表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/179

第166話 モツ鍋

「おはようございます。今朝は早いですね。」


 俺が起きると、先に起きていたエルバが挨拶をしてきた。いつも早起きをして、朝食の準備をしてくれるが、今日は俺が振舞うことにしよう。朝から少し重いかもしれないが。


「ああ。おはよう。昨日手伝ってもらったものを、皆に味わってもらおうと思ってね。この辺では初めてになるかな。」


「もとの材料からは想像できないですけど・・・ ちょっと怖いけど楽しみです。」


「クセがあるが、気に入ると思うぞ。悪いがもう少ししたら、昨日手伝ってくれた人を呼んできてもらえるか? 養鶏施設のオーブンで料理をするから、皆に自分の食器をもってきてもらってくれ。」


 領内ではマイ食器を推進している。細工担当のアシーナが、連日焼き物の皿を作り、領民1人ずつに配ってくれたものだ。竹材の箸もセットにしている。箸に慣れていない人がほとんどだが、作りやすさと有能さという大きなメリットがあるので、普及を目指している。俺は食器の他に、鋳鉄で作った大き目の鍋を持っていく。久々に食べるものなので、少しテンションが上がっているのが自分でもわかる。いそいそと準備をして、下準備のために移動する。


・・・


「よしよし。いい具合だ。」


 養鶏施設につくと、昨日のうちに下処理したモツを確認する。幸い気温が低く、臭みも出ていない。次に寸胴に作ってもらった、鶏ガラスープとコンソメスープも確認していく。鶏ガラは既に取り除いて、天日干しにしている。2~3週間かけてしっかり乾燥させた後に、砕いて肥料として畑に撒くつもりだ。

 

 鶏ガラスープと比べ、コンソメスープはその作り方からして量は少な目になる。鶏ガラスープに大量の野菜を入れ、手間をかけて煮込む必要があるからだ。ただ、手間と材料をかけるだけの意味はやはりあり、コンソメスープは特に美味い。十分貴族にも満足してもらえるはずなので、完成したら領地では当面食べず、貴族用に販売できないか王都で相談するつもりだ。


「お待たせしました。」


 料理の準備をしていると、エルバが昨日手伝ってくれた人に声をかけて、つれてきてくれた。集まったところで、早速料理を始める。といっても、鍋料理で調味料も少ないのシンプルなものだ。


「じゃあ、今から料理をしていくぞ。難しくないので、こっちも覚えてくれ。」


 俺はそう声をかけてから、料理を始める。まずは鋳鉄の鍋をオーブンの上に置き、鶏ガラスープを入れる。スープが温まる間に野菜を切り、鍋に敷き詰め、その上に白物のモツを幅5cm程度にきったものを並べて行く。さらにモツを野菜で包むように、上にのせる。適度に塩を加えて煮ていくと、野菜から水分が出て来て、丁度よい塩梅になっていく。モツは脂の旨味が売りなので、あまり煮込まない。野菜に火が通るくらいの大体15~20分程度。このまま、少し煮込んでいく。


「煮込んでいる間に、もう1品。スープを作る。」


 煮込みの間に、鶏ガラスープを使った簡単なものをもう一品追加する。別の鍋に鶏がらスープを入れ、適度に野菜を入れる。その間に卵を割り、かき混ぜて溶き卵にする。スープに塩を加え、味を調整した後に、溶き卵をかき混ぜながら、流し込んでいく。卵スープなのだが、鶏ガラスープをベースにするだけで、満足度の高い一品が出来上がる。


 卵スープが作り終わったころに、丁度良くモツ鍋が完成する。モツは下処理をしっかりしたので、思った以上に臭みがなく、良い感じに仕上がった。最初は心配そうに見ていた人も、ほんのりと良い香りが漂い始め、表情が変わっていく。そこに隠し玉のパンを付けて完成だ。昨日焼いたので冷えてしまっているが、それでも美味いはずだ。


「よし。完成だ。」


 俺はそういうと、自分の食器にもつ鍋と、卵スープを入れ、パンを取って食べる準備をする。


「皆も各自でよそって、食べて見てくれ。」


 そう促しながら、まずは自分で食べてみる。


「・・・!」


 思わず笑みがこぼれる。かなりの出来だ。モツの臭みも全くない。ぷりぷりした触感と野菜がマッチし、互いの旨味を引き出している。美味い。黙って頷きながら食べ続けていると、皆も恐る恐る食べ始めた。


「リコルド、すごくおいしいです。ちょっとびっくりしました。」


 他が顔を見合わせる中で、真っ先にエルバが食べ始めてくれた。食べると少し間があった後、普段は中々見ない感じで目が丸くなっている。


「そうだろう。そうだろう。これを貰ってきてくれたエルバには、感謝しかない。」


「卵スープもパンと合いますね。」


 素直に喜んでくれる姿は、周りにも伝染していく。1人、また1人と食器によそっていく。


「う、美味い! なんだこれ!」


「これがあれから? 信じられない!」


「モツだっけ? なんていうのか、プリッとした食感が良い!」


「ちょっと、美味しすぎない???」


「もつの旨味と、野菜の甘味が絶妙に調和しているんだ!」


 続いて食べ始めた領民からも、好意的な感想が続く。


(そうだろう。昨日変な目で俺を見たことを恥じるがいい。しかし、それだけで終わらせるつもりはない。)


 鍋の中身がどんどんと減っていくので、野菜やモツを切り、具を足していく。足しては減り、足しては減りを繰り返すと、やがて減るスピードが落ちて来た。皆、だいぶ満足そうな顔をし始めている。


「ふふふ。それではとどめと行くか。」


 俺はそういうと、おもむろに隠しておいたうどんを鍋に投入する。お腹いっぱいになり始めた領民たちの絶望する顔が心地よい。領内ではうどんは既に人気の食材の一つとなっており、スープの旨味がからんだうどんが容易に想像できるはずだ。この状況でうどんを食べないと言う選択肢はない。


 数分待ち、茹で上がったタイミングで、自分の食器に盛って食べる。


「うむ。最高だな!」


 塩と鶏がらスープに、野菜とモツのうまみが加わった味わいが絶妙で、うどんのうまみをさらに引き出している。領民も耐え切れず食べ始めるが、苦しさとうまさが同時に襲い掛かっている様子が見て取れる。当面は領民の間で楽しむつもりだが、いずれは屋台などで販売しても良いだろう。


(リーダ達が故郷から帰ってきたら、連れてきた人たち一緒に振舞っても良いな。)


 美味しいし、栄養もかなりあるので、喜んでもらえるはずだ。身も心も温まってもらうとしよう。ただ、スープやモツは、冷蔵庫がないので、もって精々2~3日。食べさせて体調を崩したら元も子もない。セルカに協力してもらい、最高のタイミングで出すとしよう。その後は領民に適度にくばりながら広め、領内の食糧事情を一層改善して行こう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ