第60話 女神の国につながる道
(カールに会いに行こう。)
村の少女ケイティは、弟のカールが女神の国に行ったと告げられてから、弟のカールと会うために情報を集めていた。持前の行動力を発揮し、両親はもちろん、牧師、近所の人たち、それだけでなく、先日はついに村長にも話を聞きに行った。
ただ、得られた情報は、皆が示し合わせたように、同じような内容だった。ケイティは手に入れた情報を整理して、考えている。
(やっぱり、カールは可愛いから、女神に選ばれて女神の国に行ってしまったということよね。それで、もう帰ってこないかもしれないということなのね。まあ、女神もお目が高いというしかないわね。それでも、会いに行くくらいは、許してくれても良いのに。)
ケイティはカールが返ってこない理由には納得していたが、どうしても会いたいと思っていた。
(教会の地下に、女神の国につながっているところがあると言うのに、どうしてもその場所を見せてくれないのはなぜなのかしら。女神の許可がないと、国に入れてもらえないのかな。カールにどうしても会いたい。)
(こっそり女神の国に行って会うくらい、きっと許してくれるはずよね。見つかったら怒られるかもしれないけど、弟にどうしても会いたい姉の気持ちは、女神様も分かってもらえると思う・・・)
(うん。そうよね。カールに一目会えさえすれば、怒られても良いし。罰のお手伝いはなんでもするわ。まずは、女神の国につながる場所を見せてもらうのが重要ね。)
これまで両親や神父と話した感じから、簡単には女神の国に行く場所には行けないことを察しているケイティは、必死に工夫して、その場所を見せてもらう方法を企てる。ケイティは、一生懸命用意したカール2歳の誕生日のサプライズプレゼントを、カールに送ってあげたいという名目で、頼み込むことにした。
両親や牧師に、毎日のように頼みに行き、折角用意したプレゼントが無駄になってしまうことの悲しさを必死に説明して、やっと許可されることになった。許可はされたが、そのための条件も付いてきた。プレゼントを入れられるような小さめの木の箱を作るように、そう牧師から言われている。
(お母さんがカールのために準備していたのは、女神の国に行くための木の箱だったのね。よーし。しっかり木の箱を作って、プレゼントを贈るぞー。プレゼントを木の箱に入れて、水の流れで運ぶと言っていたから、水が入らないようにしっかりつくらないとね。)
元々の目的を忘れプレゼントを贈るための木箱も本気で作るケイティだった。ケイティは数日かけて、大人の肩幅程度の木の箱を完成させ、何度も水が入らないようにチェックをしていた。その出来栄えは素晴らしく、とても子供が作ったとは思えない。
ケイティは、箱の中にプレゼントと追加で手紙を入れて、蓋をしてから、牧師に送る許可を取りに行った。
「神父様、やっとカールにプレゼントを贈るための箱が完成したの。女神の国に送って良いですか?」
「おぉ。ケイティ、もう作ったのかい・・・。上手だし面白い形をしているね。」
神父が見た木の箱は、想定していたより整っていた。木の箱の下に2つの細長い木の棒のようなものが付いている独自の工夫が見て取れる。
「そうなの。普通に箱を作ってプレゼントを入れたら、どうしてもひっくり返りそうになったのと、まっすぐ進みにくかったから。下に細長い棒を付けると、その棒の方向にまっすぐ進むのよ。」
「なるほど。すごく良くできているね。では私が預かって、今日にでも送っておくよ。」
牧師はそういって、木箱を受け取ろうとするが、ケイティは渡さない。
「すごーく頑張ったので、ちゃんと水の流れに乗って女神の国に届くか見たいの。どうしても見たいから、届けるところを一緒に見させて欲しいの。」
牧師は少し困った表情をしたが、ケイティの強い意思を感じる目線と、言葉に根負けしたように、諦めて許可を出した。
「わかったよ。ケイティ。じゃあ、今から送るから一緒に行こう」
神父に伴われてケイティは、教会の地下に続く道を進んでいる。道は、入り口から差し込む光で薄暗いながら視界は確保されていたが、足元が見えにくい。神父は火種を持ち、定期的に置いてあるロウソクに火をともしながら進んでいく。
少し進むと、道の先に空間ががあり、祭壇とその後ろには水の流れがある。
「さ、ケイティ、その祭壇の後ろが女神の国につながる水路だよ。祭壇に上がって用意した木箱を水にいれなさい。」
「はい・・・」
ケイティは静かに祭壇に上がる。何度も水路の奥を見ようとしているが、やがて諦めたように、木箱をそっと水の上に置いた。木箱の中には、たくさんのプレゼントが入っているのか、水に少し沈み、その後、安定して進み始めた。
ケイティは、真剣に木箱が流れる様子を見ている。木箱が見えなくなっても、いつまでも見ており、何か考えているようにも見える。神父はしばらくその様子を見ていたが、耐えかねて声をかける。
「ケイティ、もう女神の国に木箱は向かったよ。そろそろ戻ろうか。」
「・・・・」
ケイティは何かに集中しているようで、返事をしない。
「ケイティ、そろそろ戻りますよ。こちらに来なさい。」
牧師は、ケイティが飛び込むのではないかと思ったのか、肩に手をかけながら、強めの声で話をした。
「・・・はい。ありがとうございました。戻ります。」
牧師は素直に戻ろうとするケイティを見て、ほっと息をついた。
(女神の国らしいところは、結局見えなかったのよね。あの先に本当にあるのかしら。これはやっぱり、行ってみるしかないわね。)




