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アイケン  作者: 霞川悠
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ホルモンのト○ンザム

幕張アクアは焦っていた。早くしなければ……

一方、ナギサは少し不安だった。何故か……

そして、海斗は……女装ストーカー変態男になっていた。


「(俺の紹介ひどっ!!)」


口に出したら自分が男だとバレるので、心の中でツッコミを入れた。


「痛い目にあってからじゃ遅ぇんだよ!!」


「……」


言わせておけばよい。器が知れる。


「こいつ……余裕こきまくりやがって……!!」


しかし、俺の無言は相手に悪印象を与えたらしい。

いや、こっちは男だとバレないように必死なだけなんだが……

相手は俺を女だと油断している。それが相手に隙を生む。

ん? そんなことをしなくても俺は勝てる?

ん? 本音を隠してる?

そ、そんなことはないぞ。俺は別に自分が女装変態男だと思われちゃうとかそんなことなんて全然考えてないんだぞ?


「うりゃあ!!」


男が俺に殴りかかって来た。

悪いが、実家で命のやり取りをしている俺にとってはそんなもの、止まって見える。

俺は相手の拳を余裕で避ける。


「な……!」


男たちが驚愕する。


「畜生!!」


もう一人の男も俺に殴りかかって来た。


「俺は元ボクサーだぜ!?」


確かに、さっきの奴より拳は速いが、その程度だ。

避けることなど造作もなかった。


「な……!!」


「……」


俺の敵じゃない。


「お前らじゃ相手にならないようだな」


「!」


そのとき、男たちの後ろから新たな男が現れた。

俺は知らない。誰だ?


「兄貴!」


「兄貴! こいつです!」


「ほう。確かに、普通の女とは違うな。何者だ?」


どうやら、この男どもの兄貴分みたいなやつらしい。

どうせ、ロクな奴じゃないだろう。


「……」


「だんまりか。いいだろう。その余裕、いつまで保つかな!?」


男は、さっきの男たちよりもさらに早い拳を繰り出した。

確かにこの男はけた違いに強い。

だが、所詮雑魚より桁違い強いだけである。

俺は攻撃を全て見切れた。


「くっくっく……お前は強い……強いなぁ……!!」


男は俺に下品な笑みを浮かべた。

正直寒気しかしない……男が男にそんな顔されても……


「……」


もう正当防衛は認められるよな?

俺は身構えた。アイツが攻撃したところを……!!


「ふん、やっとその気になったか!!」


男は凄いスピードのパンチを俺に浴びせる。

しかし、俺はそれを全てかわして反撃態勢に入る。


「ふんっ!!」


「ぐおっ!!」


俺は男の頬に右ストレートを浴びせた。

男は吹っ飛ぶことはなかったが、ダメージは大きいはずだ。

だが……


「くっくっく……効かんなぁ」


「!?」


常人が俺のパンチを食い止めただと!?


「スピードは大したものだが、パワーは大したことはないようだな!」


「んなっ……!」


どういうことだ……まさか!!

体が女になったことにより、筋力が落ち、さらに、体がまだ馴染んでいないのか!!


「ほらよ!!」


「きゃっ!」


俺は男に絞め技を食らわされた。


「ぐうっ……」


「ふん、所詮は女だ」


し、絞まる……


「ついでだ、お前ら、落ちたらこいつを好きにしていいぞ」


「マジっすか兄貴!!」


「!?」


なん……だと……!?

俺が男なんかに……?

絶対嫌だ!!

俺はジタバタするも、結局何も出来なかった。


「さすがは兄貴! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!」


「さて……どうしてくれようか……まずはその唇をもらうとするか」


「くっ……(んなことしたら俺は自殺するわ!!)」


油断するなと教えてもらったばかりだろ!!

なのに俺は……


「海斗!!」


「海斗様!!」


「!?」


そんなとき、二人の女の子の声がした。


「何だお前ら、この女を助けに来たのか?」


「海斗様……今助けます!!」


「て、てめっ! 無視すんじゃねぇ!!」


アクアさんが俺に薬のビンを投げる。それと同時にナギサが締め上げてる男の股間を蹴りあげる。


「ぼぎゅわっ!」


男は股間を抑えて悶絶した。


「海斗様!! 早くその薬を…!!」


「え? え? ああああ!! もう知らん!!」


俺は勢いのままに全てのカプセルを飲み干した。


「うらああああああ!!!!」


俺が高らかに叫んだと同時に、俺から何かが弾け出した。


「クア○タム・バースト!!」


「な、何だこの光は…」


「まるで俺達を優しく包んでるみたいだ…」


「これは…母性!?」


…よく分からんが男たちがさまざまな解説をする。


「海斗、その薬は貴方に眠る女性ホルモンを活性化させるもの」


「俺の女性ホルモンだと?」


「ええ。全て飲めば限界まで女性ホルモンが放出され…女性の内に眠る母性を顕出させる」


「もはや意味分からん」


「考えてはダメよ。感じて」


「ああそうかい…」


男たちは女神をみたかのような顔をしながら、その場をそそくさと去って行った。


「…あれ」


「どうしたの海斗?」


俺はつい先ほどまであった違和感が無くなっていることに気が付いた。


「…俺さ、胸が陥没した」


「…はい?」


「どういうこと?」


アクアさんとナギサが首をかしげる。


「俺が男に戻ったってことだよーーーーーーっ!!」


「……」


女性ホルモンを限界まで放出したら、ついでに女性でも無くなってしまったようだ。


「センスのないオチじゃねえええええええええかああああああああ!!」


おいおい…これからどう展開してくんべ?









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