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第17話 30日後の疑問

 村を出てから30日が経った。そして相変わらず水路に閉じ込められたまま。


 20日生き延びられればたいしたものと思っていたが、あっさり超えてさらに10日経過した。抜け出す手がかりは、相変わらずない。


「さて、どうしたものか。」


 漁の状況だが、釣りで最初の魚が釣れたのはビギナーズラックが多分にあったようで、その後めったに釣れない状況が続いている。白い魚は思った以上に頭が良いのかもしれない。


 漁にかける時間にもよるが、5日に1匹つれるかどうかで、非常に効率が悪い。囲い罠も、試行錯誤は繰り返しているのだが、結局成果が上がっていない。

 

 釣りや罠猟は不調なのだが、それを埋めるように、魚突きが急激に伸びてきている。つい最近まで、魚突きも上手くいっていなかったのだが、突きの技術がさらに上達し、成果が出ている。


 特に、ここ数日の上達は自分でも驚いている。突きの精度があがっていることもあるが、魚の動きが予測できるようになったことが大きい。ちょっと先の魚の動きが見えるように感じ始めており、その精度が日に日に上がっている。


 今では槍を2,3回突けば1匹はとれるまで、突きや魚の動きの先読みの精度が上がっており、魚の確保は問題なくなっている。乱獲したくないので、獲った数はまだ少ないが、段々外す気がしなくなってきている。


 魚が豊富な場所があれば、漁師として暮らすのもありかもしれない。ここでは、魚の獲りすぎも心配だが、それを焼く燃料にも限りがある。その両面から、今は魚の確保を抑えている状況だ。


 竹の移植・育成は順調。持ってきた枝から、全部ではないが根が生え、地面にも根付いた。 根の先の方も順調で、こちらからは既に新芽が出ている。


 まだ、タケノコや竹材が取れるようになったわけではないが、このまま順調に育成が進み、光合成が始められるようになるのも時間の問題だろう。


 一方で作物の育成は苦戦している。発芽までは順調だったのだが、順調なのはそこまでで、は成長できずに枯れてしまう。植えている場所がほぼ砂なので、土に力がなく栄養が足りていないのだと思う。


 魚の食べかすなどから、作物が元気に育つように肥料を作りたいと思っているが、圧倒的に原材料の量が不足している。種は貴重なので、肥料の準備できるまではいったん作物の育成はやめることにした。


 体の健康状態は、なぜか安定している。村から持ち出した保存食は、12日目で底をつき、それ以降は、魚を食べることで飢えをしのいでいる。


 最近は魚突きが習熟したので、魚を取ろうと思えば取れるが、焼くための燃料が少なくなっているので、我慢をしてあまり食べないようにしている。


 食糧事情は悪化しており、食事を取る機会が減り、特に12日目以降は栄養が足りているとはとても思えない。思えないのだが、体は健康そのもの。


 食べていないので出るものは少ないが、この食糧事情で元気な状況は明らかにおかしい。むしろ稀にだが魚を食べているせいか、調子がよく、成長痛が気になるほどだ。


 思えば母親のおなかの中にいた時から、村で過ごした2年間、似たような疑問は常にあった。食べる量が足りないはずなのに順調に育つ。体の大きさも、同年代の子供たちより大きいくらいだった。


 そろそろ、この疑問について本気で向き合う必要があるのかもしれない。正直なところ、今は魚を獲るのを控えていることもあり、暇と言うこともあるし、今の食糧事情でも体は問題なさそうだ。向き合う時間は十分に確保できる。


 前世でも、あまり食べなくても大きくなる子供は確かにいた。その場合、両親も背が高い傾向があり、がっちり身が詰まるというより、言い方は悪いが、ひょろりと背が高い印象の子供が多かった。


 遺伝的な影響が大きいのだと思うし、取り込んだ栄養を、効率よく背を伸ばすのに使われているのだろうと感じていた。


 この世界での俺はというと、母親は小柄だった。しかも、前世の子供達と比較にならないほど、食べていない。比較したら1割くらいしか食べていないのではないだろうか。


 いくら効率が良いと考えても限度がある。この状況で、順調に大きくなるというのは、前世の知識では説明できない。


 口から取得している栄養素以外に、植物の光合成などのように、体内で栄養素を作り出すか、栄養素などを補える何かがあると考えるべきだろう。


 前世の知識では説明できない何かが影響している、そう考えた時に思いあたるのは、女神が説明した『マナ』の有無。前世でも、もしかしたら、知らないだけであったのかもしれないが、少なくとも知覚はしていなかった。


 女神の話では、動植物の減少に伴い、世界に『マナ』が満ち足りている状態だという。『マナ』に関しては、母親のおなかの中で、俺の体にマナが集まっているのを実感した経験があるので、その存在自体は知覚している。


 生まれてからは、あまり意識していなかったが、その感覚は今も続いている。


 なぜ『マナ』が俺の体に集まるのか、その理由は分からない。体が健康でいられるのは、この現象が影響していると考えるのが、可能性としては一番高いように思う。


 それだけではない、考えるのを先送りにしてきたが、石を持ち上げた時の怪力の理由なども、この現象の影響かもしれない。そうであれば、ここを抜け出すために『マナ』が俺の体に集まる理由や、その影響などを研究する価値は十分にある。


 時間はいくらでもありそうだ。ただ、新たな崩落などを待つだけでなく、時間をかけて『マナ』の研究を進めていこう。


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