第19話 マナの研究準備
マナの研究は、手探りだがこの世界での違和感をもとに、仮説検証を繰り返すこと進めていくことにした。仮説はいくつか頭に浮かんだものの、すぐに、このままでは検証できないことに気が付いた。
検証するのであれば、少なくともマナの動きや変化を計測して、評価し、証を立てることができなければならないが、その方法が確立されていない。今回の場合、公開する検証ではないので、俺自身が認識できて、評価できれば良い。そうであれば、検証する方法に、当てがないわけではない。
最近意識していなかったが、元々マナを感じることはできていた。俺がまだ、母親のお腹の中にいて、体が未成熟で五感がなかったとき、俺の中に何かが流れ込むのを感じていた。
その何かは、おそらくマナだろう。その感覚が意識して使えるようになれば、マナの動きや変化などを評価できるようになりそうだ。
五感がなかったときに感じられたものなので、第六感と呼ぶべき能力だろうか。前世での第六感は、SFなどに登場し、超能力のように捉えられていたが、そういう能力とは、明らかに違う地味な感じだ。それでも、上手く身に付けられたら、違う呼び名を検討する必要もありそうだ。
(どんな、感覚だったかな。)
昔、使えていたときの感覚を思い出す。あの時は、母親の腹の中にいるのを自覚したが、五感もなく、意識だけがある不思議な状態だった。その状態でも、体に何かが吸い込まれているのを感じ、吸い込まれたものが体を巡るのも何故か理解できていた。
そのなんとも言えない感覚を、繰り返し意識することで、マナを感じていることを自覚できれば、能力向上が図れるかもしれない。
長期戦に備えて、布と羊毛を使って長時間座ってもよさそうな場所を作る。集中できそうな姿勢、座禅をイメージして座り、目を閉じ、マナを感じようと神経を研ぎ澄ませる。瞑想するイメージに近い。とりあえずこれで試してみる。
・・・
しばらく集中して取り組んでみたが、普段から使っている五感とは勝手が違うため、感覚を思い出すのにも時間がかかった。それでも、元々できていたこともあり、一度感覚をつかめた後は、自然とマナを感じることできるようになっていた。
なんとも表現しづらい感覚で、目に見えているわけではないはずなのに、脳に直接マナがあることが伝わってくる。慣れていくにつれ、周辺にあるマナの大きさや動きが分かるようになった。この感覚を第六感とは違う感覚として、マナ感知と呼ぶことにする。
改めて理解できたが、俺にマナが集まっていることが感覚としてわかるようになった。注意深くマナの動きを追ってみると、どうやらヘソの下10センチ、道教でいう丹田にゆっくりマナが流れ込んでいる。
周りにあるマナの大きさは様々だが、比較的小さいものは球形で、空間をゆっくり流れている。丹田に流れ込むときに、形がゆがむため、形は一定ではないようだ。
マナ感知は、まだ集中しないと使えない。しかも近くのものが分かる程度で、仮説検証のために使っていくために、感じられる範囲を広げていきたい。範囲の広げ方は不明だが、ひとまず積極的にこの能力を使っていくことで、能力向上を図っていく。
今後マナ感知の範囲を広げられることを期待して、今できる範囲の感知をLv1と定義する。転生して初めて、意識して使えるスキルと呼べそうな技能が得られた。使い道があまりなさそうな、かなりニッチな技能だが、それでも若干嬉しい。
どんどんスキルと呼べそうなものを増やしていけたら、お手製のスキルボード(木製)でもつくろうか。
(なるほどな。)
調子にのって、マナ感知をしながら、周辺を調査してみた。集中は必要だが、歩きながらでも使い続けられる。簡易な調査だが、いくつかわかることがあった。
確かに、マナは女神が言っていたように、周りに充満しているようだった。ゆっくり色々な方向に動いる。壁や床などを素通りしているので、物理的な影響を受けないようだ。
検証を進めるためには、マナに変化を与える必要が出て来ることも想定できるが、物理的な方法では難しい。他の方法を編み出す必要があるだろう。
今の能力では、自分の周りの50cmくらいの範囲でしか感知できないので、断言はできないが、マナは重力などの影響も受けているようには見えない。地面付近に溜まっているわけではなく、マナは物質を透過するようなので、おそらく地面の下にもあるのだろうし、逆に上空にもマナはあると思う。この世界のいたるところに存在しているのであろう。
マナは少しずつ動いているようだが、俺の丹田のそばにくると吸い込まれる。俺が速く動くと、離れて吸い込めなくなるが、少し引っ張られるようで動く方向が変わる。仮説検証の時に、マナの方向を変える必要があれば使えそうだ。
マナ感知と、微妙だがマナに影響を与える手段が得られたので、仮説検証の準備が整った。ようやく研究が進められそうだ。




