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第30話 スキル強化の方針

(個人の力も強化しないとな。)


 人材確保の対価という力を手に入れる。そのための方針は大まかだが決まった。厳しいが、できるのではないかと思える程度にはなった。作業は1年間かけて進めて行く計画なので、それらと並行して俺のスキル強化についても方針を整理しておきたい。


 現時点の俺のスキルは、工具の代わりや馬1匹分くらいの価値しかない地味なものだが、せっかく身に着けたので強化していきたい。そして、いつかはやはり無双を夢見たい。


(まあ、今のスキルでは、強化しても難しそうだが。)


 これまでの実体験から、マナ感知、マナ吸収、マナ操作のスキルは、使うほど向上していくようだ。これから行う集落復興など必要な作業を、スキルを使いながら進めることで、作業の効率化とスキル強化を図る。単純だがこれをスキル強化の基本方針と考える。


(単に貧乏性なだけかもしれないが。)


 集落復興に必要な作業は、畑の掘り起こしなどの農作業、集落内外の整備が基本となる。どれも基本的には前準備で、作付けなどの本作業が始まると、スキルを使う機会が減る。


 集落復興に直接関係なくても、今後や将来につながるようなもので、時間がかかり、コツコツ進めるような作業を、別途検討して用意しておいた方がよさそうだ。


(今後や将来につながると考えると、何にをすべきか。)


 食糧確保の取り組みが、すべて順調に進めば、次は人材確保の目算を立てる必要がある。順調に行っても、1年後の話になるのだが、確保する人材候補はやはり村からになる。この集落の周辺探索を進めたときに、別の人里が見つかる可能性はあるが、捨てられる人を救うことを考えれば、村からの人材確保は揺るがない。


 そうなのだが、村からこの集落まではかなりの距離がある。村で捨てられた大人はともかく、子供、それも2歳以下、乳児に近い子供を移動する手段が、必要になるはずだ。


(移動手段の確保か・・・)


 移動が困難であれば、食糧が確保できていたとしても、結局命を救えない可能性も高くなる。1年後に、人材確保をすぐに始めるのであれば、その時点で効率的な移動手段も確立しておく必要ある。なにか良い手がないだろうか。


 たとえば、村と交渉して子供を譲り受け、この集落まで運んでもらうという手だが、実現性は乏しい。少なくとも、その時点で3歳児の俺が交渉のテーブルに立てる気がしない。


 万が一、交渉が上手く行ったとしても、この集落に食糧があるということを知られれば、ここが襲われないという保証がない。自衛力がない集落のままで、村人にこの場所を特定されるのは、かなりのリスクになるだろう。


 村人には、良い人が多いが、全員がそうであるはずがない。しかも、自分が飢えているときに、自制し続けられる人がいれば、聖人の部類だろう。少なくとも初めのうちは、村が捨てる人材を、村には気づかれないよう確保する形がベターだろう。


 そうなると、村人には頼れないので、俺自身か、その他の何かを利用する手段を考えるしかない。たとえば、捨てられる子供は水路に流される。


 その水路自体をを移動手段として使って、そのままこの集落まで運ぶ仕組みはどうだろうか・・・


(意外と行けるかもしれない。)


 実際に、この集落に到達できた実績もあるので、中々よさそうだ。流れに任せるだけで、村からここまで、物が運べる仕組みが作れれば理想的だ。村から集落の経路を思い出すと容易ではないが、一考の価値はある。


 ただ、その仕組みを作るには、まず水路に戻る経路が必要になる。それが最大の難関だろう。水路は滝の上にあるので、垂直の距離で10m以上のぼれる経路を確立しなければならない。


 難問だが、それが実現できれば、閉じ込められた場所にも行けるようになる。魚の確保や養殖の可能性も出てくる。


 その経路が出来ると、村の人も集落の裏からも侵入できるようになるので、セキュリティ面は若干心配だが、村の地下の祭壇から奥に行く人はいない。まず大丈夫なはずだ。


 水路の戻れたとしても、水路は枝分かれしているし、途中で崩落した場所もある。今のままでは、万に一つも村から集落にものが到達することはないので、水路に細工して、一本道にする必要がある。考えただけでも、年単位の大工事になりそうだ。


(まあ、初めてみるのも大事だ。)


 難しそうだし、1年後までに片手間でできるかと問われたら、正直返答に困る。到底達成できそうもない内容だが、スキルの向上を目的とした、ついでの作業くらいの位置づけで、できる範囲で進めても良いだろう。


 まずは、最初の難問である、滝の上の水路に戻る経路を作ることを目指そう。今のスキルではかなりの時間がかかるが、使っていくことで強化され、効率が上がることに期待する。スキルの強化具合で、達成できる期間が大きくかわるはずだ。


 3月ごとに復興計画などの進捗チェックに加え、スキル向上の状況のチェックも行いながら、計画を修正していくこととする。


(さて、実行可能な方法があるかだ。)


 最初の難題は、今後の試金石になる可能性がある。方針だけでなく、水路に戻るための経路を作る具体策が必要だろう。水路に戻るためには、少なくとも滝の上まで登らなければならない。滝の高さは10m強くらいだろうか。


 縄梯子で上ることも考えられるが、縄の強度や長期間使った場合の劣化を考えると怖い。竹材で梯子を作る場合も同様で、10m以上のはしごをつくれるような材料確保の見込みが立たないし、やはり梯子を固定するロープの劣化もやはり怖い。


 これから作る経路は、できれば長期間使用可能という条件は前提としたい。そもそもはしごを作るときに、スキルの出番もあまりなさそうなので、スキル強化の作業としても向かない。


 長期間使用可能と考えると、石の階段が思い浮かぶ。階段であれば、梯子より、上り下りはもちろん、子供を抱えて移動するのも容易になる。たとえば、滝の周りは岩や岩盤になっているので、滝の横の岩盤を削って階段を作れれば、理想的な経路になる可能性がある。


 梯子と比べると良い案に思えるが、言うまでもなく、当然難易度が相当高い。


(石の階段の難しさか・・・)


 どの程度難しいか。岩盤をくり抜いて石の階段を作るとすると、階段の部分とその上の、人が通るための空間にある石を掘り出すことになるが、その掘り出す石の量が相当な量になりそうだ。


 人が通れる高さとして、2m程度の空間が上に空いている階段を掘る想定をしてみる。滝までの高さ10m分の階段を、傾斜45度で作るとすれば、階段の底辺10mとなる。


 底辺および高さが10mの正方形の対角線にあたる部分が階段になるので、長さは三平方の定理で15m弱になる。15m分、人が通れる高さ2m、幅1mを確保する階段を作るとなると、単純計算で30立方メートルもの岩を削り出す必要がある。


(途方もないな・・・)


 かなり莫大な量だが、1日1立方メートル削り出せるようになれば、1か月で到達できるとも考えられる。進捗は、階段を作る時間にどのくらいさけるかにもよる。


 現時点では、正直実現性が薄い妄想レベルの案なのだが、スキル向上の作業としても適切で、実現できたときのインパクトも十分なので、作業時間を割くことにする。


 順調にスキルが向上できれば、実現性も上がり期間短縮も望めるので、他により良い案が浮かばない限り、進めていく方針とする。進めてみて、ダメそうであれば縄梯子を作成する案など、他の案を再検討しよう。


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