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第111話 帝国の足音

 俺は共和国が抱えている大きなリスクのうちの1つ、帝国との戦況について確かめるべく、帝国と共和国の間に流れる大河の近くまで来ていた。


(予想より早く着いたな。)


 共和国からここまでの距離は200km弱。片道3~4日の行程を想定していたが、2日弱でここまで到達した。移動速度は時速21km程度の見積もりで、1日4時間程度走る予定だったが、移動速度が上がっているようだ。


 速度重視でここまで移動してきているが、いつもの通り監視網の確立と、周辺の探索はしている。流石に探索に時間をかけてはいないので、見て取れるレベルの情報収集だ。


(なるほど、こんな感じになっているのか。)


 共和国の西側、大河周辺には穀倉地帯が広がっている。穀倉地帯は大河に沿って続いているのだが、大河近くに建物はと殆どない。皆、高台の上に集落を作っている。いくつか立派な建物もあるので、そこには領主などの有力者が暮らしているのだろう。


 共和国の農業のやり方では土地を急速に劣化させるはずなのだが、ここの穀倉地帯は毎年収穫が安定している。その理由が気になっていたのだが、暫く眺めて見て納得がいった。恐らく周辺の構造を見る限り、大河は時々氾濫しているのではないかと思う。


 河の北端には大森林があるので、そこから枯葉や栄養を含んだ土などが定期的に穀倉地帯に流れ込んでいると考えるべきだろう。こちらの農作物の成長速度を考えると、時々氾濫があっても、頻繁でなければ十分収穫が得られるはずだ。


(しかし、共和国軍は大分押し込まれているな。)


 ここまで来る途中に、共和国軍と思われる軍隊が布陣していた。共和国本土の防衛もしくは砦の攻略を担当していると思われるが、砦からかなり離れた所で陣を敷いていたので、戦況はあまり良くなさそうだ。


 一方で帝国軍は、砦を着々と強化している。大河の少し上流から船が次々にわたってきており、建築材料や食糧などと思われる荷物が搬入されている。


 みすぼらしい砦を想定していたが、既に防壁や塔が完成しており、さらに拡張が進められているように見える。王都で聞いた話と温度感が違い過ぎる。


 そもそも大河は防衛に適した地形で、渡河させないことが重要になるが、既に渡河された上、砦を作られ、さらに強化されている状況は、通常であれば看過できないはずだ。それなのに、共和国軍が現時点攻め込んでおらず、離れた場所に陣があるのは大敗北をしたか、攻め込めない別の理由があるのだろう。


 補給については、共和国に地の利があるはずで、周辺の都市や農村から食糧などを徴発すればよいのだが、今の帝国軍の補給物資の搬入の頻度を見る限り、その利はあまり有効にならないのかもしれない。帝国軍はかなり本気と見るべきだろう。


(これは、無理かもしれないな。)


 このような状況が続けば、砦は盤石となり、一般的に考えれば砦を落とすために、共和公軍は倍以上の戦力を揃えなければ、攻略すらままならなくなるはずだ。砦が盤石となれば、次は戦略にもよるが、さらに攻め込まれることになるだろう。


 攻め込む先としては、王都を目指す場合もあるし、穀倉地帯を押させるために領主などを狙う場合もあるだろう。俺であれば後者の戦略を取り、少しずつ共和国の領土を浸食していく戦略をとる。


 しかし、それにしてもここまで共和国が劣勢な理由がわからない。帝国側に英雄がいると聞いているが、それだけでこれだけ押し込まれることがあるのだろうか。この状況が正確に伝われば、共和国内は混乱が起きそうだ。


(やはり見に来て良かった。)


 ここに来た元々の目的であった正しい戦況の確認と監視網の構築は十分達成できた。できるなら、より詳細な情報を収集したいし、もしかしたら俺と同じ転生者の可能性もある帝国の英雄に会いたいところだが、戦場でしかも伝手が全くない。


 片道2日で来られることもあるし、今回は欲張らず、ここまでにしておこう。監視網も戦場になりそうなポイントには、『しるし』を複数設置して強化してある。戻っても継続して戦況の情報収集が可能だろう。そしてその情報は、今後の方針を決める情報の一つとして活用していく。


 このまま共和国に戻らずに、東にある帝国や北にあるという商業国を調査に行くという選択肢もるのだが、あまり共和国を空けると、スラムの兄妹も心配になってくる。目的は達成できたので素直に共和国に戻ることにした。


 行きは全速力で進んだが、1日以上想定より早く到着できたこともある。帰りは少し余裕をもって帰ることにしたい。


 共和国では方位磁石や羅針盤が普及しておらず、穀倉地帯まで迷わないように道が整備されている。決まった道というのは襲われたり、不審がられたりする可能性も跳ね上がる。行も帰りも基本的には、リスクを避けるため道を外れるが、帰りは余裕があるので来る途中で気になった点を調べる時間が取れそうだ。


・・・


(やはり、しっかりした造りだな。)


 一番気になっていたのは、街道の構造だ。通過する荷馬車の速度が段違いに速く、明らかに、以前使った炭鉱の村から王都まで道とは違う。その道については、かなり気になっていた。そのため、共和国軍が布陣している場所から暫く共和国側に戻り、人の通過がほとんどなくなってからじっくり調査した。


 調査した街道は、農耕地帯から収穫した農作物を輸送されるためにも使っているのだろう。他の道とは段違いに整備が進んでいる。納税のかなめになる道なので当たり前かもしれないが、力の入れ方が凄い。


 道の構造は、イメージ的には古代ローマ帝国が整備したローマ街道に近い。幅が4メートル程度あり、馬車が2台行違えるほどであり、表層は石畳状になっている。道の両側には歩道もあり、歩道と道の間が分かるような段差もできている。


 石畳は非常に滑らかで技術力の高さがうかがえる。石の加工技術だけでなく、石畳の下の層を掘り下げて、整地しセメントなどで平らな層を作らない限り、ここまでの石畳はできないはずだ。


 いったい、ここまで道を整備した人はだれなのだろうか。石工ギルドに行けば会えるのかもしれないので、いずれ会ってみたいものだし、可能性があるなら雇いたいくらいだ。


・・・


 道の途中にある集落の1つにも寄ってみた。想像どおり集落では、道を移動する人に対して宿泊や飯の提供、物資補給などのサービスを行っている。宿泊は1泊銀貨3枚と、共和国の3倍の料金設定となっていた。


 集落の人に聞いたところ、この道は定期的に軍隊が通過するため、治安が比較的よく盗賊なども出にくいが、他の道はかなり危険だそうだ。特に共和国から商業国に行く道を通ることがあるなら、必ず護衛を雇った方が良いとのアドバイスももらった。


 立ち寄った集落でも勘違いされたが、大分見た目が成長しているらしく、16,17歳と言われることが多くなっている。この世界では、成人は15歳のようで、俺の一人旅に対する違和感は大分薄れているような印象があった。


 ちなみに定期的に関所があり、道の使用料を徴収されるらしいのだが、道から外れて移動していたので支払らっていない。道路を維持するための費用なので支払う必要はないとは思うが、咎められるようなことがないように気を付ける。


・・・


 寄り道をしながらも順調に進み、共和国まで残り1日かからないくらいまで戻ってきたときに、セルカから報告があった。


(リコルド、始まりましたよ!)


 どうやら砦を取り戻すために、共和国の軍隊が動き始めたらしい。


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