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第28話 集落の復興方針

(さてと、これからどうすべきか。)


 生き残ることに必死で、日々忙殺されていた。やっとのことで、無人の集落に行きついた。普通なら絶望的だが、水路で生き残ったことを考えれば、ここで生き残るのはたやすいだろう。


 忘れがちだが、女神から丸投げされた俺の使命はこの世界を救うこと。


(・・・呆れるほど現実味がないな。)


 女神の寿命と、人間の寿命の差すら、あの駄女神は分かっていないのかもしれない。俺の寿命な常識的な範囲であれば、使命の達成は完全に無理なレベルだ。一代でやるような話ではない。


(俺が生きている間に、女神が目覚めたら、問い詰めることにしよう。)


 寿命が有限であるなら、永続する組織や仕組みを作り上げるくらいが関の山。それすらも、今の状況では全く実現性がない。周りに誰もいないのに、どうしろというのか。当面、使命は頭の片隅に置いておく程度でも十分だろう。


(まずは、力を付けなければ話しにならないな。)


 ここには、恐らく俺1人しかいない。この集落を復興しながら、生き延びるのは既定路線とするしかない。1人のしかも子供の体で、できることはたかが知れている。マナを扱える能力が身に着いたが、今の能力が急成長しても、高々岩を砕ける重機が1台手に入る程度。


 それでも能力を伸ばせば、それだけ効率的になることを思えば、能力の開発にも重点を置き、力を付けて行くべきだろう。小回りの利く重機になれるなら、無双するのは難しいが、役には立つ。


 個人的な力では、絶対的に不十分だ。復興を進めるにしても、いずれ協力者は必須になる。色々任せられる人材が確保できなければ、復興は進まないし、さらにその先の発展などは見込むべくもない。


(人材を確保するための力も必要か。)


 人材の確保には、当然何かしらの対価が必要になる。前世であれば、お金が有効な対価だった。


 この世界にお金があるかはわからないが、村では圧倒的に物が不足しており、そのようなの経済状況では、お金の有効性は低いだろう。対価は、相手にとって、必要で不可欠なものが望ましい。


 あの村が掟で人口抑制を行っているのは、まず間違いなく食糧が十分に確保できないため。植物の育成速度を考えれば、食糧を増産することは難しくないはずだが、それができない理由の1つは砂漠化だろう。


 村や集落の外を調べた時に、地面に風蝕や水蝕など人為的な砂漠化の特徴が表れていた。あくまで仮説だが、植物の成長速度が早く、植物が吸い上げる栄養の量が、地面が自然回復する力を大幅に超えてしまったのではないかと思う。

 

 それを踏まえると、今の状況で求められるのは、直接的な対価は食糧、本質的な対価は砂漠化を進行させない農法になる。


 農法は、一般の住民には直接響かないかもしれないが、村長などの責任ある立場の人物には、使い方次第で効果的な対価になるはずだ。そして、まだ手探りだが、対価になり得る農法の確立と食糧の確保は、周辺の砂漠化の特徴を見る限り、前世の知識が役立つ可能性が高い。


 相手の状況によっては、もっと効果が高い、直接的な対価もある。それは、村の掟に従い流される子供たちや、捨てられる大人たちの命そのもの。命を盾にするのは、若干気が引けるのだが、効果的なのは疑いようがない。


 正直なところ、命を強制的に捨てさせる村の掟は、心情的にも許容できない。子供たちは一瞬苦しむだけかもしれないが、残された親の心情は察するにあまりある。年を取って捨てられる大人たちは、自責の念もあり、ある程度あきらめもつくのかもしれないが、子供達にはなんの罪もない。


(俺が、村の掟を許容できないなら、許容できる方法を探すしかない。)


 村の掟については、俺が許容できないと騒いだところで、何も変わらない。それどころか、解決策のない正論を振りかざすことになれば、言っていることが正しくても嫌われ、現実を見ない正論と言われ、恨まれる可能性もある。だが、このままでは、掟がなくなることは当然ない。


 対価を用意し、それを元手に継続可能な新たな仕組みを作り、許容できない現状を変えていくしかない。


 農法と食糧を手に入れ、まずは捨てられる人の命を対価に、こちらの人材になってもらう。命を対価にするのは抵抗があるが、少しでも良い生活を提供することで贖いとしよう。


 人材という面で考えると、子供が人材となるにはかなりの時間がかかるので、効率的ではない。大人の人材を優先した方が使命に近づくのだが、遠回りをしてでも見捨てるという選択肢はとりたくない。


(とりたくないが・・・)


 今の俺には、何の力も対価も持っていない。明日、次の子供が流されたとしても、現時点では見捨てる以外、選択肢すらない。俺が、対価である農法と食糧を手に入れるのが遅ければ、それだけ見捨てる人は多くなる。


 そのための見当はつくが、どれだけ期間がかかるかは読めない。それでも、すぐにでも対価獲得に向けた行動を始めるべきだろう。


(出来る限り速く現実的に、力を付けて行く必要がある。少なくとも復興方針が必要だろう。)


 1年後に、村から捨てられる大人や子供達を救う具体的なイメージを描き、3か月ごとに目標を立て、修正を加えながら進めていくことを基本方針とする。


 捕らぬ狸の皮算用ではあるが、さらに先のことも考えておく必要がある。1年後に達成できたとして、その頃、俺は3歳になる。


 3歳児の子供の指示に従う人間が、特に大人が、そんなに多いとは思えない。俺の指示に従わせる手段を、この一年で併せて考える必要があるだろう。契約魔法が存在すれば楽だが、恐らくそんなものは存在しない。


 本当なら、大型獣が襲ってくるリスクも考えて、集落の防衛力や武力強化も考えるべきだが、最優先事項は、現在進行形で人の死に直結している掟の方だろう。


(方針は、こんなものか。)


 1年間は経済面最優先と方針は決めたので、もう少し具体的な実施計画を立て、達成するイメージを固める。


 まずは1年後のイメージ。


 流される子供の数は、以前の牧師の発言から、1年間で20名程度と想定する。子供2名を1人の大人が面倒みるとすると、合計30名。30名分の食料を安定して増産することを目指す。


(30名分の食糧確保が最初の目標だな。)


 この世界では、植物の成長速度が2倍以上早いことを考えれば、十分目指せると思えるが、おそらく比例して土地が痩せる。そのことへの配慮も必要だろう。


 最初の3か月で実施策の目途を立て、次の3か月で検証、残りの6か月で食糧を確保する農法が安定するか検証を進める本命計画と、今後も周辺の探索は続けるので、その探索で得られた成果を活用する別計画も並列して行う。 


 できれば使命の足掛かりとして、緑化を進める策も進めたい。緑化については、本来最優先事項なのかもしれないが、人の命と人材確保を最優先。


 本命計画は、村から持ってきた種を、集落の畑で育てる農業。並行して、狩りの可能性も検討する。水路に戻れるルートがあれば、閉じ込められた場所にもどって、魚の確保・養殖もねらいたい。


 とりあえず3か月やってみて、必要により軌道修正を図っていく。


(欲張り過ぎかな・・・)


 さらに欲張ると、できればなんとか塩を確保しておきたい。後は、優先順位を下げてはいるが緑化については、暇を見つけて試してみたいことがある。ここ一帯の砂漠化の原因は、周辺地面の特徴から、風蝕や水蝕が原因と想定している。


 その場合、最初の対策は地面の砂や土を固定化すること。普通は、繁殖力が高い柳や植物を一定間隔で植えたり、土地に細工をしたりするのだが、試しに持参した竹を使ってみたい。


 水路に閉じ込められたときに、竹の移植が思った以上に良好だったことを踏まえれば、水さえ確保できれば竹による地面の固定化は十分可能性があるように思える。竹はもともと二酸化炭素を吸収するうえ、成長が非常に早い。


 竹材は色々な用途に使えるし、竹製品の耐久性も高いうえ、竹の葉は少し工夫がいるのだが肥料にできる。竹は芽が出てから3年で成木となるが、ここでは2倍、マナを使って試した育成速度強化をすれば1年で成長するかもしれない。


(こっちは努力目標で、進めていこう。)


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