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第42話 今後の相談

「うーん。セルカに協力者になってもらうのが一番良さそうだな。」


 今後の集落運営について考えていたが、セルカに協力してもらうのが一番丸く収まりそうだという結論に至った。宗教組織を運営する際の協力者、ここに住む人々への指示を出すキーマンになってもらいたいのだが、こちらの都合に合わせて誘導することも出てくるはずだ。すんなりと協力してもらえるとは、あまり思えない。


(まずは、俺の状況についても説明しながら、説得するか。)


 滝のある部屋に行き、ゴーレムの宝石に触れる。すぐにセルカと意思の疎通ができるようになり、軽く挨拶をした後、話始める。


 最初に、改めて俺がこの世界に転生してから、これまでの経緯を伝えた。


(聖痕があったので、そうだとは思いましたが、やはり招かれ人だったのですね。)


 俺のようなケースは稀にあるそうで、招かれ人と呼ばれている。セルカは、情報としては聞いたことはあるが、会うのは初めてだそうだ。


(やはり他の村も食糧不足ですよね。ここも生活はかなり苦しかったようですが、さすがに子供を地下水に流すようなことはありませんでした。それにしてもあなたは良く生きていますね。びっくりです。普通死にますよ。)


「そうだな。結果的には運も良かった。」


 俺は話題を変えて、女神からの使命についても伝える。


「女神からこの世界は、環境破壊それに伴う食糧不足、種族間での争いが頻発しているうえに、大型獣や謎の魔物も出現しており、動植物が激減し危機的状況と聞かされている。そして、その状況を俺に救って欲しいと伝えられた。その後、女神と話ができなくなったので、確認できていないが、おそらくそれが使命だろう。転生した場所も話した通りだ。あまりにも酷い待遇だと思うのだが。」


(・・・ご愁傷様です。主は相変わらずですね。)


 セルカからは、呆れたような、あきらめたような感情が伝わってくる。


「・・・相変わらずなのか・・・」


 セルカのこれまでの苦労が想像される。お互いを憐れむような沈黙がしばらく続いた。暫くして、気を取り直したようにセルカが話をする。


(主は、おそらく活動するためのエネルギーがなくなり、イデア全体と同様に、休眠されているのだと思います。休眠は数年単位で続くでしょう。前回の休眠期は、私がゴーレムを依り代とする前にでしたが、復活までに5年ほどかかりました。エネルギーは、女神像の前にあった球体を通して送られます。球体は各地にあるのですが、信者はどのくらい残っているのか・・・)


「人口減に比例して、信者も減っている可能性の方が高そうだな。既に俺が転生してから、3年弱経過したが、後2年で復活すると思わない方がよさそうだ。」


(あたなは今後どうされますか? 女神の使命とはいえ、あまりに無茶苦茶な話です。使命を放棄したところで、私には責める気持ちはありませんよ。放棄せずに、なにかやるのであれば、当然お手伝いさせていただきますけど。)


 どう切り出そうか悩んでいた今後の協力について、あっさり申し出てもらえた。内容を伝えたら断られるかもしれないが、お願いしたいことを伝えてみる。


「正直1人では限界だった。助かるよ。」


(いえいえ。頑張りましょうね。)


 俺は、この集落でやりたいことについて伝えた・・・


(この集落から10キロ以上離れた村で、いつ捨てられるかわからない人を集めて、あらたな宗教組織を作るのですか?! 集めた人を生活させながら、緑化も進めていくと・・・。申し訳ないのですが、言うほど簡単ではないですよ。酷い言い方かもしれませんけど、正気とは思えません。)


 ここでの昔の苦労を良く知っているのだろう。厳しい言葉が続く。


(そもそも、この集落は安定した食糧の確保ができません。周辺に自生していたオリーブは確保できましたが、畑では安定して作物が収穫できませんし、周りの森を切り開いて農地を広げても、一時的な効果しかなく長くは持ちませんでした。そもそも、切り開く森もあまりないはずです。)


 俺は、この集落に流れ着いてから1年弱で得た収穫と農法について伝えることで、実現可能性を伝える。

「畑で作物が育たなくなる主な原因は特定できている。既に対策をすることで、トマト、ナス、カボチャ、オリーブ、ソルガムを、1年で同じ畑を使って2~4回収穫している。食糧の安定確保は、目途が付いている。まだ検証期間は1年弱だがな。」


 そう伝えると、暫く沈黙があった後、セルカが話始めた。

(・・・信じられません。でも1年中作物が取れた。・・・そうなのですね。確かに1年ではまだ不安ですけれど、ここでは聞かなかった話です。本当なら正直嬉しいです。以前の住人達は辛そうでしたから。)


 俺からは証拠を見せた訳ではなく、言葉だけの説明なのでどこまで信用してもらえるかと思ったが、セルカは話したこと自体は疑うことなく、つぶやきながら事実として受け入れようとしているように感じた。第一印象は、ホンワカした天然女子という印象だが、理解力がある人にも見える。


(それが事実だとしても、緑化の方はさらに難しいはずです。森を切り開いた後、畑を作り放牧を行った土地は、徐々に乾いていきました。一度乾いてしまうと、草も生えにくい不毛な土地になります。そういう土地が増える一方でした。)


 セルカの話は、想定していた環境破壊の原因について、裏付けをするような話だった。もしそうであれば、緑化も時間はかかるが実現できる可能性がある。


「緑化については、まだ目途が立っているとは言いがたい。ただ、前世でも同じ状況の土地があり、回復させた事例を知っている。不毛な土地になる原因が同じであれば、植物が育つ土地に回復できる。」


(そうなのですか?! 植物が育つ土地にできた、事例があるのですか?? それなら試す価値は十分ありそうですね! そんなことができる可能性があるなら、楽しそうです。私も協力しますね。こんな体ですけど、色々できますよ。)


 セルカに頼みたいことの説明は出来ていないが、乗り気になってくれているようだ。


(そういえば、村から捨てられる人の確保はどうするのですか。)


「そこはまだ詰め切れていない。子供は流された後、大人しくしていれば、滝の前まで流れ着くように水路を整備したが、途中で落ちてしまう可能性は高い。何かしらの対策が必要だろう。大人の人材確保も、まだこれからだな。なんとか善良な大人を、確保できる方法があればよいのだが。」


(わかりました。人を確保した後は、相談相手とかもできますよ。以前も懺悔室で信者の悩みを聞く役割をこなしていましたので。)


「それはありがたいな。ここでも懺悔室や相談できる場所は作ることにしよう。」


 自分の役割の提案までしてくるのか。正直ありがたい。相談相手だけでなく、色々任せられるかもしれない。


(集落を襲ってきた大型獣はどうしますか?)


「そちらもまだ検討できていない。ただ、生きた大型獣はいまだに見ていない。見たことがあるのは、大型獣の死体と思われる白骨化した骨だけだ。村でも、過ごした2年間で大型獣が襲ってきたことはなかった。」


(そう・・・なんですね。この集落の住民が移住する直前には、集落を目指してかなりの数が迫っていたと聞いていました。結局襲ってくる原因も、生態も謎のままです。集落では、被害を出しながらも撃退していましたが、耐えきれず移住を決断しました。ここでの生活が安定したとしても、大型獣がくれば逃げなければならなくなるかもしれませんね。)


「そこも対策は打っていこう。」


(そうですね。まずは、できるところからいきましょう。)


 セルカに俺が期待する役割をしてもらえるかは、まだわからないが、追々相談して行こう。少なくとも協力的なのはありがたい。現状の共有と今後の相談もできたし、セルカの理解力などは想定以上で、俺の中でセルカ株が急上昇している。かなりのありがたい成果なのだが、最大の成果は、寂しさを感じないですむことかもしれない。


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