男の価値はサイズじゃない!!
何だこの題名
休日。アイケンは休み。家は安息地ではないので、俺は家にもいない。
つまり、外。俺は外出をしている。なんのために?
そりゃあ特に無いさ。友達?
そりゃあ特に無いさ。……俺ってさびしい……男友達……まさかのゼロ!!
ゼロのカイト……
「くっ……しかし俺はあきらめないぞ……!!俺は伝説の虚無の使い……」
「弟君!!」
「こ、この声は……!!」
俺のイタイ呟きを遮り、見知った声が俺のもとに届く。
俺は後ろから聞こえた声に振り返ってみる。
そこには、やっぱりというか、彼女しかあり得ないというか、聖子先輩がこっちに全速力で走ってくる。
「弟君~~~~!!!」
何と言うか、悲鳴に近い感じ。
助けを求めている感じだ。
俺は……
「逃げるっ!!」
俺は逃げ出した!!
面倒事に巻き込まれるのはゴメンだと思ってしまった。だって面倒くさいし。
何で休日までアイケンメンバーと過ごさなきゃならない?
「あああああ!! 待ってよ! 置いていかないでよ!!」
「うわぁ!! 足早っ!!」
100メートル5秒台の脚の速さに、俺はあっけなく追いつかれた。
※この小説は、多少誇張された表現を使っております。
「ん? なんか頭に変な言葉が……」
「弟君!!」
「は、はひ!!」
俺は聖子先輩に肩を掴まれ、いつになく真剣な眼差しを俺に向ける。
「追われてるの。助けて」
「え? 嫌なんですけど……」
俺はやんわりと断りを入れた。
どうせ自分が蒔いた種だろう。
「何言ってるの!? 将来を誓い合った姉弟でしょう!?」
「誓い合ってないし! さらに言うと姉弟はそんなことを誓わないだろ!!」
「大丈夫よ! 世間の目を気にしているなら、私が……!!」
「というかその前に俺達は姉弟じゃないだろ!!」
「待ちやがれ!!」
「「!!」」
俺が聖子先輩と不毛な会話をしている間に、追っ手がやって来た。
「俺はここらへんで失礼……」
「キャア! 怖いよ~~~!!」
「ぐおっ!!」
俺は厄介事に巻き込まれる前に逃走をしかけたのだが、させてくれなかった。
俺の右腕は、聖子先輩の豊かな胸元に強引に挟まれ、腰は両手で縛られた。
「はぁ……はぁ……追いついたぜクソアマァァ!!」
そんなことをしている間に、社会の歯車として機能しなさそうなヤンキー3人組が追いついてきた。
「テメェ! 何イチャついてんだゴルァ!!」
「俺かよ!!」
しかし、怒りの矛先が向けられたのはまさかの俺。
「彼女いない俺のことバカにしてんのか!? ああん!?」
「俺だっていないよ!!」
「ひどいっ!! 私たち将来を……」
「あなたは黙……」
「やっぱりそうかよ!!」
「うわあ!! なんかもう俺、何もかもどうでも良くなってきたよ!!」
ヤンキー達は勘違いをして俺のことを睨みつけてくる。
「いや、あのですね……あなたたちは壮大な誤解を……」
「うっせぇ!! そのアマの責任は貴様が取りゃいいんだよ!!!」
「……聖子先輩、何したんですか?」
むしろヤンキーを怒らせた聖子先輩の行動に興味がわいた。
俺は静かな声で尋ねてみる。
「いや、ナンパされたから、それに返しただけだよ?」
聖子先輩が笑顔で言う。何を言ったんだ、この人。
「大丈夫だよ。本当のことを言っただけだから」
「本当のこと?」
「そ」
聖子先輩がヤンキーの一人を指差す。
こんなときに攻撃をしないヤンキー達の優しさに感謝。
「3センチか、ゴミめ!! ってね」
「は?」
「てめぇ……一度ならず二度までも俺のダディを侮辱しやがって……!!」
「ちょっ……まさか……」
「俺は3.002センチだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「んな恥ずかしいこと叫ぶなああああ!!」
「そんなの誤差の範囲内よ! 私のサイズスカウターは小数点以下二桁を四捨五入するもの」
「そのサイズスカウターについては触れないで置いておきます」
俺と聖子先輩は対照的な発言をヤンキーに浴びせた。
つうか何てくだらないケンカの理由だよ……
「許せねえ……まずは男の方をやっちまえ!!」
「何で俺なの!?」
俺は殴りかかってくる男の拳をヒラリと避ける。
「避けやがって……ミンチにすんぞこの野郎!!」
「あーいや……ここは穏便に、ね?」
「ね? じゃねぇよゴルベーザァ!!」
月の民のような訳の分からない掛け声で俺に殴りかかってくるはぐれヤンキー。
だが俺はそれをヒョイとバックステップでかわした。
「きゃわしたぁ!?」
「弟君すごい!!」
前後から俺に向けた驚愕の声が飛ばされる。
俺としては当たり前のことをやっているだけなのだが……
「ま、まぁここはお互い謝って……」
「何で俺達が謝らないといけないんだよ!!」
確かに。悪いのって聖子先輩じゃないの?
「もうその女ごと……!!」
ヤンキー達は聖子先輩にも殴りかかり始めた。
さすがにこれはまずいか……女の子に手を出させるわけにはいかない。
「ふん!!」
俺は男たち二人にローキックを浴びせた。
クリーンヒットしなかったが、相手を転ばせるには十分だった。
「て、てめぇ……!!」
だが、やはり逆効果らしい。
こういう男たちは懲りない奴らということに決まっているのだ。
「あんまりこういうことはしたくないんだよな……」
俺は三人が殴りかかってくるのを見て身構える。
多分、正当防衛が認められると思う。
「被害がっ!!」
「ぐえっ!」
「増えるっ!!」
「ぐはっ!」
「からなっ!!」
「ひでぶっ!」
三人とも俺の拳一発で尻もちをついた。
喧嘩は素人らしい。まあこういう奴らは意外と見かけ倒しだからなぁ……
「ふぅ……」
「弟君すごいっ!!」
「え?」
ぱちぱちぱち……パチパチパチ!!!
「何ぃ!?」
いつの間にか俺達の回りをギャラリーが囲んで、拍手の嵐が俺達を襲っていた。
まさかこんなに目立ってしまうとは……
「まさか弟君が喧嘩強いなんて知らなかったよ!」
「別にこんなことが出来ても……嬉しくなんて……」
「ふざけ……」
「?」
そんなとき、後ろから声が聞こえた。
やられたヤンキーのものらしい。
「やがってぇぇぇぇぇ!!」
「弟君!!」
男の手にはナイフ。その手が俺の胸に……届かなかった。
「ぐうっ!!」
俺は右手でナイフを掴んで何とか止める。
しかし、その際に走った激痛は、俺に右手の重傷を知らせる。
ボタボタと流れる血。しかし、俺はそれを気にせず、男の手からナイフを弾いた。
「何ぃっ!?」
「ナイフは……こうやって使うんだ!!」
俺は弾いたナイフを左手に持ち、男の首元まで持って行って寸止めする。
「ヒイッ……!!」
「軍人ナメんな」
俺はナイフを地面に投げ捨てた。そして男はそのまま気絶した。
少しビビらせすぎたか。
「弟君! 怪我が!」
聖子先輩が俺の悲惨な右手を指す。咄嗟の出来事だったので、利き手の右手を防御に使ってしまったことは反省点だ。
「大したことないって」
数日ペンが持てなくなるだけだろう。
「明後日から期末……」
「あ」
何だそりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
冬休みの終了とともに更新スピードの低下が予想されますが、お許しください。