家族占いは争乱の予感
「師匠。師匠にまで命をかけろとは言わない。でも、俺が残る事を許して欲しい」
手を握って、真摯な顔で訴えかけられる。気品のある整った顔立ちは中性的で、美しい。青い髪は不自然さを微塵も感じさせず、湖を思わせる。何よりも、目だ。その目は星の青。
そして、占い師はフレーバーテキストで、カリスマ&話術が高いのだ。
ま、負けちゃダメダメ! 私だって占い師!
「いやよ。だってそれ、育て損じゃない。こっちだって慈善事業じゃないのよ。そもそも、神様のくださった加護に、当たり外れ文句言うのが悪いのよ。外れなんてないのに。不吉……はある意味そうなんだけど。神のご意向に逆らった偉い人の自業自得でしょ!」
喰らえ! 私の師匠としての威厳を駆使した超然とした態度!
アルビノな見た目で神聖さ倍率ドン!
「そうだね。俺、神様に感謝してる。だから、神様の期待に応えたい。思うんだ。俺が選ばれた占い師なら、この出会いもまた、神様のお導きなんじゃないかって。それに、師匠。師匠は神のご意向に逆らうの?」
「うっ!!」
そうなんだよね。レベルとか情報とか仲間欲しさの援助だったけど、罪悪感が7割位。でないと、占い師の子たちにカードを分けたり生産セットを分けたり基礎を教えたりなんてしない。占い師達がさ、皆、良い子なんだよ。そしてそれ以上に賢い。
一度で覚えなかった子がいないって、凄くない?
だから、週一の授業でも回せてるんだけど。
皆、必死で喰らいついて試行錯誤しているんだよね。
私だって、レベル上げだヒャッホウ! って思ってたさ。
でも、私にはゲームの記憶がある。
イベントの規模的に、何より、この占い師の第六感にビンビンに引っかかる嫌な予感に。私は尻込みしているのだ。だって、今はゲームじゃなくて現実だ。
本当に人が死ぬんだよ? 冗談じゃない。ああでも、これはきっと、神様に貰った命なんだ。神様の為に、一回くらいはご奉仕しておくべきだよなあ。
でも本当に死んだらどうしよう。大規模な事件だと、凄腕占い師設定のNPCが命と引き換えにした占いが事件の発端だったりするんだよね。その役を割当てられてるんじゃないかと戦々恐々なのである。
ちなみに、その手の重要な占いはイベントを起こさないと出来ない。
ミニゲーム形式で、指定のカードを使って指定の結果が出て、相手の反撃をカードで防ぐミニゲームだ。今まで自動だったというのも不安なところ。タイミングとか全部自分で判断ってことだもんね。
「……やばかったら逃げるから」
「師匠!」
ぱあっと笑顔になるルーン。ああ、もう。本当にやばかったら逃げるからね?
店員さんも笑顔になっている。こんな子供に期待しないでよ、もう!
「ただし! それは、ルーンがこの街の占い師達を纏め上げられたらよ! そうでもないと勝ち目なんてないもの。勝てない勝負はしない主義なの。信用稼ぎ班とレベル上げ班と生産班とに別れて、組織だって行動しなきゃだし。妨害だってあるかもだし」
一番イヤなのが、魔物の人間成り代わり系だ。ないよね? ないよね?
陰謀勝負なんてオタクに求めてんじゃね―ぞ。
「レベル上げと生産はわかるけど、信用はどうやって?」
「そりゃ、占いをして上流階級に食い込むのよ。占い師なんだからそれしかないでしょ。子供が将来どんなジョブになる確率が高いかとか、生まれる子は男の子だとか、女の子だとか、天気占いとか、今日の魔物は何が出やすいとか……。狩りの効率を上げるバフ占いはもう出来るわね? 後は、本腰入れた占いの為には最低でも100枚のカードが欲しいわ。一回の占いで使うのは5枚から20枚。何事もなければね。反撃されたら天井知らず。強いカードも集めないと。それには他の戦士や魔法使いのジョブも絶対に必要よ」
「強いカード……師匠がくれたようなものですか? 反撃とは?」
「勘のいい魔物なんかは、占われたらわかるし、反撃してくるわよ。カードでの防衛に失敗すれば大怪我、下手すりゃ死ぬわ。ま、成功すれば企み全部暴けることもあるけど」
私は自らを抱いて、ブルリと震える。
「間違っても黒幕とかにぶち当たらないように占わないと。それに、権力者は当たらなければ殺し、災いを当てれば殺すわ。魔物なんかも率先して狙ってくる。占い師は人に化けた魔物を見破るのが得意……つまり、その手の賢い魔物に蛇蝎のごとく嫌われているものなの。あなたも覚えておきなさい。占い師として名を挙げたら、長くは生き延びられないわ。だから占い師は旅するの」
まあ、フレーバーテキストからの受け売りですが。考えてみると、占い師って凄く大変な職よね。
まあ、辻占いでのほほんしてることも出来るんだけどね? 多分、ルーンはその道は選ばないよなぁ。
「師匠! 俺、占い師って職業を舐めてた! ただ、特殊な武器なだけのジョブだって。でも、違うんだな。悪を見破り裁く、正義の執行人なんだな!」
がしっとルーンは手を握る。
「俺、覚悟決めるよ! 一流の占い師になるって、そして生き延びてみせるって、今決めた!」
「ルーン……」
「俺、頑張る。領主の息子ルーンとして、占い師ルーンとして、産まれてきた役目を果たす! 師匠の試練、謹んで受けさせてもらう!」
「うちの息子も! うちの息子も使ってやって下さい! うちの子なんて、アルケミストなのにルーン様より成功率低いのですから! そうだ、集会にうちの使ってない倉庫を使って下さい!」
2人で大いに盛り上がる。
そういうんじゃないんだってば。占い師は、もっと儚くも悲しくも切なくも優美で可憐で……。そうだ。今度の日曜日、皆に占い師の出てくる物語を聞かせてあげようっと。
その手の話なら公式なり同人なりで山ほど知ってるからね!
ルーンの修行の時間も3日に減らして……いっそ、全員一緒に教えちゃおうか。
ということで、倉庫を借りて占い師の寺子屋が誕生した。
魔物や占いについて、がっつり教えちゃうよ! 捨て子も多かったので、寝泊まりできるのも大きい。というか、家のある子も引っ越してきて雑魚寝だ。
申し訳ないので家賃は僅かながら支払わせていただいている。
寝物語が大人気で、大号泣である。うん、占い師の物語さ、必ず占い師1人は死ぬんだわ。まず時報のごとく最初に死ぬ。謎解きパートで平均2人。事態解決の為にもう1人死ぬ。怖がる子もいたので、その子には占い師としての穏やかな日常の送り方を教えてあげた。産まれる子が男の子か女の子かだけを判定して暮らす選択肢もあるんやで……?
まあでも、レベル上げないとどんな占いも出来ないけどね。
って事で、ダンジョンや町の外でせっせとレベル上げ。
街の人も段々、占い師って存在を認知しだした。
まあ、カードで倒す一団がいたら目立つよね。死体カードに封じるしね。
交代で占い商売も初めた。
妊婦さんの子が男の子か女の子かの判定と、バフ掛けである。
レベルの高い子はもう、バフデバフの剥ぎ取りとジョブ判定が出来る。
どうも、判明してない加護はハズレ加護、身体能力が上がったら戦士、魔法が使えたら魔法使いというスーパーざるい判定方法だったらしく、これが当たった。
例えば、同じ戦士でも弓と剣じゃあ適正があまりにも違う。
そういったことで感謝されたのだ。もちろん、それに腹を立てる者もいる。
「あなたは狩人です。 弓や罠を学ぶといいでしょう」
「なんだとぉ!」
掴みかかる男の手を掴む用心棒。
「占い結果が気に入らないからって、そういうの、良くないと思いますよ?」
筋骨隆々のマスルさんが言うと、狩人さんはすごすご帰っていった。
マスルさんは最近入った弟子である。ハズレ加護でも諦めず格闘をしてきた人で、筋骨隆々で迫力があるので助かっている。
鑑定に来て、占い師だった人はそのまま弟子入りすることが多い。鍛え方がわからない人も、私を頼ってくることが多い。
初期装備や、初期生産セットを渡している。
あまりに多いので、アドバイス料を取ることに決めた。でないと出費が出る一方だし。
ゲーム通貨、手に入る宛がないんだよね。カンストさせてたから、今まで気にしなかったけど……さすがに無尽蔵にはないわけで。
皆で貯めたお金を持ち寄り、冬の防寒対策もなんとかなりそうだ。
「お正月でしょ? 今頃、領主の館では、お姫様たちがパーティーしてるんでしょ? いいなあ」
「見たいか? キララ。それなら、占ってやるよ」
ルーンが占いをする。
すると、水晶玉に豪華絢爛なパーテイー会場が映し出された。
ほんと偵察に大活躍な能力よな。
占い師の子供達が歓声を上げ、大人が微笑ましく見る。
水晶が輝く。
「えっ!? 駄目だ、力が吸われる……!!」
ぼふっと音を立てて、ルーンの父が魔物に変じた。
『何奴!!??』
いや、お前が何奴だ。
私は咄嗟にカードを投げていた。
魔弾が水晶を砕いた中から飛び出して、ルーンに向かう。それをカードで防いでいた。
結構いいカードがバシュっと音を立てて消滅する。ぺたんとルーンが尻餅をついた。
「じ、時報……」
嘘でしょ。
「に、逃げるわよ!! 一箇所に固まってれば一網打尽だもの! ほら、皆立って!!」
大変なことになった。




