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第45話 罠の成果

(ふう。上手くいっているな。)


 監視網を構築して1週間がたった。セルカは『しるし』を使った監視に勤しんでいる。特に寝る必要はないらしく、積極的に情報を集め、定期的に報告してくれている。それどころか、監視を楽しめているようで、村に設置する『しるし』の数を、もっと増やしてとまで言われている。


(ありがたいが、はまり込んでいるようで、若干引く。)


 そのセルカから、早朝に連絡があった。ようやく罠に獲物がかかったらしい。獲物は、見える範囲で確認できているだけで2匹。これまで成果はあがっていなかったものの、夜になるとそれなりの数、動物が水辺にきていた。いつかは成果があがるとは思っていたのだが、かなり時間がかかった。


(初の成果、それも2匹以上とはありがたい。)


 罠の周りに植えた植物が成長しており、食べれば腹の足しになりそうな大きさになっていたので、そろそろかなと正直期待していた。ただ、罠猟は、これまで魚の時も含めて成果がなかったので、こちらも駄目かとの不安はあったが杞憂に終わったようだ。


(早速、準備して罠に向かおう。逃げられる可能性もあるしな。)

 

 準備は、獲物の止めを刺すことと、捕獲の両面をイメージする。武器、餌、アラビアゴムノキの樹皮と樹液で作ったロープくらいが妥当だろう。急いで準備し、はやる気持ちを抑えながら集落の門をくぐる。


(集落から一番近い水辺の罠です。集落側にある1つめの罠と、右端奥の罠にそれぞれ獲物がかかっています。動物は詳しくないので種類とかはちょっと。)

 セルカから、獲物がかかっている場所の情報が入る。


 前世でも、砂漠や荒野には乾燥に強い野生動物が生息していた。非常に温度差が激しいゴビ砂漠周辺でさえ、フタコブラクダ、ゴビ熊、モウコノウマ、野生ロバ、サイガ(ウシ科)、コウジョウセンガゼルなどが生息している。気候が緩やかな他の砂漠はさらに種類が多い。


 ここであれば、多様な獲物が確保できるかもしれない。獲物によっては皮や肉の確保ができる。そうすれば生活基盤構築の課題解決につながる可能性も出て来る。期待を膨らませながら、罠の場所に急ぐ。


 走っても息が切れないので、徐々に速度を上げたので、思った以上に早く罠に到着。


(こわっ。走る速度も異様ですよ。)


 途中にある監視ポイントで見ていたのか、セルカから若干引いた声が聞こえてくる。あまり自覚はなかったが、相当早いらしい。住民が増えた時は、あまり見られないように、気を付けた方が良いかもしれない。


(そこの罠です。)


 獲物を驚かせないように、1.5mほど掘り下げたピットフォールの中をゆっくりと覗き込む。頭が見え、確かに獲物がかかっている様子がうかがえる。暴れて逃げられるような感じではないので、さらに覗き込み全体を確かめる。


 馬のようだが全体的にスリムな体系で、しっかりとした足が印象的。獲物は俺に気づき、素朴そうな目でこちらを見ている。怯えてはいないようだ。馬としては小ぶりに見えるが、体長は2m程度あるだろう。


「ロバだな。食べられなくもないが微妙だな。」


 大人しそうにしているので、持ってきたソルガムの実を、穴に投げ入れてみる。しばらく警戒していたが、腹を空かしていたのか食べ始めた。


「野生にしては警戒心が薄いな。餌付けができて、馴れるようなら使い道もあるか。」


 ソルガムの実を追加で投げ入れる。一旦放置して、次の罠を見に行くことにする。


(そこです。落ちた時怪我をしたのかもしれません。)


 2つ目の罠もゆっくりと覗き込む。こちらにも獲物がかかっている。先ほどのロバより、さらに、ふたまわりほど小さい。


 頭には、2本の角がまっすぐ上に伸びている。角は40cmくらいありそうだ。体長は150cm程度、肩までの高さは70~80cm程度だろう。サイガに特徴が似ている。


「サイガかな。皮は取れそうだし、角も気になる。食用としてもいけそうだ。」


(・・・そうですね。可哀そうな気もしますが、早めに楽にさせてあげた方がよさそうです。)


 ピットフォールの深さは1.5m程度。落ちた時の角度が悪かったのか、サイガは足を痛めたようだった。右前足を浮かしている。生け捕りで、繁殖なども考えるのであれば、罠の深さを調整した方が良いかもしれない。


「そうだな。楽にしてやろう。」


 色々な武器を毎日練習しているが、今回は弓を選択する。この状況で怪我をする危険性がある近接武器を選ぶ理由はないだろう。


 強弓を引き絞り、ねらいを定める。狙いはサイガの眉間。相手を観察しながら、動きを予想する。こちらの意図を理解していないのか、足を怪我しているため動けないのかわからないが、サイガはほとんど動かない。


 集中して射る。距離が近いこともあり、狙い通り眉間に矢が当たった。かなりの速度だ。


 サイガは矢が当たった瞬間崩れ落ち、その場で動かなくなった。矢が眉間に少しめり込んでおり、大型獣の骨で作った鏃の強度と威力に少し驚く。


「おそらく気絶しただけだろう。早めに処理しないと・・・」


 眉間に多少鏃がめり込んだとしても、眉間は強度が高い場所のため、即死するようなことは、まずない。逆に即死してしまっているようだと、眉間を狙った意味がなく、少し面倒なことになりかねない。


 俺の心臓が初めての狩りでバクバクしているが、できるだけ冷静に考え、次の作業の覚悟を決める。なるべく、苦しめないように冷静にしないとな。


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