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第31話 集落復興状況

「もう半年か。早いな。」


 年間30名分の食糧確保と農法の確立を目的にした集落復興方針、村で捨てられる子供の移動手段の確保も兼ねたスキル強化方針をもとに、日々の作業に邁進している。追われるような気持ちで作業をしていたからか、あっという間に6か月が経過した。


(ざっくりとした方針のわりに、頑張れた気がする。)


 復興は概ね順調なのだが、孤独がかなり身に染みている。前世の人生経験もあるので、何とか身体共に健康な状態を保てていると思う。順調に育っている作物なども心の支えだ。それでも、早く住民を増やしたい。


 人間は常々一人でも生きていると思っていたが、体は問題なくても、心が持たない。ここにはネットでチャットできるような環境もない。ある日、ふと相棒のナイフに名前を付けて、話かけたときに、そのことに気が付いた。


 だが、それも含めて正常なのだろう。何も感じられなくなれば、取り返しがつかないのかもしれない。もう少し踏ん張って、ここを復興させよう。兎に角、今は頑張るしかない。


(随分と緑が増えたな。)


 集落内の畑の状況はおおむね好調だ。当初は村から持ち出した種子の状態が悪かったのか、発芽率が低く苦戦した。それでも、村から持ち出したすべての作物が、量に差こそあれ発芽し、既に2~4回以上収穫できている。


 種まきから定植、収穫までの期間は、一般的にトマト、カボチャが4か月、ソルガム、ナスが3か月だが、育成速度が早く、収穫までの期間も半分で済んだ。成長が早いのは嬉しいが受粉が面倒で、その時期の作業が地味に苦しい。あまり1人で続けたくない作業の筆頭だ。


(やっぱり、見当たらないな。)


 受粉といえば蜂をイメージする。砂漠や半砂漠での受粉は、ミツバチの一種であるハナバチが行うことがあるのだが、この辺ではどうしても見当たらない。


 ハナバチは乾燥している壁や地面に穴を掘って巣を作り繁殖する。環境に適用するため種類も非常に多く、ここの周辺にも生息する可能性はあるはずなのだが、まだお目にかかれていない。うまく確保して繁殖できれば、受粉が相当楽になりそうだ。


・・・


(気温が下がってきたな。)


 4か月目を過ぎたくらいから、秋の気配が濃くなってきた。次の3か月は、冬に備えて種まきは控えたほうがよさそうだ。


 これまでの農作業で、連作障害の検証もできている。トマトとナスを連作した畑では、想定通りだが障害が出始めた。輪作を行っている畑より、作物の成長速度が遅く、枯れるケースも出たので、これ以上の畑の状態の悪化を避けるためにも、検証を終了した。


 障害が出た畑は、最後にソルガムを植えてすき込みを行い、しばらく休耕としている。作物にもよるが、半年たたずに連作障害が起こり、畑が使えなくなった。その一方で、今のところ、輪作を行っている畑では、作物の成長に影響は出ていない。


 やはりこの世界では、植物の成長が早く、その分栄養の吸収も早いので、連作障害が起こりやすい。その影響で土地が瘦せていき、砂漠化の要因になっているのだろう。


(それにしても、作物成長が早い。)


 農作物は、これまでの6か月で2~4回収穫ができた。2回収穫できれば目標達成の見込みだったので、年間30人分の食糧を確保する見込みとしては十分だ。これ以上、畑の作付面積を増やさなくても、安定して食糧の確保ができるだろう。


 種の量も十分確保でき余裕もある。保存がきくソルガムとカボチャは、天日干しにして既に蓄えている。種が足りていなかったので、そこまで多く蓄えられてはいないが、大人1人分であれば充分な量になっている。今すぐ1人増えても対応できる状況だ。


 この集落に残っていや唯一の作物、ローズマリーも定期的に収穫し、乾かしてから保管している。過日、探索の時に見つけた人参のような植物も、試しに植えているが、こちらは順調。食べてみたが毒性はなさそうだったので、新たな農作物としても増やしていきたい。


(人材を確保できる見込みは、立ちそうだな。)


 食糧と農法については、目標が達成できたと考えてよいだろう。収穫した作物は、いずれもおいしく満足がいくできだった。


 よく働いているからか、はたまた、これまでの不足していた栄養素を、体が取り戻そうとしているからなのか、お腹がかなり減る。食事が十分にとれて嬉しいのだが、成長痛がひどいのが最近の地味な悩みだ。


 食糧が足りているのは嬉しいのだが、段々贅沢になり、塩がどうしても欲しくなってきている。塩と言えば海だが、少なくとも見える範囲ではなさそうだ。


(集落内は順調だが、外が問題だな。)


 集落外の緑化も進めているが、こちらはうまく行っていない。緑化の準備を行うために、集落を出て一番近い池の周りの地面を掘り起こし、水を行きわたらせるための流れを作ってみた。


 種が足らず、竹の移植を中心に緑化を進めたが、思うように育成が進まなかった。並行で進めた集落内への竹の移植は、順調に進んでいたので、日差しが強すぎたのかもしれない。


 竹は、地下茎が本体のようなもので、地下茎から竹を伸ばし、成長しきった竹が、光合成で得る養分を地下茎に送ることで成長していく。移植したばかりの時は地下茎が貧弱なため、タケノコや竹材などの収穫は一切行わず、地下茎の育成に努める必要がある。


 地下茎が順調に育てば、安定して広がっていくのではないかと思う。前世の竹で地下茎は年間8m程伸びると聞いたので、こちらではその倍の16mになるかもしれない。早く竹材が使えるようになり、コップなどの日用品を作りたいところだ。


 竹の外の移植は一旦あきらめ、順調に成長している集落内のみとした。集落内の竹は、壁際に移植している。地面が固い場所だが、水を引き込んで成長しやすいように工夫をした。


(壁沿いに竹林があるのは、きっと美しい光景になるだろう。)


 竹林がある集落のイメージをし、地下茎を伸ばしたい方向を決め、地面を掘り起こして柔らかくしている。このまま、壁伝いに地下茎を伸ばし、最終的に集落外の緑化のためにも育成していきたい。


(それにしても、外は厳しいな)


 集落外の緑化は中々一筋縄ではいかない。竹の移植が失敗に終わったため、収穫が進み、種が確保できるようになってからは、方針変更しソルガムとローズマリーを植えるようにした。


 ソルガムは芽が生えて、うまく行きそうだったのだが、芽が何かに食べられてしまった。池の周りには動物の足跡があったので、水を飲むついでに、芽を食べているのかもしれない。獣害の対策をとるか、食べられても問題ない量を植えるか、やり方を変える必要がある。


 ローズマリーは食べにくいのか、ある程度残って成長しているが、冬を耐え抜けるかが課題だ。今は余裕がないが、芽を食べる動物をターゲットに、狩猟を考えても良いかもしれない。


 外に自生していたオリーブは、挿し木で増やしてみている。挿し木の方法はいくつかあるが、準備が多く冬場にしか行えない休眠挿しではなく、成功率が低いが圧倒的に楽な方法を採用した。


 成長し終わった新芽を採取し、地面に挿すだけの、緑枝挿しという方法だ。50本ほどやってみたが、残ったのは3本だけ。こちらも冬をなんとかしのいで欲しい。


 自生していた木に実ったオリーブは、紫色になった時に収穫して絞り、油として保存している。保管する入れ物がなかったので、岩をくりぬいて簡易な入れ物とした。岩の食器は重すぎて、俺くらいしか使えなさそうだ。


 植物の成長は早いが、オリーブの実は残念ながら、1年に何度もできることはないようだ。その分、実は大き目に育つのだが、収穫量が数倍ということはない。あわよくば、複数回収穫してオリーブ油を量産したかったのだが、断念している。


(スキル強化は、順調だ。)


 スキル強化を兼ねて、村からの水路を使った移動手段の準備も進めている。その手始めに滝の横に階段を作っている。


 畑仕事などで、時間があまりさけない期間も多かったのだが、それでも、掘り始めて最初の3か月で2m分ほどの階段ができた。マナ操作のお陰とはいえ、素手で岩盤を掘り進めるのは、人間離れしていて面白い。


 階段は、1mにつき5段くらいの割合で掘り進んでいる。最初の1か月は、ほとんど進まず心が折れかけたが、諦めずに毎日少しずつ掘り続けたところ、2か月目、3か月目と、明らかに掘り進む速度が上がっていった。スキルが強化される実感がある。


 4か月目からは、集落復興の作業がほぼ終わり、作業時間もとれるようになった。一気に進み、既に合計で12m以上掘り進めた。想定では14mほど斜め45度に掘り進めば、高さ10mの滝に達する。もう一息だろう。

 

(マナ操作といえば。)


 コツがつかめてきている。岩盤をくりぬくときは、マナを岩盤の中に広げ、立方体の面にマナを浸透させるイメージを持つことで、その立方体の形で岩をくりぬけるようになった。


 ちなみに、岩を破壊するときは、破壊する範囲全体にマナを浸透させ、分子が大きく揺れるイメージを瞬時に伝えると粉々にできる。徐々にマナを広げられる範囲が大きくなっていて、それに比例して、階段づくりの効率が上がっている。


 このままスキル強化をしつつ、作業に習熟していけば、穴掘りのスペシャリストになれそうだ。まあ、工具があれば代用可能なスキルだが。


 掘ったときに出る岩も、結構な量になっている。スキル強化により、30立方センチの岩が掘り出せるようになってから、建材として使うことも視野に、なるべく同じサイズで岩をくりぬくようにしている。


(普段、気が付かないが、身体強化も地味に凄い。)


 30立方センチは、27リットルほどの水が入る容積だから、水であれば重さ27kg。水に対する岩の比重は水の2~3倍なので、立方体にくりぬいた1つの岩は、54kg~81kgの重さのはずだ。


 その岩の塊を、あまり苦にならない程度で運べている。自分の体重より重い岩を、軽々と運ぶ様子は、はたから見る人がいれば、かなり異様な光景だっただろう。くりぬいた岩は、教会の横に倉庫を新設する材料として、積み上げ始めたところだ。


 復興開始から半年での主な成果としては、十分だと思う。食糧の確保と農法の確立は、既にほぼ達成しているので、残りの半年、追加探索や村からの移動経路確保などに注力し

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