今日の海斗はジェントルマン!
今回はあんまりエロくないような気がします。
テスト当日。
聖子先輩と姉さんのおかげで俺はかなりの対策を練ることができた。
テストは午前中だけ! 午後からまた勉強のようだけど……
とにかく! 今日の俺はいつもと違うぜっ!!
え?
捕まった?
俺が?
あはは、何それ美味しいの?
「テスト始め!」
「っしゃあ!!」
「は?」
俺は何故か気合十分にテストを受け始めた。つうか何だ今の掛け声は。
気合が入りすぎだろ、俺。
恥ずかしすぎだろ、俺。
痛すぎだろ、俺。
だが、俺は出来る……!!
なんだか某ゼミの漫画の後半の主人公になったような気分だ!
そう、これ、前にやった問題だ……とか!!
胡散臭いと思ってたけど、案外当たるものなんだな!
↑(先生が問題集から出すと言っていたのを聞いていない恥ずべき主人公)
俺は今、完全に世界から隔絶された。俺とテストを阻むものなど何もない。
たとえ、時間でも俺に干渉することなどできはしない……!!
それが……俺の固有……
「試験終了!!」
「って間に終了かよ!?」
と、言っておりますが、実際は結構出来た気がするのですよ、はい。
何が固有……何ちゃらだ。何が……ゼミだ。そんなの関係なしに実力で俺はやったんだ。
しかしまぁ……こうも爽快な気分になったテストも久しぶりなものだな。
まあ俺にはレベルの高すぎる学校だし、ここは。
それでもがんばろうと思ったのは、聖子先輩や姉さん……は微妙だけど、とにかく俺のために頑張ってくれた人がいるから。
だから俺は精いっぱいそれに答えるべきだと思うんだ。
例え右手を怪我していても、俺には左手がある。
そして例え左手がダメでも、俺には折れることのない熱き心がある!!
今の俺はマグマよりも熱い!!
「試験開始」
「何っ!?」
そんなことを考えている間に、今日最後の試験が始まった。さっきは数学だったが、今回は古文。
まあどっちにしろ、中間で出来なかったことには変わりがない。
だが、俺は勉強をした。今回はかなり、だ。
前までの俺とはスペックが違うのだよ!ザ○とは違うのだよザ○とは!!
赤き彗星の海斗、いざ参る……!!
俺は通常よりも三倍速い動きで問題を解き、三倍痛々しいコメントを残した。
今の俺を冷静に見て、頭がおかしくないと思う方がおかしいだろう。
なのに何故俺は気がつかないのか?
坊やだからさ。
……ねぇ、俺って別にこんな痛い子じゃないよ?
頭の中で年がら年中こんな妄想なんてしてないよ?
だってこんなことを考えてたら、問題解けないじゃん。
じゃあこれは誰の頭の中かだって?
……気にするな。もうどうでもいいさ。だって……俺はすでに解き終わっているのだからな!!
「試験終了」
「ふっ……」
俺は前髪をかき上げ、格好をつける。
前にいた女子が俺のことを胡散臭そうに見る。
そりゃ落ちこぼれの俺がこんなことをしているのは変だろうな、そうだろうね。
でも、なめちゃあかんぜよ。
「ボヤボヤしてると、足元掬われるぜ」
「は?」
俺はその女子にそう告げて悠々と教室を出る。
テストが終わってここまで満足するとは……なんだか、今日、超楽しい!!
「トビウオが空を飛ばないのは何故だろうな! こんなにも空は気持ちいいのに! 深海魚が長く水中にいるのは何故だろうな! こんなにも外の空気は澄んでいるのに! 人形が心を持たないのは何でだろうな! こんなにも心は晴れやかなのに!」
「え……海斗、あなた何してるの?」
「これはこれはマドモアゼル。私めに何の用でしょうか?」
「な、何この海斗……寒気がするわ」
「私めの言葉で心を寒くしてしまったのならば仕方がない。不肖、私めがコートをお貸し……ノー!! オーマイガッ!! 今の時期は夏ではないか! あなたを温めることはできない……神よ罪深き私を許したまえ……マドモアゼル、せめて私の心だけでも……受け取ってください」
「え……」
俺はアクアさんに跪き、手の甲に口づけを落とした。
「な……な……」
「それでは可憐なマドモアゼル。またお会いしましょう」
「絶対変!!」
アクアさんが何かを叫ぶが、俺の耳には届かなかった。
とにかく俺はまた、勉強をしなくてはならない。
テストは1日だけじゃないんだ!!
俺は急いで自宅に帰還し、勉強を再開させる。
ともかく……これで乗り切れる……!!
俺は左手でペンを持とうとする……が。
「おや?」
左手でうまくペンが持てない。テスト中に酷使したせいだろうか?
確かに、普段使わないものを急激に使うと、こういう現象が起こったりするのだが……
「何故だ? ペンが言うことを聞かない……」
俺はペン持ちに苦戦していた。
まるで昨日の午前中みたいな……ん?
何かが引っかかるぞ?
「……」
俺は昨日のことを思い出す。
『さて、私はね、海斗を救うためにここに来たの』
『究極変換剤、“右手に紙、左手にペン”!!』
『ふっふ~ん、一日だけ利き手を入れ替えることができるのよ!!』
「……」
プリース・リピート。
『ふっふ~ん、一日だけ利き手を入れ替えることができるのよ!!』
プリース・リピート。
『ふっふ~ん、“一日だけ”利き手を入れ替えることができるのよ!!』
「……」
ファイナル・リピート。
『“一日だけ”利き手を入れ替えることができる』
“一日だけ”
「……ふぅ……」
人は、驚く前、心を落ち着けるのかもしれない。
「何じゃそりゃあああああああああああああああああああああ!!!」
「ご主人様!?」
ナギサが俺に慌てて駆け寄る。
だが俺はそんなことを気にする暇なんか無かった。
「終わった」
「え?」
「もう……終わったんだ」
「海斗様……海斗様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「何だ台場。その怪我、川崎から聞いている。お前はテスト受けなくても成績つけてやる」
「は……ははは……」
初めからこうすれば良かったんですよね……天国のお婆ちゃん……
俺……やっぱバカだな。
アイケンWiki
エロコメというジャンルでスタートさせた、小説家になろうに掲載されている小説。作者は霞川悠。序盤はさほど過激ではなかったが、だんだんと性描写が増えていった。しかし、ネタギレなどによるものか、エロコメだけではなくなり、パロディや普通のコメディだけの話も増え始めた。更新は不定期すぎ。