第35話 狩りの準備
冬が終わり、徐々に暖かくなってきている。
(我ながら、よく頑張った。)
集落にたどり着いてから、復興までの最初の区切りとしていた1年が近づいて来ている。区切りとはいえ、自分で決めた期限。当初設定した目標は達成し、追加の目標も外の緑化以外はほぼ順調だ。
新たに整理した集落の基盤と仕組み作りの準備を可能な限り進め、人材確保を進めていきたい。集落の運営目的や、企業経営の手法を取り入れた宗教運営、安心して暮らせる生活基盤など、時間の許す限り課題解決を図っていこう。
(狩りだな。)
生活基盤の基本、衣食住の1つ、衣服を確保する目途が立っていない。改善策はいくつかあるが、その1つである狩りの準備を進めようと思う。衣服の素材として、毛や皮を確保したいし、できれば動物性タンパク質、肉の確保もねらいたい。
獲物は集落外にある、池のまわりにあった足跡の主。緑化のために植えたソルガムの芽が食い荒らされており、何かしらの草食動物がいるのは間違いない。
(問題は周りの見晴らしが良すぎることか。)
武器を用意して直接狩りをするには、池の周りは隠れる場所もなく不向きだ。そのうえ、いつ獲物が現れるか分からず、かかる時間も想定できない。狩りだけに時間をかけられる状況ではないため、罠を使った狩りを選択する。
(かればラッキーくらいの気持ちでやってみよう。)
材料として用意できる、木材、竹材、ロープ。材料も少ないが工具もほとんどないので、原始的な罠を仕掛ける。ちなみにロープは、以前外の探索を行った際に見つけた、アラビアゴムノキ(正確には特徴が似ている木)の皮を使って作成している。ロープは用途が多いので、時間をみて定期的に作っている。
原始的な罠で、よく知られているものは主に4種類。ロープなどで輪を作り、獲物の手足をくくるスネアトラップ、獲物を刺殺するスピアトラップ、岩などで押しつぶすデッドフォール、後は、ピットフォールいわゆる落とし穴である。
池の周りに仕掛けるには、どれも罠の仕掛けが見えやすくなり適さないが、その中で比較的ごまかしやすい、ピットフォールを選択する。再利用性、自分のスキル活用、必要な素材が少ないなどの点も考慮した。
(穴掘りは、もはや得意分野だ。)
足跡は複数の種類があるが、足跡の特徴や付き方などを見ると、いずれも大型ではなさそうだ。ソルガムの芽を食べていることから、草食または雑食で、馬か牛のような動物を想定する。
ジャンプ力が高くない動物をイメージし、ピットフォールの深さは1.5m程度。いくつか穴を掘っていく。
通常、ピットフォールの中に、獲物が落ちた時に刺殺する、槍のような仕組みを用意するが、今回は家畜にする可能性もあるため、生け捕りをねらう。この罠を作るときに一番時間がかかる穴掘りは、既に熟練の域に達している。水路からの脱出や、階段作り、村からの移動手段作りなど、毎日やっている作業の延長だ。
場所を選び、マナ操作で固い地面をブロックのようにくりぬき、掘っていく。場所は池から少し離れた場所、穴の大きさは2m四方程度で掘る。
最初に浅く四角の穴を掘り、徐々に掘り下げていく。掘っている地面は固いが、階段を作った時に削った岩よりはマシだし、できたブロックも軽い。効率を重視し、地面をブロックにして、適当に外に放り投げながら穴を深くしていった。
サクサクと作業が進むし、ブロックのくりぬき方に、パズル的な要素あり、最近、穴掘りが少し楽しくなっている。時間を忘れ、穴を掘り続けた。
穴が掘り終わったら、穴をソルガムの葉などで隠し、砂をかけて地面に偽装する。最初は中々上手く偽装できなかった。穴が大きくて砂をかけると、重さに耐えられず落ちてしまう。試行錯誤を重ね、穴の中に柱を作るなど工夫をしながら、何度目かでコツをつかんだ。
穴の周りに溝を掘って、葉っぱの端を溝に埋める形で固定していく。うまく偽装できたように思う。風や振動などで、偽装がばれないかなど、強度が気になるがとりあえず試して見る。
穴に引き込むための餌は、ソルガムの実と芽にした。罠の上に実を撒き、穴は複数作り、穴の間にソルガムの種を植えて、出てくる芽を餌の代わりとする。獲物の確保が目的だが、失敗しても池の周りにソルガムが育つので無駄にはならないだろう。
後は待つだけだ。これまでの不運を考えれば、難しいかもしれないが期待したい。ちなみにピットフォールは、9か所ほど作成した。
(さてと、一応作っておくか、自衛力向上にもなるしな。)
当面使う予定はないが、直接狩りを行う武器も準備しておく。罠にかかった獲物の止めを刺すのにも、必要になるかもしれない。
鉄は、まだ精製できておらず、貴重なので、他の素材を使うことにした。この素材も希少ではあるが使う予定はない。放置していた、大型獣の牙や骨を使う。
耐久性に不安があるが、某ゲームでも使われる素材でもあるし、非常に重く、鉄並みに硬いことが分かっているので十分期待できる。
(個性的な武器になりそうだな。)
あまり加工をせず、手間を極力かけずに素材の元の形を活かす武器を準備していく。思いつくままに、牙の部分を使った槍、大腿骨の部分を使ったハンマー、骨を削り出した剣を作成した。
槍は、牙をそのまま使い、木で持ち手を作る。アラビアゴムノキの樹液で作った接着剤と、樹皮で作ったロープで固定しただけのシンプルなものになった。ちなみに接着剤といっても、アラビア糊やスティック糊に使われる原料なので、強度はあまり期待できない。ロープをほどけないようにするくらいの効果だろう。
ハンマーにいたっては、ほぼそのままで、持つ部分を少し加工した程度の簡単な作りとした。非常に重いはずなのだが、問題なく使えそうだ。
槍とハンマーは、作るのに手間がかからないし、壊れることを想定して、それぞれ複数つくっておいた。ハンマーは正直武器に見えない。大腿骨そのものだ・・・
剣は加工に手間がかかったので1本のみとした。削り出した後の研磨が大変だった。
それぞれ試用してみたが、かなりの強度があり、木や地面をたたいてもほとんど傷がつかない。さすがに岩をたたくとあやしいが、それでも数十回たたいても問題ない強度があった。思った以上に、耐久性もあり使えそうだ。
(竹があるから、和弓は作っておきたい。)
竹材を使った弓も準備した。竹材はまだ貴重で、十分に乾かしたものも少ないため、こちらも1つだけ作ってみた。太い竹を4つに割き、それぞれ節の部分が平らになるように削り、4枚を重ねて接着剤で張り合わせながら形を整えて、弓の形にした。
引くのにかなりの力が必要で、大人でも苦労しそうだが、問題なく使えそうだ。矢は簡易なものを30本程度作り、矢じりに骨をとがらせたものをつけた。威力は、楽に丸太に突き刺さるので十分だが、確実に当てるには練習が必要だろう。毎日少しずつ武器の練習をしていくことにする。




