第27話 集落周辺の探索
「な、なんだ。あれは!」
集落は壁に囲まれており、中から壁の外側を見渡すことはできなかった。集落の出入口に向かい外に出ると、周りには遮るものがなくなった。
集落の外には、村の時に散々見慣れた砂漠や荒野。少し離れているが、ちょっと先には池が見えた。それはいい。それらは想定内のものだ。池は少し気になる程度。
しかし、想定内のものは、この際どうでもいい。外に出た瞬間に異様なものが目に入った。集落から離れたところどころに、明らかに見慣れない白い骨のようなものが見える。
荒野なので骨くらいあっても不思議ではないと思ったが、ここから白い骨までの距離を考えると、明らかに大きさがおかしい。
(恐竜の骨?)
好奇心が抑えきれず、走って近づく。この集落でも周辺は砂漠化が進んでいる。それも、集落を捨てた要因だとは思うが、おそらく一番の要因はこの骨だろう。
近づくにつれ、圧倒的な存在感を示してくる。しかも1つではなく、見える範囲だけで6つ。砂に埋もれているものも多いが、どれも一部は外に出ており、その存在を強く主張している。
(こんなのが来たら、あの壁じゃ守れないな。)
前世のゾウよりも、2周りは大きい。骨の形が明らかに違うが、イメージは、博物館で見たことのある恐竜の骨が一番近い。完全に白骨化しているが、化石などではない。
この世界には、こんな大型獣が、生きて存在しているのだろうか。大きな牙や歯の形状、骨の形状から、複数の種類の大型獣が存在しているようだ。
これらが生きていて、襲ってくるような土地であれば安心して住むことは難しいだろう。ただ、周辺には大型獣の足跡らしきものは見当たらない。少なくとも、足跡が完全に消える程度の時間は経過しているのだろう。
完全に安心することはできないが、すぐ襲撃を受ける可能性は低いように思える。集落を出ただけで、こんなものが見つかるのであれば、ここに住むことを決める前に、もう少し探索の範囲を広げて調べる必要があるだろう。
大型獣が現存するなどという話は、村では聞いたことがなかったのだが、どうなっているのだろうか。
「硬すぎるだろ。」
とりあえず、どうしても気になる大型獣の骨について、近寄って調べてみる。骨は非常に硬く、ナイフで傷をつけるのにも苦労するほどの硬度がある。巨体を支える骨なら、この硬度が必要なのかもしれない。
試しに、マナ操作で岩を削った要領で、骨をこぶし大で削り出してみた。ずっしり重い。比重は、鉄より重いかもしれない。
前世で恐竜は、意外と軽かったという説もあるが、これだけの強度の骨が必要となると、大型獣は大きさから想定される通りの重さだったのではないかと思う。
骨は、集落に近い場所に集中しており、当時の住民に倒されたと思われる。これだけの強度の骨を持つ大型獣を、集落に住んでいた人たちは、どうやって倒したのだろうか、いつか知りたいものだ。
(うーん。見当たらないな。)
追加の骨が発見できないか、一番高い骨によじ登って周りを観察して見たが、6体以上は見当たらなかった。気にはなるが、これ以上、大型獣の骨から得られる情報はあまりないため、他の探索を始める。
周辺を見る限り、ほとんどが砂漠と荒野のようだ。前世の砂漠と同様に、広大な砂地が広がる一方で、水源周辺では植物が自生している。豊富な地下水が近くにあるせいか、数か所池が見える。
(見た目は前世の砂漠と同じか。)
砂漠は気候変動の影響でもできるが、人間などによる環境破壊の影響でできることもある。サハラ砂漠は、気候変動でできたと言われており、砂漠になる前は、海であったり、大森林だったりした時代もあった。
一方で、人間による環境破壊の影響でできる砂漠も多い。インド、中国、ソマリア、モロッコなどは、人的影響で進んだ風蝕や水蝕による砂漠化と言われている。
風蝕や水蝕は、畑や裸地で起こりやすく、過度な森林伐採や放牧、農業が原因となる。村やこの集落の周辺を見る限り、風蝕や水蝕が進んだ後にできた砂漠である特徴が色濃く出ている。
(植物の成長スピードが、土地を急速に痩せさせているのかもしれない。)
池の探索も行った。池はいくつか見えるので、集落に近いものを3つ調べてみた。いずれの池にも、残念ながら魚は生息していなかったが、周りには最近ついたと思われる動物の足跡が複数あった。
足跡の大きさは常識的なもので、大型獣のものと思われるものはなかった。池は動物の水飲み場として使われているのかもしれない。今は周りに動物が見られないが、うまくすれば確保もできるかもしれない。
(足跡の数は多いので、狩りもできそうだ。)
水源のそばに自生している植物も調べてみた。まず気になった植物は、1,2本しか見えないが、ヤシのような植物。砂漠で有名なナツメヤシのような植物なのかもしれない。
ナツメヤシはデーツと呼ばれる食用の実をつけるが、今は季節が悪いのか実っていない。同様のものであれば、貴重な甘味としても期待できる。
荒野には木もそれなりに生えている。幹は太くないが、大きさは6m以上のものも自生している。小さな丸目の葉っぱと棘があり、アラビアゴムノキと特徴が類似している。
(これは、使えるかもしれないな。)
特性も似たものであれば、樹液は食用や糊、皮はロープなど多様な用途が期待できる。ナイフで木の幹に傷をつけて、樹液を採取してみたが、粘着性があり特性は合致する。樹液を布にしみこませて、固まることも確認できた。ちなみに、アラビアゴムノキは、一般のゴムノキと違い、ゴムは作れない種類になる。
他に有用そうな植物としては、オリーブぽいものも自生していたし、根の大きい人参のような植物もあった。
(食べられると良いが。)
人参のようなものは、特に気になったが、自然の植物は毒を持つものがほとんどなので、パッチテストを行った。根の部分をナイフで切り、切った部分を左手の手首内側に着けアレルギー反応をみる。
赤くなったり、かぶれたりするような兆候もなく、テストの結果は良好だったので、いくつか持ち帰る。食べられるかどうかは不明だが、試してみることとする。
(人参っぽい作物か、調味料にでも使えれば嬉しいが。)
その後も、他の植物を調べてみたが、いくつか気になるものはあるものの、すぐに使えそうなものは見当たらなかった。集落の周辺を探索した結果、砂漠化は進んでいるものの、水や池があり、池周辺に動物もいる。危険な動物がいるかは気がかりだが、集落は十分に居住可能だろう。
幸か不幸か周辺には、他の人間の気配は全くない。遠くに、追い出された村がある山が見える程度だった。今後も探索は続けるが、この集落は隔離されている土地にあると考えてよさそうだ。大型獣の懸念はあるが、当面の定住場所としては問題ないと考える。
(しばらくはここを拠点として、開発を進めよう)




