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スライムカードは冒険の予感

 ゲーム世界にアイテム込みで転生した。

 都会から出戻った娘から産まれた私は、ジョブ認定の儀式に備え、せっせと準備をしていた。採取、狩猟、解体。そりゃもう必死に勉強した。

 そして、齢15歳にしてジョブ認定の儀式のために街へと出てきた。

 

 偉い人のお祈りの言葉を聞き、皆で祈り、食事をし、色々なテストを受ける。

 結果、ハズレ加護だと判定された。

 私は鑑定メガネを自分に使い、確認をする。


『占い師 LV1』


 よし、経験済みだし格好いい。

 占い師はトリッキーなジョブで、確率変動をして幸運を引き寄せることが出来る他、イベントなどで絶対1人はパーティに必要だったり、カードガチャが出来たりする。自分はしたくないけど必ず1人は伝手が欲しい、というキャラだ。フレーバーテキストにも出来ることが盛り沢山に書かれてあった。1人は絶対に欲しいキャラが自分というのは幸運なのではなかろうか。

 こうしてはいられない。レベルを上げなくては。


「ハズレ加護だと!? ハズレ加護だと!? 面汚しめ、二度と敷居をまたぐことは許さん! さっさと出ていくが良い、不吉の子め!!」


 大声がしてびっくりする。

 美形の男の子が、父親に捨てられて呆然と立っている。占い師じゃん。

 それにしても、権力者の息子が占い師って……イベントの予感。

 情報を得られた私は運が良い。

 私は、すすすっと近寄った。


「あ……俺は、俺は……」

「ねぇ」

「え……?」

「困ってるなら、私が面倒を見てあげるよ。採取とか狩りとか解体とか、教えてあげようか?」


 男の子は迷った様子を見せて、それからお願いしますと頭を下げた。うんうん。良い子じゃん。

 

「私、サクラ」

「俺は、ルーン……」

「ルーン! とってもいい名前! まずは腹ごしらえをしようか。こんなごちそうめったに食べられないよ。その後、早速街に出て狩りをしよう」


 食事をして、街の料理に舌鼓を打つ。さすが、宴のご飯だ。めちゃくちゃ美味しい。

 パンをポケットに入れて、ルーンの手を引く。


「じゃあ、行こうか」

「その……街を出るより、ダンジョンのほうが多分、稼げるよ」

「街の中にダンジョンがあるの?」

「うん、こっち」


 男の子は、私の手を引いて、ダンジョンまで連れて行ってくれた。


「冒険者ギルドの登録証と入場料がいるみたいだけど?」


 厳重な門と門番。気後れする。


「15才未満なら誰でも無料で入れるよ。だから、今日中に登録代と入場料を稼がないと」

「なるほど」


 ルーンが門番に話しかけ、入れてもらう。

 ダンジョンは、宴の最中だからか誰もいなかった。都合がいい。


「武器を渡しておくね」

「持ってるの?」

「うん。私と貴方しか使えないとっておきの物だよ」


 占い師の武器はカードと水晶玉である。

 カードは大人気のコレクターズアイテムでもあるため、占い師でなくても持っていたりする。なんといってもデザインがいいのだ。でも今回渡すのは、ショップで買った白紙のカードセットホルダー付き。


「カード?」

「こう使うの」


 私はちょうどそこにいたスライムの核にカードを投げた。

 ちょうど核に刺さったカードはスライムの核を吸収し、スライムカードとなる。


「!?」

「やってみて」


 カードを渡されて、ルーンも投げるけど、ペロンと舞い上がる。


「ちゃんと力を通して、カードの力を引き出して使わないと駄目だよ」

「ち、ちから?」

「今日の宿代と、登録代と、明日の入場料と、カードの材料費と、食事代! 飛ばすのが無理なら、カードで刺すだけでもいいから」

「わかった」


 そして、二人で弱い魔物を狩っていく。

 ルーンは、何回目かの試行錯誤で投擲が出来るようになった。

 白紙のカードが魔物のカードに変わっていく。

 ポケットのパンを分け合いながら食べ、手持ちのカードが無くなった頃、ざわめきが聞こえた。宴が終わってダンジョンに人が来たのだろう。


「そろそろ採取に切り替えようか。私の指定したものを取って。インベントリに入れて」

「インベントリって?」

「空間魔法で、ほら、アイテムをしまっておく奴よ」


 私は、目の前でインベントリに入れてみせる。

 

「!? 凄い!」

「やってみて?」

「? ? ??」

「はぁぁ……いいわ」

「あの、ごめ……」

「このカードにアイテムを押し付けて」


 私は、アイテムカードセットを渡す。


「うん。あっ カードになった!」

「じゃあ、それをこのカードホルダーに入れて。魔物のカードホルダーと混ぜないでね」

「はい!」


 ルーンは、せっせとアイテムを採取しては、カードに入れていく。手際良いじゃん。ちなみにこれも占い師の特技。重さが無視できるのだ。その代わり、占い師しかアイテム使えなくなるけど。占い師だけのパーティーなら問題ない。


「ねぇ。ドロップアイテム、僕らは何も出なかったね」

「カードで倒したからね。カードを破ればドロップアイテムが出てくるよ。他にも使いみちがあるから、まだ破らないでね」


 私はインベントリを、ルーンはカードホルダーをいっぱいにしてダンジョンを出る。

 インベントリに入れたアイテムを売って、そのお金で二人でダンジョン登録して、宿を探し、二部屋取る。


 次は私の部屋で作戦会議だ。


「じゃあ、カードを種類別に分けて」


 言いながら、私も分けていく。

 

「んー。まだ数が足りないなあ。一回するのがせいぜいか」

「足りない?」

「うん。まあ、ひとまずカードの使い方を教えるね」


 私はスライムカードを12枚取り、スキルを使った。


「カードセット生成!」


 カードに番号や記号が割り振られていく。

 よし、これで占いの準備ができた。

 更にカードを空中に設置していく。

 そして、一枚を選んだ。


「本日の占い! スライムに限りドロップアイテム増加」


 そして、私の体が光る。

 カードがもとに戻ったので、残りの11枚のスライムカードは破ってドロップアイテムにしていく。これは売ってダンジョンの入場料にしよう。


「魔物カードは、投げても強いよ。白紙のカードよりはね。ただし、消耗品。カードを作るための道具は明日買ってくるから。裁縫の練習もするよ」

「う、うん……」


 白紙のカードを2セット渡す。

 

 占い師は素早さと器用さ、魔力が上がるので、生産にも向いている職だ。すぐ作れるようになるだろう。取得生産は錬金と裁縫一択である。


 試行錯誤していたら、ルーンもインベントリが使えるようになったのでカードの生産セットをいくつも買う。ついでにポーション生産セットも。

 それでインベントリはいっぱいになった。NPCはそんなもんよね。プレイヤーのアイテムボックスないもんね。なのでアイテムカードセットもいくつか買っておこうか。


「今日採取した草と魔力をこの瓶に込めて振って、こっちの型に流し入れるの」

「わかった」


 ふぅ。カード作るの、面倒だな。いくつかある生産セットフル稼働で一狩分がやっと。

 ポーションの作り方も教えて、材料を使い切ったら寝るように言って各々の部屋に戻り就寝。

 

 翌日、成功したポーションと失敗したポーションを選り分けて、本日の占いでバフをして、昨日のスライム素材を売って、ダンジョンに向かい、採取と戦闘をして、宿で生産。

 ルーンは服を売り、ボロい服とお金に変えてお金を渡してきた。

 貴方の心意気は受け取りました。私に任せるのです……。

 冒険者セットをショップで買って渡す。

 装備も作らないとね。まずは糸を作るところから。

 水晶玉も買わないと。占いの方法も教えていかないとね。

 なんだかんだで一ヶ月、頑張った。

 でも、同じことの繰り返しで辛いだろうな。


「お貴族様には大変だろうけど、捨てられた以上は平民だからね。毎日毎日同じことの繰り返しで大変だけど、頑張って稼がないといけないよ」


 そう言い聞かせると、ルーンはキョトンとした顔をした。


「俺、出来る事が毎日たくさん増えて、すげー楽しい。今日はゴブリン倒せたの、見てただろ! 占いも楽しい! それに、七日に一日休暇くれるじゃん!」

「そ、そう? まあ、それなら良いよ」


 何この子、天使じゃん……。休みの日も色々出来ることを考えて頑張ってるの知ってるしね。私も情報収集や他の占い師の援助してるけど。優しーい!


「もしも、困ったことがあったらコレ使いな」

「うわ、強い魔物のカード! こんなに!? 良いの? 破ったら……」

「怒るよ。命の危険を感じたら迷わず使って。狙いをつけて、力を開放する感じで」

「わかった。その、すごく感謝してる。ありがとう」

「なんのなんの。弟子だもん。どうしても気になるなら、将来強いカードで返してね」

「ありがとう……」


 弟子が可愛くて死にそうです。

 

 さて、3ヶ月がたった。

 お金が溜まったのと、ほぼほぼ100%の確率で初心者ポーションが作れるようになったので、ポーション資格をとった。実際に作るのと、効果順に選り分けるのが試験だった。効果順に選り分けるので、なんと弟子に遅れを取った。鑑定メガネばかり使ってたからね。反省。

この資格は他の町でも通用する。それが大事。


「流石ルーン様、勉強していたのですか?」

「師匠が良かったものでな」

「それでも、凄いです。うちの子は強いジョブを得たと鼻にかけ、努力をせず……」


 ふぅ、と溜息をつく店員さん。この店員さんは口が固くていい人だ。今もこうして知らない振りでルーンの資格を交付してくれる。妨害がないわけないのに。


「権力者の息子が占い師って、大抵は神様の恵なんだけどね」

「そうなのですか?」

「そうよ。災いを予見して、防がせるために占い師を遣わせるの。領主様の子供や同時期の街の子供達がやたらと優れたジョブの子や占い師ばっかりだと倍率ドンね」

「……今年はやたらと両極端で、ハズレ加護と優れた加護が多いと」

「そうなのよね。占い師が多すぎるから、スタンピードじゃないわ。しかも占い師の子、皆能力高いの。少なくとも、悪意が介在する。優れた占い師が多数必要なほどの、邪悪なる者のとてつもない陰謀に巻き込まれる。早めに準備して街を離れないとね」


 何より私(転生者)が呼ばれる事態。神様には悪いけど逃げ一択ですわ。援助はしたよ!


「なんで!?」

「平民にどうにかできる災い規模じゃないわよ」

「師匠……」


あっ嫌な予感。



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