お食事にしますか? お風呂にしますか? それとも…
新キャラ登場の回。
「長かった…」
雷が外で轟く間に、真っ暗な部屋で少女が微笑む。
「ついにやって来ました…このときがっ!」
その威勢の良い声とともに雷が鳴る。
「思えば封印されて約50年! ついに私の時代がやって来ましたっ!!」
そう少女は言い放つと、フッフフフと笑いながら暗闇に消えた。
ある時代、ある場所、乱れた学校の片隅、俺は身を守るために処世術を覚えていった。
そんなことを繰り返していたある日、俺は体に軽い倦怠感を感じた。
「どうかされたのですか? 旦那様」
「あ、いや…」
歩ちゃんに心配され、俺はどう言うか考えた。
何せ、体がダルいだけなので、言うほどのことじゃないと俺は感じた。
「何でもないんだ」
そう言って俺は周りを見渡す。
薄暗い部屋の中には俺と歩ちゃんの二人しかいない。
ちなみにここは部室です。
「二人…ですね」
「そうだな」
歩ちゃんが意味ありげな視線を俺に送るも、極力無視することにする。
「二人っきりですね」
「そうだな」
歩ちゃんが俺に体を寄せる。
だが、何で俺をここまで気に入っているのか理解しかねるのだが…
「旦那様は好きな人っているんですか?」
「Likeなら。Loveはいない」
「まさか旦那様って…同性好き?」
「違う!! それは断じて違う!!」
そんなことは周りから思われたくない。
愛の形は人それぞれなのであるが、それが周りの人達が異質だと感じれば異質なのである。
「でも私達があれだけ言い寄っても、あまり反応しませんよね?」
「そりゃあ君達が俺をからかって誘惑しているからだろうが」
「…」
突如黙り込んだ歩ちゃん。
何やら複雑そうな顔をしている。
「どうしたんだ?」
「旦那様は私達に魅力を感じないんですか?!」
「はい?」
俺は首を傾げる。
「だっておかしいじゃないですか!」
歩ちゃんが俺に詰め寄る。
「本当に何とも思わないんですか?!」
妙に必死そうな歩ちゃんを見て、俺はため息を吐く。
「いや、みんな魅力的だと思うけどさ、俺はもっと普通で良いんだよ。それに、今は恋愛にそんなに興味が無い」
俺は本心を言うことにした。
大体俺に何を求めているんだ?
「そうなんですか…今流行りの草食系男子って奴ですね!」
「まあそうなんのか?」
「では早速です! 家に泊めて下さい!」
「何でそうなる?!」
「草食系男子なら安心です! だから泊めて下さい!」
「意味が分からんし、断る!!」
俺の平穏な生活は無いのか〜!
「じゃあ仕方ありません…」
あれ? 意外と楽に引き下がったぞ。
「今日は誰も来ないようなので帰りましょう」
「そうなのか?」
「だって今日は部活は休みです」
「早く言え〜〜〜〜〜!!」
俺達は学校を出て、それぞれの帰路についた。歩ちゃんも呆気なく引き下がったので、楽だった。
さあ、後は家でまったりするだけだ。
「お帰りなさいご主人様」
「………………………は?」
呆気に取られるとはこのことを言うのだろう。
俺は家に帰り、ドアを開けたときのそのセリフに固まった。
目の前にはメイド服を着た一人の少女。
しかも正座しながら頭を深く下げるという格好。
な ん だ こ れ は ?
「夕飯はもう作ってあります。食事にしますか? お風呂にしますか? それとも…」
「せ、説明が先だろうがぁぁぁぁ!!」
俺は近所迷惑なくらいに大きな声で彼女を怒鳴り付ける。
そもそも俺は彼女なんて知らない。
でも向こうは俺のことを知っているようだ。
「あん!! そんな…大きすぎますわ…」
「声がだろ?! 主語を抜くな!!」
「ご主人様は私にどんな体位をお望みなのですか?」
「誰もそんなことは言ってない! まず君は誰?! どうしてここにいる?!」
俺は頭を抱えたくなる気持ちを抑えながらも、言葉を言い切った。
「あ、言い忘れていました。私はナギサと申します。今日から自主的に海斗さんのお世話をさせていただきます」
「ナギサ…っていうか自主的?! 爺ちゃんに言われたとかじゃなく?!」
「まあそれはいいじゃないですか。私の自由ですし」
「っていうか君はここにどうやって入ったの?! 不法侵入だよ?!」
「何を言ってるんですか? ずっと側にいたじゃないですか」
「は?」
俺の思考が急停止する。
これはまさか…アレなのか?
「私、幽霊ですから」
「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
俺は今期一番の絶叫を上げた。
期限が刻一刻と迫ってくる…