誕生日
所謂クリスマスが誕生日だから
小さいころから損をしていると彼は言った
ケーキや贈り物がクリスマスのものと一緒になってしまうと
世界中で一番誕生を祝われている人と平凡な人間の差が滲みるね、と
本心では誰よりもクリスマスが好きだったのでしょう
仕掛け絵本のように騒がしい街を出歩き
目を細めて時計台を見上げていたのを私は知っている
私は今宵も君のいる街へ帰る
今年の聖夜はとても静かだけれど
君はどうしているのだろう
クリスマスが忘れ去られても
不特定多数に嫌われる日になっても
君のいる場所は暖かいから
私が抱えているケーキの箱も
ガラスの置時計も
ただ
あの時の暖かさを取り戻したいがための祈りのようなもの
古びたドアの向こう
キャンドルの灯のように
貴方が笑った