳児で、可愛い盛りだ。落ち着いてからは、俺やミランダの癒しにもなっている。つくづくこんな可愛い、将来の大事な人材になりえる子供を捨てるような状況と、村の掟については怒りを感じている。


 少しずつでも多く救っていきながら、いつか大きな手を打つ準備をしていくべきだと、改めて心に誓った。


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