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第115話 エルフさんの変化

(結構、時間が経ってしまったな。)


 共和国と帝国と戦況の確認や監視網の構築、たまっていた雑務などに追われ、大森林へ行くタイミングを逃し半月が経過した。


 早朝、スラムの少年シモンを共和国に送った後、ロバのルシオとロシナンテとともに共和国北門から出て、普段通りにロバたちを解き放った。俺はその足で、久しぶりに大森林に向かっていた。


(また、振出じゃないと良いがな。)


 今回もエルフさんと挨拶程度のやりとりをするつもりだが、いつも通りに矢が飛んでくるのだろう。このやり取りは今日で何日目になるのか既に数えていない。ただ、ほんの少しだが、飛んでくる距離が短く、スピードが緩やかになっていた感触もあった。


・・・


 大森林のいつもの場所に着く。近づくのは久しぶりなので、いつもより慎重に近づいていく。


 1歩、1歩と慎重に。


(良かった、振出ではなさそうだ。)


 いつも矢が飛んでくる距離になったので、更にゆっくり一歩ずつ近づく。そろそろ矢が突き刺さっていてもおかしくない距離なのだが、今日はまだささらない。


(あれ?)


 10日以上来なかったので、もしかしたら警戒が緩んでいるのだろうか。さらに一歩ずつ進む。明らかにいつもより森に近づいている。森まで20mもないところで、ようやく矢が足元に突き刺さった。


「それ以上先に進むのは許しません。止まりなさい。」

 

 エルフさんがいるであろう木の上から、いつもと同じようなセリフが聞こえてきた。なぜか安心している自分がいる。エルフさんはいつも通りに木の上から矢を射かけてきているが、いつもよりも圧倒的に近く、その姿が良く見える。


(まさしく、森の妖精だな。)


 遠くからでもわかったホワイトブロンドの美しい髪が、腰のあたりまでかかっている。体形は、人によっては残念な感じだが、中世的な感じで美しい。弓を引くのに邪魔にならない程度のふくらみもある。


 顔立ちは当然のように整っており、思っていたより若い印象を受ける。耳は思ったほどとがっていないようだ。俺は素直に止まり、黙って観察していたところに、エルフさんが続けて声をかけてきた。


「少年は前来た時に、帝国の様子を見に行くと言っていましたが、見に行かなかったのですか?」


 俺は初めての問いに、それもこちらのことに興味を持ったような問を受け一瞬戸惑った。相手の容姿に見とれていたのもある。


(・・・!)


 会話ができる二度とないチャンスなのかもしれない。気を取り直し素直に話すことにする。


「いや、行ってきた。信じるかどうかは任せるが、共和国と帝国の間にある大河まで。帝国軍の砦と、戦いの様子を見てきた。」


 俺は質問に対しての回答と、興味が引くかもしれない内容を加えて話す。


「そうですか。少年は走るのが信じられないくらい速いですからね。この期間で行ってきたと言われれば、信じるしかないですね。・・・どうでしょう、こちらの望む情報を提供してくれるのであれば、条件付きですが、少年の以前からの望みに少しは応えられると思いますが。」


 俺のどの情報を欲しているのか皆目見当がつかないが、木材を提供してくれるというのであれば、迷うことはない。正直、森の住人が欲しがるような情報があるとは思えないが、望んでいたチャンスを逃す理由にはならない。


「わかった。俺は少年ではなくリコルドだ。よろしく頼む。木材調達に繋がるのであれば、俺の知る限りの情報を提供する。俺には今持っている情報のほかに、定期的に砦周辺の情報を手に入れる手段もある。そちらの知りたい情報や価値があると思う情報があれば、継続して提供できると思う。」


 エルフさんは、頷いて交渉を始めてきた。


「私はシャリテ。私が知りたい情報は、共和国と帝国の情報全般です。木材の提供については、リコルドの情報次第ですが、エルフの誇りに賭けて公正に努め、対価を払うことを誓います。まずは知っていることを話してください。」


 お互い腹の探り合い、現時点で信じ切れる状況ではないが踏み込んでみるしかない。シャリテという名前は、鉱山の親方が話していた大森林の英雄と同じ名前だ。偶然ではないのだろう。


「わかった。シャリテを信じよう。先に少しだけ木材について話させてもらうが、長さ1メルト、太さ0.1メルトのものよりも大きいものを報酬として考えて欲しい。」


 シャリテが頷いたのを見て、知っている情報を伝える。


「俺が帝国軍について現時点把握しているのは、大河の東側に構築中の砦の状況、先日あった共和国との戦いの状況と結果、それとそのときの軍隊の構成くらいだ。砦の構築状況については、遠くから見て取れるような情報であれば、今後も継続して収集・提供できる。共和国についても先日の戦いの情報は同様だが、別に欲しい情報があれば追加で調べることもできる。」


 まずは、俺が持っている情報の概要を伝える。


「私でも、それがいずれも軍事上の機密情報であることは理解できます。内容の精度や粒度によりますが、それなりの報酬をお渡しすべき内容でしょう。今知っていることを教えてください。」


 シャリテが続きを促してきた。


「まず帝国軍の砦の構築状況だが、現時点で砦の一部は完成している。しかも、その一部を最前線に置き、かなりの速度で拡大が進んでいる。かなりの支援物資が大量に帝国側から大河を越えて送られてきており、着々と構築が進んでいる。兵力の実態は分からないが、建築にかかわっている人数の方が多いように見えた。砦の今の大きさは、せいぜい200名程度が入れるくらいだろうし、外に野宿している部隊も散見された。」


 シャリテは相槌を打っている。


「先日の戦いだが、帝国側の兵力は共和国よりかなり少なかった。そもそも兵力が少ないのか、精鋭だけで戦ったのかはわからない。分からないが指揮官は恐らくフォボスだろう。大型獣を騎馬代わりに戦っていた・・・」


 シャリテは普通聞こえないような小さな声で、やっぱりあの子はまだ彼と戦っているのねとつぶやいていた。


(あの子というのは、大型獣のことだろうか・・・)


 俺は聞こえなかった振りをしながら、先日の戦いの様子や陣形、共和国の様子なども含めてシャリテに説明していった。同じような相槌は打っていたが、共和国軍の様子は興味がなさそうだった。それから、2時間程度、シャリテの質問に答える形で情報を提供し続けた。


・・・


「わかりました。いずれも貴重な情報ですね。報酬はきちんとお渡ししますが、お互い準備も必要でしょう。3日後に木材を運べる算段を付けて、あらためてここに来てください。私の方で渡せる木材の目途を付けておきます。」


「わかった。3日後だな。俺の方は既に倒れてしまっている木材でも、腐っていなければ問題ない。後、森に入れさせてもらえれば、木材をこちらで積み込めるようにしてくる。」


「そうですか。それはこちらとしてもありがたいですが、森に入る人数は限らせてもらいますよ。」


 俺は了承したことを伝え、挨拶をして別れた。


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