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第106話 廃棄場所の選定

(今日も取り付く島はなしと。)


 既に日課になっている、スラムの少年の入国と許可証の受領、ロバたちの散歩と北門からの放牧、エルフさんへの挨拶を終えてきた。


 エルフさんはいつものようにテンプレ対応で、あしらわれて帰ってきた。これだけツンツンの対応が続くと挫けそうなるが、心なしか矢が飛んでくるまでの距離が、森に近づいているような気もする。木材調達のためだけでなく、エルフ族や大森林自体にも興味が湧いて来た。決めていた通り、長期戦を覚悟して続けよう。


(あの少年は、思っていた以上かもしれないな。)


 スラムの少年は、今日で作業を始めて3日目になるが、今のところしっかりやっている。単純な仕事ではあるが、汚いし、壺がどんどん重くなるにつれ運ぶのもきつくなる、しかも土地勘も顔見知りも少ない環境ではストレス要因が多くあるだろう。


 王都ですれ違う人々は、必ずしも好意的な人ばかりではない。それでも『しるし』を通じて様子を伺った限り、特に嫌がる様子もなく、挨拶を欠かさずしっかり作業をこなしている。


 たまに珍しいものを見ると、興味で目を奪われて作業が止まってしまうのはご愛敬だろう。他のことに興味が持てるということは、精神が病んでいない証拠とも考えられるし、色々なことに興味を持てる人材の方が好ましい。


(順調だが、ちょっと心配だな。)

 

 作業は重労働のはずだが、少年はあまり休みを取らずに続けている。俺からは、鐘が3つなるごとに、必ず長めの休みを入れるように伝えているのだが、あまり守っていない。作業効率を考えれば、それぐらいのペースの方が怪我をするリスクをおさえられ、結果的に効率的になるので、頑張り過ぎるようであれば、命令することも視野に入れよう。


 健気に一生懸命働いた結果、体を壊してしまったら誰の得にもならない。若いので回復が上回っているようであれば、体力増強にもつながるかもしれないが、疲れが少しでも残っているようであれば、強制的に休ませる。雇い主としては人を増やして、計画的に休ませる体制を作ることが課題だ。


(廃棄場所をどこにするか。)


 今朝、少年に作業状況を確認したところ、壺は後2~3割程度で一杯になると言っていたので、今日中にはいっぱいになりそうだ。そろそろ廃棄場所を用意しなければならない。


 冒険者ギルドの依頼の条件は、南西門から出て1km以上離れた場所であればどこに廃棄しても良いということだったので、必ずしも廃棄場所を決める必要はない。しかし、排泄物から作れる堆肥の効果を知っていれば、活用するためにまとめておきたくなる。


 堆肥ができれば、土壌改良をして多様な農作物を収穫できる畑が作れるかもしれない。廃棄場所の周辺に畑と住居を作れば、俺の拠点として機能させることも可能だろう。この際、拠点づくりも兼ねて、廃棄場所を決めておくことにする。


(拠点か・・・ちょっとワクワク感があるな。)


 拠点を作り、畑も作るのであれば、水源は必須になる。非公式に勝手に作るのだから、作る場所は見つかりにくいところが望ましい。


 共和国の南西から南方面は、不毛に近い土地が続いているので人の行き来はほとんどない。というか見たことがない。せいぜい南門と炭鉱の村の間の定期便が通る道が使われる程度だ。


 人の往来がない共和国の南側、しかも王都から1km以上離れるとは言え、周りからは見えないような立地が良いのは間違いない。

 

 ちなみに共和国の周辺で人通りが多いのは北西門で、門を出た後そのまま北西に向かう道を使うと、共和国と帝国の間を隔てる大河の北にある山付近につく。そこには商業国があるという帝国、共和国、両国に対して中立な立場を維持し交易をおこなっており、かなり栄えているという。一度は行ってみたいところだ。


(拠点の場所を決めるとしたら、水源から当たるのも手か。)


 共和国の南で、まず確実に水源となるだろう場所には少し当てがある。スラムを調査した時に、生活用水として使われていた川があったのだが、南方面に流れが続いていた。その川を下っていきながら候補地を探せば効率的だろう。


 川を下流に下って行きながら、廃棄場所の条件を満たし、なるべく周りから目立たないところが、拠点の候補地として最適になりそうだ。早速、探しに行ってみよう。


・・・


 俺はスラムに一番近い王都の南西門から出て、スラムの生活用水としても利用されている川の近くまで移動した。


(この川なら、遠くまで流れているし、大丈夫そうだな。)


 ちょっとした高台に上がり、川が流れている南方面を見渡して見ると、思った以上に長く遠くまで続いている。川は地平線の先まで伸びていて十分水源として使えそうだ。


 しかも、南に向かって川の左手側に、少し丘というか、小山のような箇所があり、それが遮蔽物となり、南側が見えにくくなっている。スラムからは、その小山のさらに南がどうなっているか見えないので、平らの土地があればそこが有力候補になりそうだ。


 川の下流に拠点が作れれば、筏を作って排泄物の壺を運搬することで効率的になるかもしれない。早速、川沿いに南に下っていき、拠点の候補地を探していく。


・・・


 暫く歩くと小山の近くまできた。小山まではスラムから1km弱くらい離れているようだ。目標としていた小山は、岩や岩盤でできており、周りにも石や大きな岩がゴロゴロしている。普通であれば不毛な山だろうが、俺にはそこが石切り場にしか見えない好立地だ。


 小山の裏側にいくと、いつもの見慣れた風景が広がっていた。川のそばであれば、もう少し繁殖力旺盛な雑草が、鬱蒼と生い茂っていても良さそうであるが、川沿いを少し離れた場所はやはり見慣れた風景だった。


(うん。拠点を作る場所としては悪くないな。)


 土はやせているようだが、小山から南側には平面に近い土地がある。少し上流から、岩や地面を掘り、水路を作っていけば水も引けそうな立地だ。ここならスラムはもちろん、共和国からも見えない場所にある。この辺りを拠点づくりの候補としよう。


 時間もまだあるので、早速特製スコップで水路を掘り始める。川から南東に向けて細い水路を掘り、小山の南側に向かって進んでいく。水量は当面多くなくてよいので、軽く水が流れる程度で、スピード重視で掘り進んでいく。


 時々大きい岩や、地面そのものが岩盤の場合もあるが、もう問題にもならない。サクサク掘り進んでいく。むしろ、岩や岩盤の方が、水路としては安定しそうだ。


・・・


 結局300m程掘り進み、ちょうど小山の裏側当たりに到達した。岩盤を選んでくりぬき、簡易的な貯水池を作っておく。水がちょろちょろと流れ込んでおり、溜まる前に少し大きめに掘り、広げておく。


(拠点の目の前に池か、中々良いな。)


 岩盤を掘った場所にどんどん水が溜まっていく。水はとても綺麗に見える。生活用水としては問題ないと思うが、スラム周辺で見た時の水の色や川の使い方を見る限り、ろ過の仕組みを用意したり、飲料水にする場合は煮沸したりすることは念のためしておいた方がよさそうだ。


(さて、そもそもの目的の場所も決めていくか。)


 拠点前の平地は、堆肥などで土壌改良を進め、畑を作っていくつもりだ。なので、ある程度、排泄物の廃棄場所も近い方が良い。今作った貯水池の南側に畑を作っていくことを想定すると、その近くにあった方が良いだろう。


(この辺だな。)


 貯水池からさらに200m程度南側に進んだ場所を廃棄場所とする。廃棄場所は、岩をくりぬいて貯める場所を作り、周りを汚染しないように配慮する。まずは最低限だが、廃棄場所の準備としては大丈夫だろう。


(中々良い場所が確保できたな。)


 もう少し周りの確認を行った後だが、本格的に拠点として整備を進めても良さそうだ。一通りの準備が終わったので、共和国に走って戻り、ちょうど壺一杯にして冒険者ギルドの確認も追え、満足気にしていた少年と合流した。


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