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アイケン  作者: 霞川悠
30/43

お姉ちゃんの右手、俺の左手

久しぶりの登場

「弟君! 次はここの問題ね!?」


「うす」


俺は何故か聖子先輩と一緒に、俺の家で必死に猛勉強していた。平日の真昼間に。

いや、何故かとかじゃないんだけど。理由は分かる。

聖子先輩なりに責任を感じているんだろう。特に今回は。面白半分でしたことが被害を招いてしまったのだから。しかも他人に。

しかし、ここまで必死に俺のために何かをしてくれていると思うと……なんか嬉しいね。


「聖子先輩。テストは自分の手で書かないといけないので……もう諦めましょうよ」


いくら勉強をしても、テストに答えを記入するのは俺の手。正確に言うと、俺の包帯ぐるぐる巻きの右手。

まあこれは建前だ。本音は……


「勉強したくないだけでしょ?」


「う」


何故か俺のことをよく存じて居られる聖子先輩。

この空気を読んでか、ナギサは静かだ。彼女は意外と気の利く女の子なのだ。


「でもテストのときはどうするんですか?」


「わ、私が男装して受けるわ!」


「無理にもほどがあるでしょうに……自分の勉強をした方がいいんじゃないですか?」


俺は聖子先輩に気を使うことにした。彼女も自分の勉強があるはずだ。


「大丈夫。余裕だから♪」


「やべっ殺してぇ♪」


俺と聖子先輩は互いに笑顔になった。

顔と空気の温度差がかなり開いた気がする。


「はぁ……」


それにしても、本当に何とかならんかなこの状況。

俺としてはテスト勉強しなくていい! ラッキー! みたいに思っていたのに。

なんだかなー。


「お困りのようね、カイ君!」


「こ、この声は!!」


そんなとき、上空からメガホン声が聞こえてきた。

こんな常軌を逸した行動……そしてこの俺の呼び名……奴だ。


「姉ちゃん!!」


「ヤッホ~!!」


「おわぁ!!」


俺は急いで窓を閉めてパラシュートでやって来た彼女の侵入を防いだ。


「キャアッ!!」


姉ちゃんは見事に窓に衝突し、悲鳴を上げる。

こんな状況にやってくる我が姉はなんて人だ。


プルルルル♪


「あら海斗。多分真紀がアメリカ軍用ヘリを乗っ取ってそっちに……」


「遅ぇよ! さらに言うと勝手に電話に出ておいて「あら」じゃないだろ!」


俺の家の女性にまともなのがいない……いや、妹がいたか……いや、何考えてるんだ俺は……


「弟君? どういうこと?」


「ご主人様?」


聖子先輩とナギサが今の状況に困惑している……ここは俺が何とか……!!


「ヤッホ~」


「おわっ! いつの間に俺の家の窓ガラスを取り外したんだ!?」


何て説明口調なんだ!! 俺乙!!!


「こんなの私に掛かれば……ん~? 女の子を二人家に引きずり込んで何をしようとしてたのかな~?」


「そんなことより俺の右手の怪我を気にしろよ!!」


「ああ! 痛そうなカイ君! これじゃ一人で慰めることもできないじゃない! だから私が左手も使えと何度も何度も……」


「うるさいよ!?」


こんな大変な状況で、能天気な姉さんを見るとなんだか腹が立つ。

そう思うだろう? 同士よ。

って俺は一人で何やってんだ!!


「あのう……」


「申し遅れました、私、海斗の姉かつオカズの台場真紀です」


「変な紹介すな~~~~!!」


姉さんが妙に礼儀正しくふざけたことを言った。


「あ、私は弟君の部活の先輩かつオカズの川崎聖子です」


「私はご主人様のメイドかつ幽霊かつオカズのナギサです」


「何でみんなオカズが入ってるんだこら~~~~!!」


俺が叫ぶが、みんな聞かない。


「ささやかなものですが」


「ありがとうございます」


そして何故かそばを渡すウチの姉。

何かどこかおかしい。


「さて、私はね、カイ君を救うためにここに来たの」


「はい?」


どう考えてもそうは見えませんよ。悪いですけど。


「究極変換剤、“右手に紙、左手にペン”!!」


「そ、それは……」


ナギサが、姉さんが見せてくる怪しげな薬を見て何かを呟く。


「知っているのか?」


「噂の攻撃力と守備力を入れ替えることができる……」


「はいはいスト~~~~ップ!!!」


俺はナギサの口をふさぐ。


「~~~~~!!!!」


「で、姉さん、それってどういう効果なんですか?」


「ふっふ~ん、一日だけ利き手を入れ替えることができるのよ!!」


「な、何だって~~~~!!」


俺はテンプレ通りのリアクションをした。


「で、冗談はいいですから」


「冗談じゃないわよ」


「いや、もうそのネタいいですから」


「だから本当だって」


「俺ももう慣れましたから、その手の冗談」


「だから冗談じゃないって……言ってるでしょうがぁぁぁぁぁ!!!」


「うおおおおっ!!」


そして俺は強引にその薬を飲ませられた。


「んぐっ……んっ……」


そして咽そうになるので、必死に飲み込む俺。

何だこの光景は。


「どう?」


「……」


姉さんが俺の顔を覗き込む。


「どう?」


「まずい」


「ならいいわ」


「いいんかい!」


俺は何も変わらぬ自分の体に、結構ホッとしていた。


「お話は終わりかな?」


「な……!?」


そんなとき、いつの間にかベランダに機動隊が並んでいた。

なんだか嫌な予感がバリバリすっぞ。


「台場真紀。ヘリジャックと女性アメリカ兵への強姦未遂で逮捕だ」


「ちょっ姉さん! やり過ぎ……つうか女性!?」


「向こうがいいって言ってきたんだもの。性行為だと思うでしょ?」


「思わねえよ! どういう状況か知らんが!」


姉さんはあっけなく捕まって連行される。

この光景には慣れた。

逆に、この光景を見慣れていない聖子先輩とナギサは驚愕して何もしゃべれないらしい。

ああ……奈緒美先輩のその顔を見てみたいものだ。

俺はいつものこととホッとしながら机に向かう。


「台場海斗」


「え?」


しかし、そうは問屋が下ろさない。


「覚せい剤所持、かつ服用で逮捕だ」


「これ覚せい剤なの~~~~~!?」


そしていつもの通り俺も連行された。

聖子先輩とナギサは相変わらずしゃべれず、その場に硬直している。


「俺は被害者だぁぁぁぁぁぁ!!!」























「お兄ちゃんの巫女服好き」


「それは違うぞ!! 妹よぉぉぉ!!」


そして何故かチラリと出てくる妹もいつもと変わらず。


「次回へ続くんだって!!」


続く!! といいな! つか続け!!





キャラクター紹介


台場真紀

海斗の実姉で、22歳。

職業は不明だが、某一流大学を首席で卒業している。

常に警察や機動隊の世話になっており、犯罪界や裏社会では有名。

数々の特技を駆使して海斗に襲いかかる!

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