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第44話 監視網の構築

「ううむ・・・厳しいな。」


 セルカと遠隔で話ができるようになってから、気が休まる暇がない。頻繁に、ものすごく頻繁に話しかけられる。彼女は一人で取り残された状態が長く、寂しかったのだろう。これまでの彼女の境遇にを考えると無理もない。そう思い、なるべく会話をしようという気持ちはあった。だが、1日目で疲弊し、余裕をもって耐えられたのは数日後に間だけだった。


 彼女は、いつでもどこでも、そして何度でも話しかけて来る。性別の差もあるのか、俺はそこまでお喋りは好きではない。特に良く話題に上がる、数十年も前の恋愛事情や噂話などには、心底興味がわかない・・・


(なんとかせねば。)


 切実に、自分自身のためにも、人材確保の意欲が沸き上がっている。人材を確保し、セルカの話し相手になってもらうことができたら、どれだけ楽になるだろうか。普通の人は、ゴーレムにある『しるし』に触れながら会話をしなければならないのは、面倒かもしれないが、確保した人材に是非ともお願いしたい。


 しかし、どう考えても、人材確保にはまだ時間が必要だ。お喋り好きの人材確保となるといつになるかわからない。


(冷静に考えると、代案が必要だな。)


 人材確保以外の方法で、しかも、できるだけ建設的な方法で、この状況をなるべく早く打開したい。できればセルカにとって、夢中になれることが良いし、今後の目的達成や課題解決につながる仕事を、お願いできることがベターだ。


(彼女に頼む仕事か。)


 色々と、やらなければならないことは山積みだ。その中から、セルカにお願いできそうな仕事を考えてみる。


(うーん。何か好きそうで喜んでやってもらえそうなことか。)


 より意義のある仕事をやってもらうため、現状を簡単に整理し、目的達成に向けてするべきことを考えて見る。


 現在は、人材確保に向けて、生活基盤の構築、特に衣食住の整備を進めている。


 衣については目途が立たず、仕掛けた罠に獲物がかかるのを待っている状態だ。時々罠を確認しに行っているが、まだ成果はない。食は農作物の安定確保の目途が立っている。寒さが和らいだため、既に種まきまで終えており、畑の見回りが主な仕事になっている。住も教会を使えば、当面問題ない。


 人材確保に向けた取り組みについては、村からの移動手段として水路の整備が概ね終わり、ようやく目途が立ちつつある。だが、水路に流された子供の安全を保障するすべがない。子供達がずっと寝たままでいれば、水路の流れに沿ってやがて滝の上まで到着する。しかし。起きてしまうと、木箱の船から水に落ちてしまうことは想像に難くないし、長い時間起きないとは思えない。


 そうなると、村からいつ子供が地下水脈に流されるか、そのタイミングを把握することが必要なのだが、その方法が整理できていない。まさか、ずっと村の近くで待機して監視するわけにもいかないだろう。


(監視か・・・)


 ここまで考えると、共通の課題が浮かんでくる。罠の確認、畑の見回り、村の監視が必要で、定期的に時間を割く必要がある。この他にも、重要な場所などが出てくれば、別途監視が必要になるだろう。


 監視の効率化を考えた時に頭に浮かんだのは、以前作った『しるし』だ。『しるし』に接続することで、それがある場所で視覚・聴覚を使った情報収集ができる。それを使えば移動時間が不要になるため、監視が非常に効率的になるはずだ。


(高性能な監視カメラとして使えるか・・・それに、彼女は好きそうだしな。)


 セルカが俺に話してくる話題の傾向から、噂話などの情報を集めて話すのが好きそうだ。重要な場所の監視が基本だが、そうでない場所、例えば村の中にも『しるし』を設置して、噂話を集められるような環境を作れば乗ってくるはずだ。


 上手く話せば『しるし』を使った監視には、興味を持ってもらえるだろう。そうすればセルカの暇がなくなり、今のような常時話しかけて来ることがなくなる・・・はず。


(うん。いけるかもしれないな。)


 ただ、以前作成に成功した木製の『しるし』では問題がある。想定していたことだが、耐久性に難があり、先日作成したものは1週間程度で使えなくなった。外への設置も考えると、この問題のクリアは必須だ。


 その問題の解決につながりそうなのは、マナ操作スキルの向上状況だ。俺のスキルは、毎日使っていることもあり、かなり向上している。材料に細工を施すこともできるようになっている。以前は細工が難しかった、固い岩の加工もできるかもしれない。


・・・


(成功させるには岩も厳選する必要がある。)


 『しるし』を作るには、細かい紋様を彫る必要があり、その紋様が崩れないような材質が望ましい。そのため固く材質が均一な石材が良い。


 石材の原料になる岩は色々な種類がある。ここでもいくつかの種類が取れるのが分かっている。岩の種類は、その成り立ちで考えると種類は少なく、3つに分類される。マグマが冷えて固まり結晶化した火成岩、色々なものが堆積して押し固められた堆積岩、火成岩や堆積岩が地殻変動による熱や圧力を受けて再結晶化した変成岩だ。


 以前、石段を作るときに岩盤を掘りだしたときに採れた岩は、非常に固く重さもかなりあった。見た目や重さから、堆積岩の1つ石灰岩がほとんどで、場所によっては変成岩の1つ大理石のような岩も採取できている。そのほかにも、砂岩や凝灰岩も採れている。


 幸い、どの岩も比重が重く、材質も均一で良いのだが、『しるし』の用途を考えると、外に長期で置くことを考える必要がある。そうなると、吸水率はできる限り低い石材が望ましい。水を吸うとゆがんだり、ひびが入って割れたりする。


(石灰岩か、大理石かな。いや、石灰岩か。)


 材質の均一性、吸水率、固さ、それに設置しても怪しまれにくい材質と考えると、石灰岩が『しるし』の理想的な材料と考えても良さそうだ。名前からすると柔らかそうなイメージがあるが、かなり固く、圧縮強さも高い。城や建物などの石材にも使われるので、耐久性も期待できる。


(よし、石灰岩の石材ならたっぷりあるしな。早速加工するか。)


 掘り出して教会の横に積み上げている石材を、さらに適度な大きさにマナ操作で切り分ける。そして『しるし』にするために必要な紋様を思い浮かべ、細かい細工をしていく。石材の内部に掘り込む形にすれば、一見単なる岩にも偽装できる。


・・・


 細工には苦労すると想定していたが、最初からあっさり成功した。以前、木で作成した時と同じ大きさに岩を成形し、成功した時のイメージに沿って、紋様を思い浮かべながら、マナ操作で彫っていったのが良かったのだろう。


 記憶力の良さが、再現性につながるのかもしれない。まあ、この程度の細工は、旋盤や石ノミなどの工具があれば、普通にできることかもしれないが、それでも素手でできるのは、優位性が出しやすく嬉しい。岩の内部に紋様を掘れるのもかなりの利点だ。


 理屈的には、宝石でもできそうだが、希少性を考えるとまだチャレンジする勇気がもてない。宝石にできれば、ゴーレムの『しるし』がそうであるように、かなりの年月利用できそうではあるが、石材での性能が十分であれば当面不要だ。


(うん。中々良い出来だな。)


 石灰岩で作成した『しるし』は固く、耐久性は問題なさそうなので早速量産した。やはり成功率は高い。岩の材質が均一でないものもあるため、そのときは失敗するが、それ以外ではほぼ失敗しない。


 段々楽しくなり調子に乗って、山ほど作った。早速、量産した『しるし』を持ってゴーレムの前にいく。


「セルカ、ちょっと試したいことがある。」


(はーい。なんですか?・・・きもっ)


 同じ形、同じ大きさのものを、大量に持っているビジュアルが異様だったらしい。集合体恐怖症のけもあるのかもしれない。


「きもって・・・失礼だな。ちょっとこれで試してほしいことがあって。」


(それってゴーレムの宝石と同じ紋様ですよね??? よくそんなもの作れましたね。かなり細かい細工が必要なはずですけど。)


 見ただけで感じられるものがあるのだろうか。セルカは俺が持ってきたものの正体にすぐ気が付いた。俺は『しるし』の作り方や、俺のマナ操作などのスキルについて説明する。


(マナ操作ですか? うーん。聞いたことないですよ?)


 話はそれるが、信じられていないようなので実演。マナ操作による岩の切り出しや、怪力などを見せてみる。


(・・・こわっ、きもっ)


「それが感想???」


(いや、だって、そのサイズの岩を持ち上げるなんて。大人でもできないことを、6,7歳の子供がやっている姿は違和感ありすぎです。正直異様ですよ。うーん。やっぱりそんなスキルきいたことないです。)


 マナの活用については、あまり知られていることではないらしい。


「まあ、そこはいったん置いてくれ。この『しるし』に、セルカが接続して意識が移せるか、試して欲しいのだが。」


(ちょっとやってみますね。1つとってゴーレムの宝石とくっつけてみてください。・・・はい。大丈夫かな。今くっつけた『しるし』を持って、離れたところに行ってみてください。)


 言われた通り、くっつけた『しるし』をもって階段を上り、滝のうえに行ってみる。


「移動したぞ!」


(ふふふ。面白いですねこれ。接続できました。上はそんな風になっていたのですね。視覚と聴覚は問題ないです。『しるし』に触ってもらえれば、触った人と意思の疎通もできますね。)


「そうか。よしよし。良好だな。」


 内心、大量生産する前に、試した方がよかったかとヒヤヒヤしていたが、無事に実験が成功して安心した。まあ、自分では試しているので問題ないと思ってはいたのだが。


(で、それ、何に使うつもりですか?)


「時々状況を知りたいところに、これを固定で設置しておこうと思う。罠の様子や畑などを監視したくてな。今は直接見に行っているが、大変でさ。村にも設置して様子もうかがおうと思う。セルカに監視の協力をしてもらえると、本当に助かるのだが、どうだろうか。」


(あぁ、なるほど。・・・面白そうですね。良いですよ。観察とか割りと好きですし。)


 そもそも、別の狙いがあって考えた監視作業だが、その狙いがなくてもかなり本気で助かる。


「ありがたい。この後、設置してくるので毎日頼むな!」


(はーい。って、毎日ですかぁ。まあ、やってみましょうか。)


「それじゃ、さっそく設置してくる」


(あ、ちょっとまって。設置する前に、1つずつゴーレムと接触させてください。『しるし』を一度直接触れて覚えないと難しいです。)


 言われた通り、1つ1つを宝石に触れさせる。大量生産したことを若干後悔しながら、すべての岩を宝石に接触させた後、設置に向かった。


 設置場所は、罠を設置してある水辺の近くなどを含む集落の周辺、集落の入り口や建物、教会の中、集落から村への道、村の周辺、村の内部などに、なるべく人目につかないように設置してきた。


 調子にのって設置しすぎたが、後悔はしていない。ただ、数が多すぎるので、毎日チェックする場所は、特に重要な場所に絞ることにした。


 村の子供が流される地下の祭壇、村の教会内部、村の入り口、水辺の罠周辺を監視強化場所として、セルカに毎日チェックをお願いした。セルカには、異常な動きや、情報入手などができたら、連絡するようお願いしてある。


 運用が軌道にのれば、かなりの監視網が構築できたことになる。村から人が捨てられるタイミングをどう把握するか悩んでいたが、この監視網であれば、事前に察知できそうだ。


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