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第26話 集落探索

「あー。良く寝た。」


 水路でもそうだったが、ここでも快眠できた。水路と違い、即席の寝床になってしまったが、問題なかった。この寝つきの良さは、1つのスキルと思っても良いくらいだ。


 水路で規則正しい生活を送っていたからか、ここでも自然に目を覚ますことができた。今朝も快眠から無事に目覚めることができた。

 

 女神には、無事に生きていることに感謝すべきか、酷い目にばかりあうので恨むべきか、微妙な状況だ。今日は、爆睡したのに何にも襲われることなく、無事に目覚められたことに感謝しよう。生きているだけで丸儲けだ。


(結局、この教会は無人かな。)


 滝から落ちた先は、祭壇部屋であり、そこは大きな教会の一部だった。時間をかけて教会全体を調べたのだが、違和感があったのは最初に入った、というか落ちた先にあった祭壇部屋だけで、後は一般的な宗教施設のようだった。違和感はあるが、動かないゴーレムはあまり触れたくないし、他は調べる手がかりもないので、当面調査を保留することにする。


 滝から落ちた時に、相当大きな音がしたはずなのだが、その音を聞いて人が集まることはなく、それどころか、教会内は埃が積もっており、なぜか人の気配が全くなかった。教会の部屋を調べたのだが、物はほとんど残っておらず、理由は不明なのだが、計画的に出ていった可能性も感じられた。教会で一晩過ごしてみても、状況はかわらず、やはり人の気配はなかった。


(さて、さすがに人恋しくなってきたな。)


 昨日は暗くなってきたこともあり断念したが、今日は教会の周辺を探索してみる。目覚めた後、作り置きの焼き魚を口にしてから出かける。相棒のナイフはもちろん持参する。


 嫌な予感はするが、そろそろ人に会いたい。俺は部屋から出て、教会の大きなフロアに入り、そこから教会から外に出た。


(やっぱりかな。)


 教会は、周りより1mくらい高いところに建てられており、出口から周りが見渡せるようになっていた。教会入り口の前は、下りの階段になっており、その先を道が一本まっすぐ伸びている。


 道の両側には、建物や畑などが広がっている。建物は、一部崩れているものも散見されており、畑に至っては放置されて久しい様子だ。教会の後ろは山になっており、全体的に大きい半円形のドーム状の壁に囲まれている。


 壁というか、地形をうまく使って作られた隠れ里のように見える。元々あった大きな洞窟に手を入れて作ったのだろう。


 全体の規模はそこまで大きくない。教会から見渡す限り、前の村の半分に満たないが、建物の数から60家族くらいは住める、集落くらいの規模だろう。


 周りは静けさに満ちており、人の気配はもちろん、動物の気配もない。一目見ただけで、直感的に廃墟なのが分かる。


(守りは堅そうだが、人がいない理由が気になるな。)


 集落には、畑だったような場所があり、まばらに植物が生えているところもある。管理されているようには見えず、元々埋めてあった植物が、そのまま自生しているようだ。


 畑には水を流すための水路があるが、長年放置されたことで、詰まって水が断たれている畑もある。それでも3割程度の畑には水が流れ込んでいる。その水の水源は、おそらく教会あった滝だろう。


 水が比較的豊富にあり、オアシスとして十分機能しそうな土地だ。周辺の砂漠化などが要因なのかもしれないが、それだけで廃墟になるだろうか。村でくらせるなら、ここでも暮せそうだ。この集落やその周辺を探索することで、何か分かることがあるかもしれない。


(一応、調べて見るか)


 集落にある建物は、教会のようにレンガできているようなものはごく一部で、岩や土でできた粗末な建物が多い。人がいなくなってから大分経つのか、崩れた建物も散見される。


 無人のようだが、まだ油断するには早い。とりあえず、集落のことを知るために、近くの建物からもっと詳しく調べていく。

 

 廃墟のようだが、今の段階で油断するという選択肢はない。慎重に1件ずつ調べていく。


(何か手がかりがあればよいが。)


・・・


 慎重さは、5か所までしか保てなかった。調べてみると、あまりにも何もない。どの建物も、使えそうな物はほとんど残っておらず、計画的に出ていった可能性が高くなっていく。


 そもそも、建物が風化して壁が崩れている場合も多く、外からある程度、建物中が見えるので、慎重になりようがない。さらに10件以上調べたが、建物の中にはあまり有用なものは残っていない。唯一使えそうなものは、ボロボロだが鉄製の農具くらいだった。


 ボロボロとは言え、鉄製のものが残されているということは、この集落では、鉄はある程度普及していたのだろう。


 精鉄は、品質にこだわらなければ、400度~800度の温度で可能になってくる。火力を安定させる技術が必要だが、鉄鉱石と木材さえあれば比較的容易にできる。鉄製品を放置できる程なので、もしかしたら近くに鉱脈があるのかもしれない。そうであれば、普段使い用の包丁や斧などの製作を行ってみたいものだ。


(建物の調査は、一旦ここまでにするか。)


 調べた建物は、住民が何らかの理由で、計画的にこの集落を出ていったことを裏付けていた。まだ調べていない空き家はいくつもあるが、網羅的に調べるより、他の調査を優先した方が多くの情報が得られるだろう。


 人がいない理由にもよるかもしれないが、水が確保でき、住居や荒れ果ててはいるが畑もある。当面ここを拠点にして住むことを視野入れても良さそうだ。


 住む前提で、必要になりそうなものの調査や作業を優先していこう。住居や服は、最低限で我慢するとして、食は優先して確保しておきたい。今のところ、食糧が少なくても健康状態は保てているが、普通に腹が減るので有った方が良い。


 集落内の畑を再生して、農業ができれば安定的な食の確保も狙えそうだ。幸い、ボロボロの農具は、柄の部分を作り直して錆を削れば、欠けている部分はあるものの、十分に使える。


 畑も水の流れが悪いところが目立つが、水は十分あるので問題ない。水路に詰まっているゴミを取り除き、水を流して畑を深めに掘り返せば、十分使えそうだ。大分、土が固そうではあるが。


 ちなみに、畑に自生していた植物に、ローズマリーがあった。ローズマリーは一度根付いてしまえば、あまり手入れをしなくても育つ。水もあったので、生き残っていたのだろう。料理にもお茶、それ以外にも使えるありがたい植物だ。


 贅沢を言えば、作物だけでは得られない、動物性たんぱく質もどこかで確保しておきたい。できれば畜産を行いたいが、家畜を入手できる見込みが立たない。家畜の代わりに、集落の周りで、動物や魚が獲れるようなところがあれば、集落にある建物に住む人以上の人口を養うことも可能だろう。


 ここで安定的に、食糧が確保できるなら夢は広がる。あの村の掟を、ここで作った食糧を提供することなどで、撤廃させることができるかもしれない。あの掟の存在は、前世の記憶を持つ俺には許容できない。


(集落の外も見ておくか。緑地が広がっていると良いが。)


 集落内は、ある程度把握できたので、集落の外も見ておきたい。教会からある程度見渡せたが、集落は全体的に、岩や土を2mくらいに積み上げた壁で覆われており、外の様子は見にくい。


 集落の出入口は、教会からまっすぐに伸びている道の先に見えている。そこからであれば、集落の外にも行けそうだ。壁も登れそうだが、下手らリスクを取らず、用意されている出入口から出た方が良さそうだ。


 教会から伸びた道を使い、出入口に向かいながら、集落のまわりにある壁を観察した。ところどころ壊れているが、壁が周りを囲っており、出入口は今向かっている1か所だけ。中々安全性が高そうな集落である。


 余裕ができたら壁の修復も行いたい。遠くから見ているだけだが、壁の造りは荒く、強度はそこまで高くなさそうだ。


 あまり広くない集落なので、出入口がすぐに近づいてくる。出入口を通して見える集落の外は、代り映えのない砂漠と荒野だ。出入口をくぐっていると、壁で見えなかった部分も見えてくる。


「・・・っ」


 出入口をくぐった瞬間、何度目かわからないが、声にならない悲鳴を上げた。外に出るまで、壁に隠されていて見えなかった。 今は、この集落を計画的に出ていく原因と思われるものが見えている。


(あの大きさはおかしい・・・)


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