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第15話 漁にチャレンジ2

(・・・ん。朝か。)


 今朝も、日の光で自然と目が覚めた。眠りが深く、質の良い睡眠がとれている。昨日は、少しでも生き残れる可能性を高めるため、早朝からギリギリまで作業を行って、疲れていたのもあるのだろう。もちろん、フカフカの寝床も貢献してくれている。


 それにしても、極限下において、快眠ができているのは、我ながらずぶとい。怪我や体調の悪化が、死に直結するだけに、睡眠がとれているのは、良いことだろう。


 水路に閉じ込められて1日目は、あっという間に過ぎ去った。今日こそは、魚を確保するか、せめて確保する目途を付けたい。


 俺は起き上がると、木箱にナイフで傷を1つ加える。2日目の朝だ。


(うし、今日こそ魚料理だ。)


 起きて早々、池に作った囲い罠を確認するが、魚は見当たらなかった。まだ警戒されているのか、餌が悪いのか分からないが、もうしばらく様子を見るしかない。


 今日は、ここにある材料でも可能な、釣り、魚突き、罠猟の3つのうち、昨日できなかった2つを試してみたい。まずは釣りにチャレンジ、間に合えば魚突きまで試したい。


「さぁ。道具を作っていくぞー!」


 気を抜くと孤独感と不安で、気持ちが落ちていきそうになるので、声を出していく。少しでも気持ちをあげていく必要があるだろう。


 早速、釣り道具の準備に取り掛かる。


(まずは、釣り糸か。)


 材料は限られているが、木箱の中にはクッション代わりに入れられた羊毛ある。羊毛があれば、原始的な道具で糸をつむぐことができる。


 ざっくりした工程は、羊毛をほぐして、縒って、紡ぐ、それだけ。毛糸は、耐久力が意外にあるので、釣り糸としても問題ないはずだ。残念ながら、テグスのような透明な糸にはなりえないので、魚にばれやすいのだが、薄暗い場所であれば使える可能性は十分ある。


 羊毛を、少しずつほぐしていく。毛糸を効率的にほぐすには、細い鉄で作った櫛、ハンドカーダーと呼ばれるような道具があると楽なのだが、当然ないので、手で地道にほぐしていく。


 中々に進みが悪い。毛糸をほぐせば良いので、木箱のざらざらなところを、ハンドカーダー替わりに使ってみたら、思ったより作業が楽になった。


 ほぐした羊毛を5cmくらいの幅で並べて行き、釣り糸として使えそうな長さにする。長さが十分になったところで、手でかるく縒り合わせる。


(紡ぐ作業は、道具があった方が良いな。)


 一旦羊毛を置き、ナイフで木材を削り、糸を紡ぐ道具の部品を作る。その部品を組み合わせて、目的のものが完成した。少々不格好だが、コマのように回るいわゆる「東北スピンドル」といわれるものだ。


 軽く縒った太い羊毛の塊から、東北スピンドルもどきで糸を紡いでいく。十分にほぐすことができていれば、縒り合わせる必要もないのだが、今回は若干普通と違う工程で糸を紡ぐ。


 中々糸の太さが一定にならず、微妙な出来だが十分な強度の糸が完成した。糸を紡ぐ作業は、始めてみると楽しく、慣れると良い糸が作れるので、余計に糸を作ってしまった。こんな時でも、物づくりはちょっと楽しい。


 結構な量の羊毛を使ってしまったが、途中の箱から追加調達できた。それなりに量を確保できているので、問題ない。糸は他にも使い道がある。

 

(よし、釣り針も作ろう。)


 空き缶のタブがあれば、少し加工するだけで、簡易な釣り針ができるのだが、当然そんなものはない。せめて魚の骨や貝でもあれば、マシなのだがそれもない。


 石器時代以下の材料しかない状況で、釣り針として加工できそうなものは、木片くらいだろう。しょうがないので、木片で釣り針を作っていく。


 釣り針といえば、フックのような形状を思い浮かべる。確かにその形の方が、釣りの成功率はあがるのだが、実はそのような形でなくても、釣り針として成立する。


 魚は、餌を食べるとき、餌を水と一緒に吸い込むので、吸い込める大きさで、糸を引っ張った時に、口の中に引っかかるような、とがったものであれば良い。


 木材を3cmくらいに切り出し、2つの円錐の底辺をくっつけたような形に削る。真ん中には、糸がずれないような溝を作る。その溝に糸を結び、糸を引っ張ると両端のとがった部分が魚の口に引っかかることで、釣り針として機能する。


 原始的なつくりだが、これでだけで釣り針の代わりとなる。無骨だが中々良い出来だ。ここでもナイフが活躍してくれた。


(よし、釣り道具が一式完成。)


 釣り竿を、木材から削り出した棒で代用し、釣り竿、釣り糸、釣り針が完成した。組み合わせて、釣りの道具は完成させる。餌は、保存食の一部を練って使う。昨日から釣果がないので、そろそろ成果が欲しい。


 餌は囲い罠にも使っているものだが、そちらで成果が出ていないので、まだ使えるかどうか確証がない。そのため、この餌に魚が寄ってくるかを確認するため、岩陰から釣り竿が出す感じに配置して固定。


 針に餌を付けて糸を垂らし、丁度水に入るようにしてから、少し離れたとろで様子を見ることにする。これで、餌に魚が寄ってくるのがわかれば良く、あたりがあれば上出来だ。


(この間に、魚突きの準備もするか。)


 魚にばれないような場所から、釣り竿をチラ見して様子を伺いつつ、時間を有効活用するため、魚突き用の道具を準備する。


 魚突きの道具は、釣りの道具より簡易。というより材料が不足しているので、簡単に作るしかない。木材を削り、短槍のような形で削り出す。槍先にはかえしをつけて、魚が刺さった時に抜けないようにしておく。


 本来はゴム紐を柄の部分につけて、そのゴム紐を掘先まで引っ張ったまま固定し、魚に狙いをつけてゴムの力を使って獲物を突き刺すのだが、ゴム紐でさえここではオーパーツレベルだ。


 魚突きは、素早く安定した突きが出せるかどうかで成功率が大きく変わる。ゴム紐がないここでは、作った短槍を俺自身で素早く突いて使うしかない。どこまで安定した突きが繰り出せるようになるのかがポイントになる。


 求められるのは、突きの速度と正確性。釣り竿の様子を見ながら、魚を刺すイメージで、突きの練習をひたすら繰り返す。生き延びるための瀬戸際。無心になって突きの練習を続ける。


 安定した突きを繰り出すには、手先だけでなく足は腰の運用も重要であることが、わかってくる。槍を繰り出すために必要な部位が、全体的に連動した時は、そこはかとなく気持ちよさがある。ひたすら繰り返し、日が傾き始めたころ、ようやく突きが安定してきた。


「ハッ」


 我ながら会心の突きが繰り出せた。そして、釣り竿を全く見ていなかったことに気が付く・・・ この夢中になり過ぎるところは、良いのか悪いのか。今回は悪いのだろう。


 そろそろ暗くなるので、釣り竿を片付ける。竿を片付けようとしたときに、餌をつついている魚がいて、つけていたはずの餌がほとんどなくなっていたのが確認できた。


 釣り竿の観察目的の1つであった餌が使えるかどうかは、かろうじて確認できたので、少し安心する。もしかしたら、あたりもあったのかもしれないと思うと、後悔の念が湧くが、まあ、明日また頑張りたい。


 最後に囲いの罠を確認するが、相変わらずなぜか魚が近寄らない。餌は問題ないので、他に何か理由はあるはずだ。


 明日に備えて、急いで寝床につくと同時に日が落ちていった。明日こそは魚を確保したい、そう思いながら眠りに落ちていった。


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