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第117話 木材の調達

 エルフのシャリテに案内されたのは、枯れかけた木の前だった。


「私が見繕ってきた木の1つよ。もう樹齢70年は越えていてね。声はここ数年聞いていないの。森に還すことも考えていたのだけれど。どう?」


 シャリテ達エルフには、本当かどうかは定かではないが木の声が聞こえるという。シャリテに示された木の種類はミズキだろう。樹齢は最大でも80年と言われている広葉樹なので、70年で寿命を迎えていてもおかしくない。既に立ち枯れを始めている。


 ミズキを自然に乾かしたときの気乾比重は0.67程度で硬い部類の木なのだが、加工がしやすく活用の幅が広い。想定より重いが候補としては悪くない。


(なるほど。寿命が来た木を選んできたのか。)


 木の寿命は、成長する高さと関係が深い。あまり高くも太くならない広葉樹は比較的短命で、低木の沈丁花は30年程度、カキ、モモ、クリは約50年、このミズキやコナラが約80年、トチノキでも200年程度だ。


 一方で高木の寿命は非常に長い。高木のうち、大径になる木などは寿命がないといっても良いくらいで、スウェーデンのダラルナ地方で発見されたトウヒの樹齢は約9550年とも言われている。ただ、そのような木でも、細胞の1つ1つが長持ちするわけではない。ほとんどの細胞は死んでおり、一部の細胞が木を太くしながら成長を続けているだけなので、常に新生しているととらえても良いのかもしれない。


(ああ、それはそうか。)


 俺は示された木で良いと返事をしようとシャリテに視線を移した。シャリテは、俺の方を興味深そうな、想定外でしょう?と反応を見るような顔で見ている。確かに俺は怪力だと話したのだが、一人で来ていたので、流石にこの大きさの木は無理と考えているのだろう。


(説明するより、見てもらった方が早いな。)


 鉱山の親方から、シャリテは英雄の1人と聞いていた。そのあたりのことを自然に聞き出すためにも、ここでこちらの力を見せておくべきと思った。俺はシャリテに頷いて、この後の作業の許可をもらうことにした。


 目の前の木、ミズキの直径は一番太いところで0.7m程度だろうか。見た感じ、既に乾燥が進み始めている部分もあるが、乾燥しきっておらずミズキの気乾比重よりは重そうだ。本来なら乾かしてから持ち帰りたいが、今回は荷馬車も借りているし、少なくとも一部は持ち帰りたい。


 このまま持ち帰るとすると、長さ2mの木材として加工しても、4,5本で荷馬車の積載量2t以上になってしまいそうだ。


「ほかの木も見繕ってくれているということだが、この木で問題ない。今回はこの木を報酬としてもらうということで良いか?」


 俺がそう確認すると、シャリテは、一瞬、え?というような表情を見せたが、辛うじて頷いたので了承と理解することにする。この木を丸々もらえるのであれば、今回すべては運べないが、想定していた報酬を大きく上回ることができそうで、内心にやりとする。

 

「それじゃシャリテ、切り出すために作業をさせてもらう。大きな木なので、少し時間がかかるが待っていて欲しい。それと、切り倒すときに、周りの木になるべく被害が出ないようにするが多少は諦めてくれ。」


 俺がそういうと、シャリテは何か納得したように頷きながら話してきた。


「わかりました。それでは今回の情報の報酬はこの木ということで決めましょう。作業も許可しますが、いつ人を呼んで作業を始めますか?」


 どうやら、俺の発言を、後日作業をすることにしたと勘違いしているようなので、そのあたりを説明して作業を進めることにする。


「いや、作業は今から始める。悪いが木の枝とかが落ちてくると思うので、離れてくれ」


 俺がそう伝えると、また、え?という顔をしながらも素直に離れてくれた。


・・・


 俺はシャリテが十分離れたのを確認した後、早速作業に入った。持ってきた特製スコップを手に持ち木に向かう。少し高いが届く距離にあった木の枝までジャンプして掴み、スルスルと木を登っていった。


(まずは、枝を掃うか。)


 木に登りながら、足をかける部分として2,3cmを残して、手あたり次第枝を払っていく。離れた所から、え?ええ?というような声が漏れてくるが、無視して作業を続ける。


 枝レベルの太さであれば、スコップの先をたたきつける程度で、切り落とせる。ミズキとしてはかなり太い木にまで成長しているので、枯れかけているものの俺の体重を支える程度ではびくともしない。


 木の高さも結構高く、15~16m程度はあるのではないかと思う。結構太い枝もあるので、依頼条件に合う直径10cmを越えているものもありそうだ。


(このまま切り倒すと、被害が大きいな。)


 枝を掃い終えた後、木を切り倒すことも考えたが、そのまま倒すと周りの被害が大きそうなので、危険だが幹の部分も上の方から切り落とすことにする。木は水分を含んでいるとはいえ、岩と比べれば柔らかいし、マナ操作スキルも向上している。


 幹の上方の太さは、マナを展開できる幅以下なので、切るのにスコップを2,3回振ってマナ操作をするくらいで切れる。若干斜めに切って、落下の重力エネルギーで上手く地面にささるように切ったものを落としていく。


 サイズは持ち運ぶことも考えて、2mくらいに揃えて切る。5回ほど切っては落としを繰り返したところで、残り4m程度の木の幹が残った状態になった。


(そろそろ良いかな。)


 俺は地面降り、最後に普通に木を切り倒すようにして倒した。運び出すことも考えて、先の落とした枝を切りそろえながら並べてロープで縛り、太めの木材を並べた。細かいゴミが出ているが、天然素材だし、いずれは森に吸収されることになるだろう。


「ふぅ。まずはこんなものか。」


 俺は一息ついて、シャリテの方を見たのだが、目を見開いて固まっていた。


「ぶっ。あははは。」


 俺はシャリテのあまりの変顔に、思わず大笑いしてしまったのだが、その声を聞いて今度は少し怒った顔になりながら、正気を取り戻したのか話しかけてきた。


「笑わなくても良いでしょう。しかしリコルド、普通ではないとは思っていましたが、あなたは何者ですか? 人間とは思えない・・・」


 俺は元々のねらい通りの反応ということもあるので、聞きたいことを含めて返す。


「俺は女神イーリスから力を与えられた。シャリテも同じ部類と聞いていたのだが、違うのか? 共和国では森の守護者と呼ばれて、大型獣を操るとか魔法を使うとか色々言われているぞ。」


 シャリテは否定するように頭を左右に振りながら答えてきた。


「私には噂のような力はありませんよ。完全に誤解です。私だけでなく、他にもいませんよ。あなた達が私たちをエルフと呼びますが、そこまで大きな違いはないと思います。耳が良く、木の声は聴けるくらいの違いではないかと思います。大型獣についても誤解ですね。ごく一部、意思の疎通ができるものはいますが、私が操ったことは当然ないです。私たちも、近づかないようにして共存はしているだけですね。長老たちであれば何か知っているのかもしれませんが、少なくとも私はしりません。」


 シャリテは驚いた影響なのか、いつになく早口で多く語ってくれていたが、話過ぎていることに気が付いたのか、いつもの口調に戻った。


「あなたの事情はわかりました。ああ、言い忘れましたが、当然私は魔法というものも使えませんよ。リコルドにはびっくりしましたが、約束通りその木は今回の報酬としてあなたに提供します。今後については、情報次第ということにしましょう。」

 

「わかった。あの木材は流石に一度では持ち帰れないので、ここに暫く置かせてもらいたい。水分を多く含んでいるので、持ち帰れない分はここで乾燥させて欲しい。」


 シャリテは想定内だったのか、簡単に了承してくれた。結局、太めの木材3本と、かさばる枝を荷馬車まで運んで積み込んだ後、シャリテに別れを告げて共和国に戻った。


 木材を軽々と運ぶ様子を見て、またシャリテが固まりそうになったが、すぐに動き出し、大きなため息をついただけだった。


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