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第116話 木材の運搬想定

(デレ期とは程遠いが、諦めずにいて良かった。)


 随分長くかかったが、ようやくエルフさんこと、シャリテと話をすることができた。それどころか、俺が望んでいた木材の取引が決まった。さらに定期的に入手できる可能性も出てきたのは大きい。まだ、可能性レベルで、細かい交渉はこれからだが、俺が提供できる価値を示し続けることができれば、それを対価に木材取引が継続できるかもしれない。


 取引自体も嬉しいのだが、話ができる機会が得られたのは大きい。今は情報とそれを継続して集めることのできる監視網という基盤が価値だが、話ができるのであれば他の価値も提供できる見込みがある。定期的に木材調達ができる関係性を構築していこう。


(それはそうと、今回の取引でどれくらい木材が提供してもらえるかだな。)


 ここまでは望んでいた結果であり喜ばしいことだが、あまり木材の運搬については考えてこなかった。これまで運搬は、探索などで見つけた木材や枝などを集めて、自分やロバたちが運べる分を運んだだけで、それを超えることは当然なかった。


 シャリテから対価として、どれほどの木材を得られるかは今後の交渉次第だが、普通に運べる量は越えるだろう。初回は様子見として、運搬できる量について、改めて想定しておく必要がありそうだ。場合によっては、誰か人を雇う必要が出てくるかもしれない。


(交渉して、木材はそれなりの量を確保するとして、種類や状態も気になるな。)


 生木を切り倒したばかりの木材は、木に含まれる水分が多すぎてとても運搬には適さない。基本的には乾燥させたものを運搬する。天日などで自然に乾燥させる期間は、木の種類や加工状態などにもよるが、半年から1年、物によっては2,3年乾燥させる場合もある。天然素材で個体差も大きく、ものによっては1~3か月で乾燥できてしまうものもある。


 乾燥させる場合は、木材と木材の間に隙間をつくるためのものを挟み、空気が通るように積んでさらしておく。屋外で乾燥させる場合の場所は、日当たりが良く、風通しの良い場所に置くこと理想的だ。


 雨に濡れることも懸念されるが、雨の頻度が高すぎない限り、適度に濡れた方が良く乾くという考えを持つ専門家もいる。ここで暮らした経験上、雨の頻度は問題なさそうなので、基本は屋外乾燥で良いだろう。


 自然に乾燥させたときの木材の比重のことを気乾比重というが、ブナ(0.63)、赤松(0.53)、ヒノキ(0.41)、スギ(0.38)、桐(0.29)など、木材の種類によって結構差がある。気乾比重が1.0を超えるような重い木材も存在する。ちなみに水分を含む木材に、マナを流し続けると比重が上がり硬度も増すが、結構手間がかかる。


 シャリテにもらえる木材の種類についてはまだわからないが、冒険者ギルドの依頼で指定された条件は太さと長さだったので、種類が選べるのであれば気乾比重が適度に低い、ヒノキやスギを選びたい。さらに気乾比重が低い桐などは、材質が脆く用途が限られそうなので交換候補にあっても、避けておいた方がよさそうだ。


(比重から考えると、すぐ持てる量を超える。一部を持ち帰る形で、交渉するべきだな。)


 もらえる木材の量や状態にもよるが、基本は持ち帰る分と置いて乾燥する分にわけることも考えておいた方がよいだろう。流石に普段より多い木材を調達できると思うので、運搬用に荷馬車を調達した。荷馬車は、冒険者ギルドで輸送用のコートタイプを1日銀貨3枚(保証金別途)で借りられるので、それで持ち帰れる分をまずは持ち帰る。


 荷馬車は炭鉱の村の定期便で使われていたものとほぼ同タイプで、サイズは幅1.2m、長さは2.5m程度だ。重さ2tは耐えられる。


 例えばスギ、ヒノキが選べたとして、気乾比重を余裕も含め0.5とすると、1立方メートルで500kg。荷馬車に余裕をもって載せられる木材の長さを2mと考えると、面積は0.5平方メートル。0.5平方メートルの円の直径は約0.8m程度なので、そのサイズの木材なら4本分。その半分の0.25平方メートルの円の直径は約0.56mで、そのサイズではれば8本くらいは積載できるはずだ。


 値段が付く直径0.1m(10cm)であれば、円の面積は0.0078平方メートルで、約254本。もらえる木材種類とサイズによる話なので、あくまで目安くらいにしかならないが、参考程度に把握しておく。


(捕らぬ狸の皮算用だが、結構な金額になりそうだな。)


 仮に254本もらえるとすると、1mサイズ1本で銀貨1枚、2mなので1本銀貨2枚とすると、銀貨508枚分(508万円)にもなるので、夢が膨らむ。太い木材であれば希少性があがり、さらなる高値を交渉次第でつけてもらえるかもしれない。


 そういえば、冒険者ギルドの依頼の条件は、買い取りする最低限の条件として、長さ1m以上、太さ10cm以上というものは示されていたが、それを上回ったときは別途査定としか書いていなかった。


(順調だが、今後も継続して木材が調達できるなら、道の整備も考える必要がありそうだ。)


 あれこれ考えながら、冒険者ギルドでコートタイプの荷馬車を1台借り、北門を抜けてエルフのシャリテのもとへ向かっている。荷馬車はロバのルシオとロシナンテにけん引してもらっている。


 元々ロバはウマと比べて速度は落ちるが頑強で力があるので、軽々と荷馬車を牽いている。荷馬車の耐久性もチェックした限りは問題なさそうだった。ただ、道の方は怪しく、空の荷馬車を牽いた後に、轍が残っている場所もある。数回の運搬なら問題ないが、続ければ支障をきたす場所も多く出て来るだろう。


 前世では自動車や重機による運搬が普通だが、それらがない時代の木材運搬は、一般的には陸路より水路が多く、木材をそのまま放り込んだり筏を組んで運搬したりされていた。水の流れによっては速度が上がり過ぎるため、受け取り場所で大きな事故になることも多かったが、理にかなった方法だろう。


 帝国が作った砦には、木材が持ち込まれている様子が散見されているが、その木材は北から大河を使って運び込んでいるのかもしれない。砦の建築を遅らせるなら、そのあたりを狙うべきかとも思うが。


・・・


(そりゃそうだよな。)


 ようやく先日シャリテと約束した場所に到着した。時間の約束はしなかったので、いつも挨拶に来ている時間に合わせてきたが、無事に会えるか少し心配していたが、すぐに杞憂に終わった。森に入るまで30m近くまでに来た時に、矢ではなく声がかかった。


「待っていましたよ。リコルド。木材を運び出すということなので、何人かで来ると思っていましたが一人だけですか? 渡す木材については細かく取り決めていなかったので、いくつか見繕っていますが、細い木の方がよさそうですね。」


 シャリテの方も、色々と考えてくれていたらしい。


「ありがとう。シャリテ。こちらも木材について相談したいと思っていた。木の太さや運び出しについては大丈夫。こう見えても結構力持ちだし、加工するための準備もしてきた。まずは見繕ってくれた木を見ながら話をさせて欲しい。」


 俺は愛用の特製スコップを見せながらそういうと、シャリテは首を軽くひねった後、あまり信じていないのか、少し笑いながら了承してくれた。


「それでは案内しましょうか。ロバはそこにつないでおいてください。」


 シャリテは木から降り、こちらを手招きしてきた。これまで長い間、散々矢で歓迎され続けていたので、若干の怖さはあるが素直に従う。森が間近に見え、あっさりと大森林に踏み込むことができた。


「おぉ。やっと大森林に入れた。」


「あら・・・、そうよね。リコルドは初めてね。普通はそこまで拒まないのよ。数人の侵入は黙認することもあるの。勇気をもって食べ物を探しに来た家族とかね。」


「そうなのか? じゃあ、なんで俺は入れてもらえなかった。いきなり弓で威嚇されたが。」


「そりゃあ・・・リコルドは色々怪しすぎたから。」


(・・・そりゃそうか。)


 シャリテ達は、かなり目が良い。遠くから俺がここまで来る速度や服装、装備品などを見ていたら、怪しまれても言い返せない。シャリテは多くを語らなかったが、反論する言葉が思い浮かばなかった。


・・・


 ようやく入った森の中は鬱蒼としていた。ろくに手入れもされておらず、森に人がほとんど出入りしていないので道がなく、辛うじて獣道のようなものが見えるだけだ。シャリテはその獣道を当たり前のように進んでいる。日光が地面までとどかないのか、背の高い草木はあまりないため、シャリテを見失う心配はなさそうだ。


 近づいて改めて思うが、シャリテは非常に整った容姿をしている。スラっとした身体で小顔、七頭身以上ありそうだが、背の高さは160cmくらいだろう。足音は微かにするが、足跡がほとんど残らないような歩き方をしている。


 そのままついていくと、俺はシャリテが見繕ってくれたという最初の木材がある場所に案内された。


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