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第149話 ギルド長からの相談

「おう。リコルド、随分と長く不在にしていたそうじゃないか。不毛な土地だからやることが無いかもしれないが、領地は大丈夫なのか? 諦めるにしても流石に早いぞ。」


 俺はギルド長オルノからの呼び出しを受け、久しぶりに冒険者ギルドに顔を出している。出立前に説明したはずだがなと思いながら返す。


(現状を知らなければ、心配にもなるか。)


「半年ほど不在にしたが、うちには優秀な人材がいるから問題ない。少数精鋭と言うやつだ。領地も思った以上だった。」


「そいつは頼もしいな。その優秀な人材のお陰で、王都も見違えるほど綺麗になった。感謝しているぜ。」


 ギルド長の表情を見る限りは、素直に褒めているようだ。シモンも連れてきており、ギルド長の誉め言葉を素直に受け取っておく。


「そう言ってもらえるとな。今日はその件で相談があると聞いている。担当者のシモンを連れてきたので紹介させてくれ。シモン、ギルド長は貴族だが珍しいことに、礼儀は不要という奇特な方だ。」


 俺がそういうと、シモンは緊張しながらもお辞儀をして練習したであろう挨拶を行った。お互いの紹介が終わった後、ギルド長は本題を切り出してきた。


「早速だが相談と行きたいところだが、その前に話しておくことがある。良い話と悪い話があるがどっちが聞きたい?」


「今回の絡みだとすると、どちらも嫌な予感しかしないが。まあ、良い話から頼む。」


 ギルド長は苦笑いすると話始めた。


「先ほども話したが、王都が見違えるほど綺麗になっている。評判も上々で、定期的に綺麗にしてくれている地域では、飲食店の売り上げが上がるなどの効果も出ている。誰も好き好んで臭い場所にいたくはないわな。」


「そうだろうな。最初に王都に来た時に、汚すぎて驚いたぞ。」


「捨てるのも一苦労だからな。ここだけが酷すぎということはないぞ。ただ、今の綺麗な状態は評判が良い分、当然だがまだ汚い地域からは不満が出ている。範囲を広げて欲しいと、嘆願が数多く来ている状態だ。それを受けてようやくだが、国も来年の予算を増額する方向で動いている。報酬の総額はかなり増えるということだ。そのことで冒険者ギルドの評価も高くなっていることは感謝しかない。」


 シモンも嬉しそうに聞いている。


「うちのシモンは、王都を綺麗にすることにやりがいを感じてくれているから、そういう評価をもらえるのは嬉しい限りだな。うちの実入りも増えるのだろうしな。・・・で悪い方は?」


 ギルド長は分かっているよという表情で話し出す。


「悪い話の1つは、回収の依頼を達成しても、今後は冒険者ギルドの貢献度には計上しないことになった。お前が短期間で銀等級に上がった一因が、この依頼であることを知った奴が噂しているようでな。悪いが決定事項だ。当然だが銀等級の評価が取り消されることはない。」


 気にする奴もいるのは分かるが、冒険者ギルドの等級にこだわりはないので、この話はどうということはない。


「わかった。まだあるのか?」


「ああ、どちらかというとこちらが本題だ。実はな、依頼の報酬を半額にしろという指示が上からあった。悪いが決定事項だ。」


 ギルド長は苦々しい表情をしながら話してきた。想定していた内容だが、いきなり半額とはな。シモンも驚いた表情をしている。正直分からないでもないが、こちらの優位性は示しておくべきだろう。


「話にならないな。王都が綺麗になって店の売り上げがあがったなら税収も上がるはずだ。しかも希望者が多くて来年は範囲を広げたいと言っているのにか? この依頼はうちが一手に引き受けて達成しているが、他の受注者が現れない状態だぞ。うちが手を引いたらどうするつもりだ。」


 ギルド長は頷きながら、心底困った顔をしている。


「分かっている。俺だって分かっている。他にも受ける冒険者は何人かいたが、全く続かない。しかも貢献度に計上されなくなれば、どうなるかは言うまでもない。分かっているからこの場を設けて、何か条件面で歩み寄れないか相談させて欲しいと思っている。」


 道理に合わないので無視して受けなければ良いとも思うが、誰かがやらなければすぐもとの状況に戻るだろう。そうなればいつか必ず疫病が発生する。前世で何百万人もの被害を出した疫病を、絶対にここで再現させるわけにはいかない。


 それにシモンも志を持って働いているのに、ここで手を引いてしまえば、それにも応じることができなくなる。


(さてと、どうしたものかな。)


 こういう時は現場の人間にも話を聞くべきだろう。


「報酬が半額になるなら、効率を2倍にしたいところだが・・・何か意見はあるかシモン」


 俺が話をふると、シモンは一瞬びくっとしたが、少し間をおいてから話し始めた。


「そうだね。今は王都内で作業する人1名が、それぞれ1日4つの壺を一杯にできている。作業は店に行って回収、次の店に移ることの繰り返しで、店員に協力してもらい、できる限り早く作業することを心がけているよ。これまでの同じやり方だと増やせて後1つかな。」

 

 回収できている壺の数は半年前と同数で、最近は少し早めに帰ってくることも多くなっている。効率化は十分進んでいるようだし、効率を倍にするには何かの別の切り口がなければ不可能だろう。


「シモン、理想は作業時間を変えず1人1日8つの壺を回収だ。今は回収と移動を繰り返していると言っていたが、壺1つ分は何店舗くらい回収して、どのくらい時間がかかっている?」


「そうだね。だいたい7~8店舗で一杯になって鐘2つ分かな。」


 2時間で8店舗として、1店舗15分程度。


「回収するときは店員に声をかけているのか?」


「いや、最初はそうだったけど、今は置く場所を決めて回収する分を事前に置いてくれているよ。」


 改めて作業の詳細を確認しているが、思った以上に良い。作業時間も妥当に聞こえるし、店員とも協力関係を築き効率化されているようだ。更に効率化できるような部分は見えてこない。


「なるほどな。よく考えてくれているな。今のやり方だと単純に考えて回収する店舗数を半分、2,3軒で壺一杯に出来ない限り、倍の壺を回収するのは難しそうだな。」


 俺がそういうと、シモンはぶつぶつと考え事をし始めた。


「うーん。あーそうだ! でもダメかなぁ」


 シモンは何かアイデアがありそうだが、言い淀んでいる。


「何か思いついたなら言ってみろ。こういうときは多少の無理でも聞いてもらえる可能性がある。」


 俺はギルド長の方向を見ながらシモンに発言を促す。


「いやさ、リコルドが領地に作っているような共同のトイレがあれば、2,3箇所で壺一杯になるかなぁと。でも作る場所がいるしさ。」


 やはりシモンは頭が柔らかい。場所さえ確保できれば、何とかできる可能性は十分あるだろう。


「うちのシモンが良い案を出してくれた。場所さえ確保してくれれば、そこに皆が使える共同トイレを作れば解決できるかもしれない。そうなればうちも十分効果が見込めるから、依頼の報酬が半分でも受けるが。」


 俺はシモンの案に乗っかり、ギルド長に条件の了承を促す。ギルド長は少し考える様子をしているが、いくつか場所にも当てがあるのだろう。冒険者ギルドの担当者を呼び出し、ポイントを抑えた確認と検討をしている。


(流石だな。前世のベンチャー企業の社長のような検討の速さだ。)


・・・


 暫く返事を待つと、目算が経ったのか前向きな回答が返ってきた。


「よし、やってみるか。いきなり王都全体は不可能だから、場所が確保できたところから始めさせてくれ。」


 結局、この判断が王都全体に公衆トイレが設置される最初の一歩となった。ある程度の広さを確保してもらい、複数のトイレを設置し、回収効率を大幅に上げることに成功。領地には岩場が多くあり、石材の確保に困ることは無く、トイレの建築材料はほぼ無料で用意できた。その費用を石工ギルドの相場で実費を請求することで、トイレを一か所作るごとに大きな儲けが出た。そのうえトイレで使う紙などを合わせて販売することで、領地の事業の柱の一つとして成長していくことになった。


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