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第148話 領地の状況

「そろそろ領地に着くぞ。もう少し見えている。あの辺りだな。」


 荷馬車の少し先を走りながら、北のかなり先を指さす。


「えー。いや、見えないでしょ。うーん。あ、あれかな。緑が見える気がするわ。」


 アシーナには少し見えたようだが、フレッドは目を細めながら無言を保っている。地平線よりちょっと手前に見えるくらいなので、まだ3,4kmは離れているのだろう。


・・・


 暫く走り続けるとはっきりしてきた。半年前には荒野だったが、一部が緑色になっている。あまり心配はしていなかったが、順調に作物が育っている様子が文字通り目に見える。成果が実感できて安心する。良く観察すると濃い緑色が多い。残念ながら小麦は少な目で、ソルガムを中心に植えているようだ。


(あの一帯を緑にしたいもなだな。)


 王都の南側には俺の領地しかないので、問題はないのだが境界線となるようなものがなにもない。中々優先順位が上がらないが、いずれは壁や柵を整備していきたい。いっそ諦めて緑の土地がすべて領土としていっても良いのかもしれない。


 緑の少し南側に人が集まっているのが見える。半年前の村に帰郷した時の状況に似ている。セルカがまた気を聞かせてくれたのだろう。

 

「お帰りなさい。リコルド。無事で何よりだよ。」


「領主様、おかえりなさいませ。」


 最初に元スラムの住人シモンとエルバが声をかけてくれ、その後に、冬前に領民として受け入れた元共和国王都住民たちから挨拶を受けた。総勢50名弱、皆元気そうでなによりだ。


「皆出迎え感謝する。半年も留守にしてしまってすまないな。よかったらこれまでの様子を聞かせて欲しい。」


「はい、準備はできております。」


 俺がそういうと、既にそのつもりだったようで、新しい領民の住まいの方に導かれる。左右にはソルガムが林のように力強く伸びている。歩きながら周囲を観察したが、出発前に多めに耕した農地候補地がすべて作物で埋まっているように見えた。かなり頑張ってくれたようだ。


(これなら、領民をもっと増やしても大丈夫そうだな。)


「リコルド、こちらへどうぞ。」


 椅子として使えそうな岩がいくつもある広場に案内された。俺の分だけだが、お茶も用意されている。


「リコルド、とってもやりがいがありそうね。」


 村で細工を担当してくれていたアシーナが近寄ってきて耳打ちしてきた。家具や食器が足りていなさそうな様子を見て取ったのだろう。皆がそれぞれの場所に移動し、落ち着くのを待ってから声をかける。


「みんな半年間の間、領地を守ってくれて感謝する。まずは、半年間の領地の様子を教えて欲しい。その後に、俺の方も話をさせてもらう。」


 俺がそういうと、一番の古株であるシモンとエルバが報告をしてきた。


「共和国の仕事は順調だよ。仲間も増やしていて、共和国の中では俺を含めて5人が作業している。王都の人たちからはもっと増やして欲しいと言われているのだけれど、冒険者ギルドの方からは少し待って欲しいと言われているんだ。ギルド長から、リコルドが帰ってきたら相談があると伝言があったよ。仕事は順調だけどスラムで少し揉め事が起きている。手伝ってくれている人が被害にあっているんだ。」


 シモンが仕切っている王都内の排泄物の回収と廃棄は、苦労の割に実入りが少なく人気がない依頼だ。それをシモンが工夫して、効率的に回すことで大人以上の収入を得ている。シモンが信頼しているスラムの住人も使っているため、報酬額も積みあがっているのだろう。


(年末も近づいているし、ギルドが確保した予算が不足しているのかもしれない。来年の予算増が認められれば良いが・・・)


「頑張ってくれているようで嬉しいよ。だがスラムの件は心配だな。希望者がいればだがうちの領地への受け入れも考えよう。受け入れはセルカと相談した後になるが、それでよければだが。」


「本当かい? 実はそれも相談されていたんだよ。早速明日にでも話してくるよ。」


 シモンは嬉しそうに頷いている。


「領主様 我々からも報告させてください。」


 新たに領民になった47名は、5~6名で固まってまとまっているように見える。その中の代表者らしき領民がが発言してきた。


「ああ、すぐ出かけてしまって済まなかったな。是非報告をお願いしたい。」


 俺がそういうと、その代表者はとんでもないと恐縮した後、報告をしてきた。


「我々はご指示の通り、皆で農業に携わっておりました。農業未経験のものも何人かおりましたが、シモンとエルバが丁寧にイーリス教の農法を教えてくれました。今は皆楽しくやらせてもらっています。ソルガムを中心に作付けを進めていまして、びっくりするほど豊作です! 今は4回目の収穫に向けて育てている最中です。ソルガムが獲れすぎてしまう場所に困っているくらいです。」


 皆満足そうな顔をしている。確かに何かが収穫できたときは嬉しくなる。


「それは凄いな。慣れていない作業だったから大変だったと思うが感謝する。ここに来るまでに見たが、俺の予想より農地が広がっていた。」


「こんなに、しかも何度も作物が元気に育ち続けるというのは、見たことも聞いたこともなかったものですから、頑張り過ぎてしまいました。筋肉も結構つきましたよ。」


 代表がそういうと、皆楽しそうに笑っている。


「本当にありがたい。改めてお礼を言わせて欲しい。ありがとう。」


 俺がそういうと、皆一様に嬉しそうに頷いている。皆はソルガム主体の食事にもすっかり慣れたという。小麦や米などよりよっぽど健康に良いので、領民の主食はこのままソルガムでもとも思うが、やはりバリエーションは増やしていきたい。食事が十分だったのか、皆、体調を大きく崩すことも無かったそうだ。


・・・


 一通り領民の報告を聞いた後、こちらの話もしておく。


「今度は俺の方だな。事前に伝えたものもいるが、俺は南にある故郷に戻っていた。かなり距離があるので頻繁には行けない場所だがな。故郷はここに無いものもあって、できればこの領地に広めたいものを持ち帰ってきた。」


 俺はそう言いながら、竹や竹炭、デーツなどを見せながら、簡単に説明していった。領民は農業に興味をもった者も多いようで、興味津々だ。


「こういった細工物も領内で作っていく。」


 竹細工やナツメヤシの葉で作った籠や入れ物、焼き物なども紹介していく。こちらは作れるイメージがわかないのか、戸惑っている領民も多くいるが、興味は持ってもらえたようだ。


「それと約束通り皆と話し合って、来春からやってもらうことを決めていく。農業を続けるのも良いし、食器や家具などの細工をしてみても良い。王都で働きたいといった希望があっても良い。できる限り皆の希望を叶えていくつもりだ。それと、この領地でやれることを増やすために、故郷からイーリス教の農業と細工に詳しい人材を連れてきた。アシーナとフレッドだ。これからよろしく頼む。話は冬に入ってからするので、そのつもりでいてくれ。」


 俺の話に続いて、アシーナとフレッドが挨拶をした。領民たちは今回も戸惑い気味だったが、冬の間に1人ずつ話していけば理解できるだろう。セルカにも協力をしてもらうことにしよう。


 さらに少し話をしてから、解散して拠点で休むことにした。領内の食糧事情安定の目途が立ったので、来春からは、さらなる発展の布石を打っておくことにしよう。


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